月の影に隠れしモノは

しんいち

文字の大きさ
上 下
46 / 167
仙界にて

46 帰りたい …希望…

しおりを挟む
 五月六日。

 『神子の巫女』たちが帰ってしまい、最初の三人での生活に戻った…。
 朝食後、釣りと収穫。温泉へ入って交合。
 暗くなる前に夕食。そして就寝…。

 五月七日。同じく…。

 五月八日。同じく…。

 そして九日、十日、十一日、十二日、十三日、同じく…。

 白い光は舞衣には現れない。もちろん、祥子にも。
 舞衣は、だんだん焦ってきた。もしこのまま帰れなかったら…。
 この三人での生活なら、これはこれで良いかもしれない。これが続くのなら。
 しかし、慎也は、満月の十九日に居なくなってしまう。そうすれば、祥子との二人暮らしだ。
 祥子が居てくれれば、何とか生きてゆけなくはないだろう。
 自分一人では絶対に無理だが、祥子と二人なら、なんとか…。
 そして、それも慣れてしまえば「普通」になってしまうのか?
 裸を見られるのも平気になった様に…。人前で交合しても、何とも思わなくなった様に…。

 否、違う!

 ここで、この先六十年なんてのは、やっぱり嫌だ。元の世界が良いに決まっている!
 こんなところに、居たくない!

 帰りたい!帰りたい!帰りたい!

 私は、帰りたい……。

 日を追うごとに、舞衣は沈みがちになっていった。



 五月十四日。

 交合部屋に居る三人。

「おかしいのう。ワラワは別として、なぜ舞衣は帰れぬ? 先の五人は、ほぼ一発で身籠ってしまった。何が違うというのじゃ」

 祥子は首をかしげつつ考える。

「そういえば、慎也殿。少し疑問に思って居ったのじゃが、あの巫女四人と致すとき、手を当てて、何かしておらなんだかの?」

「えっ、別に何も……」

 慎也には、特に何かした自覚が無い。が、よく思い起こしてみると……。

「あ、そうそう。先の美月さん含めて五人はバージンだってことだったから、手を当てて『…痛くないように…』って念じてたのです。まあ、おまじないみたいなものですけど、効かなかったみたいですね。挿入するときは、みんな痛そうでした」

「ワラワは、してもらっておらぬな」

「当り前じゃないですか。おそうようにしてきて! バージンでもないし…」

 舞衣も反応した。

「あ、あれ? 私はしてもらってましたっけ?」

「え…、舞衣さんはどうだったかな……。
 あ、舞衣さんの場合は、最初がもう治療からだったから…。だから、同じのはしてないね」

 三人は、顔を見合わせた。そして、

「これか!」「これよ!」「これじゃ!」

 そろって大きな声を上げた。

「慎也殿、それじゃ! その念で排卵が誘発されて、すぐ妊娠したのじゃ!」

「よし、二人にも!」

 少し光が見えてきた。舞衣ばかりか、祥子にまでも……。



 五月十五日、朝。

 女子二人は、いつもより早い。そろってソワソワしている。
 当然だ。昨日のが上手うまくいっていれば、先の五人と同じように、今日帰ることができるはず。

(きっと帰れる!)
(千年ぶりに戻れるかも…)

 慎也も、何だか明るい気分だ。
 慎也が帰るのは満月の十九日。今日は十五日。帰るまでの四日間は、ここで一人だ。何をして過ごそうかと楽しみである。元々は、一人で居るのが好きなのだ。
 もちろん、美女たちとのセックス漬けの生活が終わってしまうのも、残念な気はするのだが……。

 そんな三人の思惑は…。
 叶わなかった。

 昼になっても、舞衣も、祥子も、帰れない。
 この日も、…痛くないように…は、した。



 五月十六日。やはり、帰れない。
 この日も、…痛くないように…を、した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

役目を終えて現代に戻ってきた聖女の同窓会

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,750pt お気に入り:77

待ち遠しかった卒業パーティー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,267pt お気に入り:1,291

気づいたら転生悪役令嬢だったので、メイドにお仕置きしてもらいます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:433pt お気に入り:6

【R18】罠に嵌められた転生令嬢は、幸せになりたい【完結】

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:687

処理中です...