月の影に隠れしモノは

しんいち

文字の大きさ
上 下
156 / 167
新たな仲間と、…別れ

156 敗北者アマ2

しおりを挟む
 舞衣が慎也に連れられてトイレに行っている間、さとあいがアマのところへ来た。

「思い知ったか、このクソ鬼!」

 横になっているアマを見下ろして、あいが言い放った。脱糞してしまったのだから、確かにクソ鬼だが、「クソ=糞」と理解して口にしているかは不明…。
 さとも口を開く。

「こんど、父様、母様にちょっかい出したら、尻の穴から手を突っ込んで… あ痛っ」

さとちゃん、下品!」

 さとあいに小突かれて、途中でやめた。あいが言った「クソ鬼」というのも、十分過ぎるほど下品であるだろうに、理不尽な所業だ。やはり、あいは意味を理解せずに使っていたらしい。見た目は大きくて利発であっても、まだ実年齢三歳なのだ。仕方ない。
 そんな二人を前にして、アマは股間の違和感に堪えながら布団から出、正座して、頭を深々と下げた。

「申し訳ありませんでした。先ほど、舞衣様にもお許しを頂き、私は今日から舞衣様の下僕となりました。お二人におかれましても、以後、そのように扱い頂けましたら有難く存じます」

「ほえ?」
「下僕?」

「はい。私は舞衣様の下僕です」

 あいさとは、顔を見合わせた。

「な、なによ。分かれば良いのよ! 舞衣母様は、凄い人なんだから!」
「そ、そうなんだから!」

 二人は意表を突かれてしまい、それだけ言って駆けて行ってしまった。



 神社で…。
 舞衣が出てこないことを、美雪が不審に思っていた。

「恵美さん、舞衣さんはどうしたの? また何かありました?」

「あった、あった~! おおありよ~ん。聴きたい~?」

 恵美の返答に、早紀も興味深そうに寄ってきた。

「実は……」

 恵美は、昨夜の出来事を、「事細か」に二人に話した。二人は顔を赤くして、恵美の話を聴いた…。

「で~、これが、その勝利宣言時の画像~」

 恵美のスマホには、全裸で鼻血を流しながらブイサインしている舞衣の雄姿、いや、痴態が写っていた…。恵美は、アマの方だけでなく、舞衣も内緒で撮っていたのだ。

「結果、アマちゃんは舞衣さんを認めて~、舞衣さんの下僕となりました~」

 美雪と早紀は顔を引きつらせていた。もはや、笑うしか無いような話だ。

「あ、頭イタ……。まるっきり、バカじゃない。娘たちの前で、こんなことして…」

「でも、これで、一件落着よね…」




 その後…。舞衣は復活するまで、四日も掛かった。
 アマは二日で回復し、舞衣の下僕として世話を焼いていた。もうすっかり打ち解けてしまったようである。
 だが、今度は杏奈と環奈がむくれている。自分たちの舞衣様を取るなというのである。
 三人の下僕が競って舞衣の世話を焼く状態。まあ、これは微笑ほほえましい光景というとこで良いのだろう。
 また、母親を大事にしてくれるのならと、敵意を抱いていたあいも、アマになつくようになった。釣られてさとも、である。



 アマは、人界にいる間に出来るだけ色々な知識を吸収しようとした。
 祥子からは仙界での暮らしや、料理から竹細工・木工等の技術まで学ぶ。恵美とも、よく話し込んでいる。
 結果、慎也が放って置かれることになるのは、いつものことだ。
 必要とされるのは夜だけ…。「みんなの種馬」待遇からは抜け出せない運命なのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

役目を終えて現代に戻ってきた聖女の同窓会

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,712pt お気に入り:76

待ち遠しかった卒業パーティー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,072pt お気に入り:1,287

気づいたら転生悪役令嬢だったので、メイドにお仕置きしてもらいます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:6

【R18】罠に嵌められた転生令嬢は、幸せになりたい【完結】

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:687

処理中です...