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帰還、そして出産
84 伊勢へ2
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桑名東インターから、東名阪高速道路に入る。高速に入ったところで、車内での朝食になった。祥子が作ってきた、おにぎりだ。
運転手の真奈美は、危ないから後でと、お預け状態。それを気遣ってなのか、恵美からサービスエリアに寄ってほしいというリクエストがあった。
途中休憩ということで、御在所サービスエリアへ入り、やっと、真奈美は朝食にありつけた。が、他の皆がトイレへ行く中、恵美だけ、真っ先に売店の方へ走っていった。
恵美のリクエストは真奈美を気遣ってでは無く、欲しい物があったようだ。
トイレの後、皆が売店を覗いたりし、揃ったところで出発。
車が動き出したところで、恵美は手に持っていた、買ってきたばかりの物を、後ろの沙織に差し出した。
「何? 恵美…」
沙織が受け取ったのは、一冊の週刊誌。
沙織は、もう週刊誌が嫌いになっている。が、恵美が何か企んでいるようだったことを思い出した。
トップ記事に、「高橋舞衣」の名前が…。
両脇の杏奈・環奈も覗き込んで、三人で暫く読んでいた。そして、後ろにいる舞衣に話しかけた。
「舞衣さ~ん。また、恵美がやらかしちゃいましたよ~。お仕置きが必要ですね~」
まるで、いつもの恵美のような口調。
「祥子さんも、絡んでますよね~」
指摘された祥子は、明後日の方を見て、とぼける。
舞衣の眉が、ピクッピクッと攣り上がった。
舞衣は、沙織が差し出した雑誌を奪うようにとった。
慎也は、隣の祥子を肩でつついた。
「何やらかしたの……」
「な、何も別に…。恵美に言われるまま、取材を受けただけじゃが……」
攣り上がっていた舞衣の眉が、徐々に下がっていく……。
慎也は不審げに覗き込み、記事を読んだ。
…その雑誌は、誹謗中傷を受けた雑誌とは別の、「週刊未来」。
そして、そこに書かれていたのは、
『第二婦人・第三婦人独占インタビュー。高橋舞衣の夫、重婚の真実』
恵美と祥子の、巫女姿の写真がアップで出ている。
内容は……。
舞衣の夫=慎也には四人の妻がいる(杏奈・環奈は伏せられている)が、正式な婚姻関係は舞衣とだけであり、あとの三人は内縁の関係で重婚ではない。
(重婚に関しての法的な説明も添えられている)
正妻の舞衣はもちろん、他の三人も皆同意の上、一つ屋根の下で同居している。
皆、仲良しであり、得意分野で役割分担している。
それぞれの役割は、第二夫人(=祥子)が食事担当。
第三婦人(=恵美)が渉外担当。
第四夫人(=沙織)が、食事以外の家事全般。…食事は第二婦人を補佐。
そして、正妻の舞衣が、その統括。
舞衣は温かく皆を包んでくれる存在で、例えるなら天照大御神のような存在という、前に話題になった話も出ている。
さらに、第二夫人が食事神の豊受大神というところから、慎也は妻がたくさんいたという大国主神。渉外担当の第三夫人は武御雷神(国譲り神話の交渉役の神)と、話が発展している。
隠れてする不倫関係ではなく、神代の昔に神様もしていたという堂々とした一夫多妻(ただし入籍は一妻)の関係であると解説されていた。
(沙織についての記述が少ないのは、主に取材を受けた恵美の意向か…)
江戸時代の将軍家や大名の側室制度にも触れられ、こちらの主張に沿う形で、さらに概ね好意的に書かれている。
「私たちは、全く平等に愛してもらっています。夜も一晩一人じゃ、あとの三人はお預け状態になります。だから、毎晩四人一緒。乱交じゃありませんよ。夫は一人ですから。同じ部屋で行儀よく順番にイタシテますよ。そして、みんな十分満足させてもらっています」
恵美の言葉を忠実(いや、一部、表現に好意的修正があったのかも…)に載せた後の、記者のコメントは…。
………
一晩に四人と、毎晩SEX。しかも、四人全員を十分満足させる。
皆さん、出来ますか? 一人でも満足させられるかどうか…。
これが出来なければ、こういう関係は無理でしょう。
逆に、出来るのなら、そして当人たちがそれで納得し幸せなら、他人がどうこう言うことでも無いのかもしれません。
最後に、先週の週刊文冬について、第三夫人から一言。
…「悪意と歪曲甚だしい。モテない男の僻みでしかないわ。キモイ奴。神罰がくだるわよ!」
………
舞衣と慎也は読み終えて、途中だった祥子へ雑誌を渡した。
舞衣は少し大きめの声で、しかも、普段の恵美調の話し方で言った。
「そうね~。これは~、おっ仕置きが必要ですね~」
一呼吸置き、隣の慎也を見てニヤッと笑った。
「では今晩、恵美さんは、慎也さんのフィンガーアタックを受けてもらいましょう!」
「はあ! な、なんで!」
驚いて、後ろを振り返る恵美。
皆、笑いに包まれた。
「あんた変わったわね。何もかも無関心って感じだったけど。安心したよ。幸せそうで」
「ウルサイ~! 運転に集中しなさい!」
恵美は口を尖らせた。
真奈美は嬉しそうに笑った。が、
「ところでさ、フィンガーアタックって何?」
運転中で、前を向いたままの真奈美の質問に、皆、一瞬固まった。
隣に坐っている、恵美の顔が徐々に赤くなっていく。
「母様は知らなくていい……」
運転手の真奈美は、危ないから後でと、お預け状態。それを気遣ってなのか、恵美からサービスエリアに寄ってほしいというリクエストがあった。
途中休憩ということで、御在所サービスエリアへ入り、やっと、真奈美は朝食にありつけた。が、他の皆がトイレへ行く中、恵美だけ、真っ先に売店の方へ走っていった。
恵美のリクエストは真奈美を気遣ってでは無く、欲しい物があったようだ。
トイレの後、皆が売店を覗いたりし、揃ったところで出発。
車が動き出したところで、恵美は手に持っていた、買ってきたばかりの物を、後ろの沙織に差し出した。
「何? 恵美…」
沙織が受け取ったのは、一冊の週刊誌。
沙織は、もう週刊誌が嫌いになっている。が、恵美が何か企んでいるようだったことを思い出した。
トップ記事に、「高橋舞衣」の名前が…。
両脇の杏奈・環奈も覗き込んで、三人で暫く読んでいた。そして、後ろにいる舞衣に話しかけた。
「舞衣さ~ん。また、恵美がやらかしちゃいましたよ~。お仕置きが必要ですね~」
まるで、いつもの恵美のような口調。
「祥子さんも、絡んでますよね~」
指摘された祥子は、明後日の方を見て、とぼける。
舞衣の眉が、ピクッピクッと攣り上がった。
舞衣は、沙織が差し出した雑誌を奪うようにとった。
慎也は、隣の祥子を肩でつついた。
「何やらかしたの……」
「な、何も別に…。恵美に言われるまま、取材を受けただけじゃが……」
攣り上がっていた舞衣の眉が、徐々に下がっていく……。
慎也は不審げに覗き込み、記事を読んだ。
…その雑誌は、誹謗中傷を受けた雑誌とは別の、「週刊未来」。
そして、そこに書かれていたのは、
『第二婦人・第三婦人独占インタビュー。高橋舞衣の夫、重婚の真実』
恵美と祥子の、巫女姿の写真がアップで出ている。
内容は……。
舞衣の夫=慎也には四人の妻がいる(杏奈・環奈は伏せられている)が、正式な婚姻関係は舞衣とだけであり、あとの三人は内縁の関係で重婚ではない。
(重婚に関しての法的な説明も添えられている)
正妻の舞衣はもちろん、他の三人も皆同意の上、一つ屋根の下で同居している。
皆、仲良しであり、得意分野で役割分担している。
それぞれの役割は、第二夫人(=祥子)が食事担当。
第三婦人(=恵美)が渉外担当。
第四夫人(=沙織)が、食事以外の家事全般。…食事は第二婦人を補佐。
そして、正妻の舞衣が、その統括。
舞衣は温かく皆を包んでくれる存在で、例えるなら天照大御神のような存在という、前に話題になった話も出ている。
さらに、第二夫人が食事神の豊受大神というところから、慎也は妻がたくさんいたという大国主神。渉外担当の第三夫人は武御雷神(国譲り神話の交渉役の神)と、話が発展している。
隠れてする不倫関係ではなく、神代の昔に神様もしていたという堂々とした一夫多妻(ただし入籍は一妻)の関係であると解説されていた。
(沙織についての記述が少ないのは、主に取材を受けた恵美の意向か…)
江戸時代の将軍家や大名の側室制度にも触れられ、こちらの主張に沿う形で、さらに概ね好意的に書かれている。
「私たちは、全く平等に愛してもらっています。夜も一晩一人じゃ、あとの三人はお預け状態になります。だから、毎晩四人一緒。乱交じゃありませんよ。夫は一人ですから。同じ部屋で行儀よく順番にイタシテますよ。そして、みんな十分満足させてもらっています」
恵美の言葉を忠実(いや、一部、表現に好意的修正があったのかも…)に載せた後の、記者のコメントは…。
………
一晩に四人と、毎晩SEX。しかも、四人全員を十分満足させる。
皆さん、出来ますか? 一人でも満足させられるかどうか…。
これが出来なければ、こういう関係は無理でしょう。
逆に、出来るのなら、そして当人たちがそれで納得し幸せなら、他人がどうこう言うことでも無いのかもしれません。
最後に、先週の週刊文冬について、第三夫人から一言。
…「悪意と歪曲甚だしい。モテない男の僻みでしかないわ。キモイ奴。神罰がくだるわよ!」
………
舞衣と慎也は読み終えて、途中だった祥子へ雑誌を渡した。
舞衣は少し大きめの声で、しかも、普段の恵美調の話し方で言った。
「そうね~。これは~、おっ仕置きが必要ですね~」
一呼吸置き、隣の慎也を見てニヤッと笑った。
「では今晩、恵美さんは、慎也さんのフィンガーアタックを受けてもらいましょう!」
「はあ! な、なんで!」
驚いて、後ろを振り返る恵美。
皆、笑いに包まれた。
「あんた変わったわね。何もかも無関心って感じだったけど。安心したよ。幸せそうで」
「ウルサイ~! 運転に集中しなさい!」
恵美は口を尖らせた。
真奈美は嬉しそうに笑った。が、
「ところでさ、フィンガーアタックって何?」
運転中で、前を向いたままの真奈美の質問に、皆、一瞬固まった。
隣に坐っている、恵美の顔が徐々に赤くなっていく。
「母様は知らなくていい……」
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