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帰還、そして出産
50 帰還、そして結婚
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畳と障子の部屋。
ここは…。
神社の社務所の中…。
慎也と舞衣は、周りの様子を確認し、再びヒシッと抱き合った。
帰ってくることが出来たのだ。
舞衣は慎也にしがみついたまま、声を上げて泣き出してしまった。
「お二人さん。戻れて良かったのう。というか、まさか裸で抱き合ったまま来るとは。ハシタナイ奴らじゃ。ホホホ」
声の方を見ると、祥子が笑いながら部屋に入ってきた。白い着物に緋袴姿である。
「祥子様! 良かった。戻れたよ」
「しかし、おかしいのう。普通は召喚された元の場所に戻るのだが、舞衣は何故ここなのじゃ? まあ、それだけ慎也殿への思いが強かったということかのう」
祥子は、首を傾げている。
「それを言ったら、祥子様は何故ここに?」
慎也が怪訝な顔をして、祥子に問うが…。
「ワラワは、ここから召喚されたのじゃ。言わなかったかの? 京の都から神社に嫁ぎ、初夜の晩に神隠しになったと」
慎也と舞衣は、その話を確かに聞いた。
「当時は男が女の元に通う招婿婚が一般的である中で、特異な婚姻であったがの。相手が由緒ある神社の神主であるからとかなんとかいう理由であったが、詳しい事情はよく分からぬ」
「そ、その神社が、ウチってこと?」
「そういうことじゃ。実は、ワラワも、戻ってから慎也殿もこの神社からと知ってな。大いに驚いておったのじゃ。因縁じゃのう」
まさか、まさかの話…。
日本中に、現在でも、神社は八万社ほどあるとされる。明治時代に、かなりの神社が統合されているので、昔はさらに多かったはず。いや、平安時代となると、そこまでの数は無かったのか?
それにしても、よりによって、祥子も、こことは…。
「それは良いとして、其方ら、いつまで裸で抱き合って居る。いい加減に着物を着たらどうじゃ」
舞衣は自分のアラレモナイ姿に気付き、慌てて慎也から離れ、極まり悪そうに胸と股間を隠した。あちらの世界ではそれ程気にもしていなかったが、こちらに戻ってくると何故か恥ずかしい……。
慎也は箪笥から巫女装束を出して、舞衣に手渡した。
よく見ると祥子の着ているのも、戻るときに着ていた透ける物でなくて、神社の物。勝手に漁って着たようだ。
でもまあ、正月でも巫女のバイトも必要ないような神社であり、使用する予定も無い物。使ってもらっても、別段構わない。
祥子が手伝って、舞衣も巫女装束を着る。
慎也も、自分の着物を出して着た。
「さて、これから、どうしたものかの」
「俺たちは、結婚することになりました。子供も出来たし」
慎也は、舞衣の肩を抱く。
「なんじゃ、それならワラワも、そなたの子を身籠っておるぞ。それにワラワは、元々ここへ嫁いできた身じゃ。ワラワこそ、妻にしてもらえぬかの」
祥子は、不満顔で訴えた。しかし、これは無茶な注文というものである。祥子が嫁いできたのは、千年以上前、平安時代の話なのだ。
「嫁いで来たって、それ、うちの遠い先祖にでしょ? いや、血縁が続いているかどうかも分からない昔の話だし…。それを今更、現代の俺の妻にしろと言われても、困るんだけど……。 それに、俺たちはもう、結婚を決めたんです」
「ひ、ひどいぞ。ワラワはどうすれば良いのじゃ。正妻がダメなら、側室でも構わんのじゃ。とにかく、ここに、置いてたも~!」
祥子も必死だ。何しろ、他に行くところが無い。神隠しに遭ってから千年以上も経ってしまい、完全に浦島太郎状態。知り合いは、誰もいないし、誰に事情を話しても信じてもらえないだろう。頼れる者は、皆無なのだ。
ここで慎也に見放されれば、路頭に迷ってしまう。それならいっそ、帰ってこなかった方が良かったかもしれない…。潤んだ目で、慎也にしがみついて懇願した。
舞衣は、そんな祥子を見、少し考えて、慎也に向かって言った。
「あ、あの~、お世話にもなりましたし、私は、良いと思いますよ」
「そうじゃ、そちは良いおなごじゃ。そうしてたも」
祥子は、今度は舞衣にしがみつく。
「但し、あくまで正妻は私ですからね。それだけは譲りませんよ」
「それで良い、それで良い。ワラワは、妾で問題無い!」
(いやいや、妾なんて、問題有るでしょ…)
とは、慎也は思うものの、妻の舞衣が妾を許すというのなら、問題無い…のか?
祥子も、慎也の子を妊娠している。
仙界で、あのとんでもない体験をした仲間。いや、恩人。
それに、夜の営みも一ヶ月一緒にしてきて、慎也と舞衣の感覚もおかしくなっていた。
結論として、慎也と舞衣は結婚し、明日、早速入籍。
祥子は、そもそも戸籍が無くて結婚できないので、やはり内縁関係の妾。
夜の生活は、それまで通り三人。仙界にいた時と変わりない具合になった。
但し、呼び方は変わった。
慎也と舞衣は祥子を『祥子様』と呼んでいたが、これからは『祥子さん』と呼ぶことにした。
祥子は慎也のことを『主殿』、舞衣のことを『正妻殿』と呼ぶつもりのようである。
舞衣としては、今まで通り名前で呼んで欲しいのだが、立場をハッキリさせるという意味では、『正妻殿』の方が良いかもしれない。但し、世間体は良くないが…。
「さて、ところでな、ワラワは腹が減ってのう。ここには干物と腐りかけた果物しかないのじゃ」
ここは社務所だ。お供え物くらいしか置いてない。祥子は昨日から、そのスルメやリンゴといった物を食べていたのだ。慎也が仙界に召喚される前のモノだから、一カ月前のモノなのに…。
他には何も無いので、慎也は二人を連れて自宅の方へ行くことにした。
自宅も先代宮司から受け継いだもので、神社から歩いて百メートルくらいのところにある。途中にある畑と水田も一緒に受け継いだ。
「おおう、これは田じゃな」
まだ水も入っていないが、祥子は気が付いた。
「米が食べたいのう。仙界には無かったからのう。千年以上、口にしておらぬ」
「そうだな、俺も白いご飯がいいな」
「それに、お味噌汁!」
舞衣も同調した。
一ヶ月食べられなかった、定番朝食のオーダーだ。
ここは…。
神社の社務所の中…。
慎也と舞衣は、周りの様子を確認し、再びヒシッと抱き合った。
帰ってくることが出来たのだ。
舞衣は慎也にしがみついたまま、声を上げて泣き出してしまった。
「お二人さん。戻れて良かったのう。というか、まさか裸で抱き合ったまま来るとは。ハシタナイ奴らじゃ。ホホホ」
声の方を見ると、祥子が笑いながら部屋に入ってきた。白い着物に緋袴姿である。
「祥子様! 良かった。戻れたよ」
「しかし、おかしいのう。普通は召喚された元の場所に戻るのだが、舞衣は何故ここなのじゃ? まあ、それだけ慎也殿への思いが強かったということかのう」
祥子は、首を傾げている。
「それを言ったら、祥子様は何故ここに?」
慎也が怪訝な顔をして、祥子に問うが…。
「ワラワは、ここから召喚されたのじゃ。言わなかったかの? 京の都から神社に嫁ぎ、初夜の晩に神隠しになったと」
慎也と舞衣は、その話を確かに聞いた。
「当時は男が女の元に通う招婿婚が一般的である中で、特異な婚姻であったがの。相手が由緒ある神社の神主であるからとかなんとかいう理由であったが、詳しい事情はよく分からぬ」
「そ、その神社が、ウチってこと?」
「そういうことじゃ。実は、ワラワも、戻ってから慎也殿もこの神社からと知ってな。大いに驚いておったのじゃ。因縁じゃのう」
まさか、まさかの話…。
日本中に、現在でも、神社は八万社ほどあるとされる。明治時代に、かなりの神社が統合されているので、昔はさらに多かったはず。いや、平安時代となると、そこまでの数は無かったのか?
それにしても、よりによって、祥子も、こことは…。
「それは良いとして、其方ら、いつまで裸で抱き合って居る。いい加減に着物を着たらどうじゃ」
舞衣は自分のアラレモナイ姿に気付き、慌てて慎也から離れ、極まり悪そうに胸と股間を隠した。あちらの世界ではそれ程気にもしていなかったが、こちらに戻ってくると何故か恥ずかしい……。
慎也は箪笥から巫女装束を出して、舞衣に手渡した。
よく見ると祥子の着ているのも、戻るときに着ていた透ける物でなくて、神社の物。勝手に漁って着たようだ。
でもまあ、正月でも巫女のバイトも必要ないような神社であり、使用する予定も無い物。使ってもらっても、別段構わない。
祥子が手伝って、舞衣も巫女装束を着る。
慎也も、自分の着物を出して着た。
「さて、これから、どうしたものかの」
「俺たちは、結婚することになりました。子供も出来たし」
慎也は、舞衣の肩を抱く。
「なんじゃ、それならワラワも、そなたの子を身籠っておるぞ。それにワラワは、元々ここへ嫁いできた身じゃ。ワラワこそ、妻にしてもらえぬかの」
祥子は、不満顔で訴えた。しかし、これは無茶な注文というものである。祥子が嫁いできたのは、千年以上前、平安時代の話なのだ。
「嫁いで来たって、それ、うちの遠い先祖にでしょ? いや、血縁が続いているかどうかも分からない昔の話だし…。それを今更、現代の俺の妻にしろと言われても、困るんだけど……。 それに、俺たちはもう、結婚を決めたんです」
「ひ、ひどいぞ。ワラワはどうすれば良いのじゃ。正妻がダメなら、側室でも構わんのじゃ。とにかく、ここに、置いてたも~!」
祥子も必死だ。何しろ、他に行くところが無い。神隠しに遭ってから千年以上も経ってしまい、完全に浦島太郎状態。知り合いは、誰もいないし、誰に事情を話しても信じてもらえないだろう。頼れる者は、皆無なのだ。
ここで慎也に見放されれば、路頭に迷ってしまう。それならいっそ、帰ってこなかった方が良かったかもしれない…。潤んだ目で、慎也にしがみついて懇願した。
舞衣は、そんな祥子を見、少し考えて、慎也に向かって言った。
「あ、あの~、お世話にもなりましたし、私は、良いと思いますよ」
「そうじゃ、そちは良いおなごじゃ。そうしてたも」
祥子は、今度は舞衣にしがみつく。
「但し、あくまで正妻は私ですからね。それだけは譲りませんよ」
「それで良い、それで良い。ワラワは、妾で問題無い!」
(いやいや、妾なんて、問題有るでしょ…)
とは、慎也は思うものの、妻の舞衣が妾を許すというのなら、問題無い…のか?
祥子も、慎也の子を妊娠している。
仙界で、あのとんでもない体験をした仲間。いや、恩人。
それに、夜の営みも一ヶ月一緒にしてきて、慎也と舞衣の感覚もおかしくなっていた。
結論として、慎也と舞衣は結婚し、明日、早速入籍。
祥子は、そもそも戸籍が無くて結婚できないので、やはり内縁関係の妾。
夜の生活は、それまで通り三人。仙界にいた時と変わりない具合になった。
但し、呼び方は変わった。
慎也と舞衣は祥子を『祥子様』と呼んでいたが、これからは『祥子さん』と呼ぶことにした。
祥子は慎也のことを『主殿』、舞衣のことを『正妻殿』と呼ぶつもりのようである。
舞衣としては、今まで通り名前で呼んで欲しいのだが、立場をハッキリさせるという意味では、『正妻殿』の方が良いかもしれない。但し、世間体は良くないが…。
「さて、ところでな、ワラワは腹が減ってのう。ここには干物と腐りかけた果物しかないのじゃ」
ここは社務所だ。お供え物くらいしか置いてない。祥子は昨日から、そのスルメやリンゴといった物を食べていたのだ。慎也が仙界に召喚される前のモノだから、一カ月前のモノなのに…。
他には何も無いので、慎也は二人を連れて自宅の方へ行くことにした。
自宅も先代宮司から受け継いだもので、神社から歩いて百メートルくらいのところにある。途中にある畑と水田も一緒に受け継いだ。
「おおう、これは田じゃな」
まだ水も入っていないが、祥子は気が付いた。
「米が食べたいのう。仙界には無かったからのう。千年以上、口にしておらぬ」
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