巻き込まれ召喚娘の大逆転!? ~転移者柚奈は、超絶理不尽な扱いを受けました~

しんいち

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残虐非道なる異世界生活

7 麗しき戦闘狂

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 さて、それで、ですね。その今日のお仕事なんですが…。
 基本的に私ってば解剖実験体ですが、不死を生かしてということで、その他にも求められる仕事があります。
 最近は、こっちの方が多くなってきているかも。実は、こちらの方は、少なくない謝礼金が支払われているみたいなんですね。
 …あ、謝礼金。当然、私の懐には何にも入りませんよ、奴隷の身分ですから。ムゴイですよね。

 これからする私の仕事。侯爵家ご令嬢のお相手です。
 楽そうな仕事じゃないかって?
 冗談じゃありませんよ!
 この御令嬢、お名前をレンカ・ストンヒルといい、若くて目鼻立ちも整った超絶的美人さんですが、ハッキリ言って狂人です。
 『麗しき戦闘狂』と呼ばれているような最凶女。
 そんな人の剣や、槍の相手をするのです。

 なんで侯爵令嬢がそんなことってね、この王国、国内の治安は安定していますが、敵対国があるのですね。
 戦争になれば、領地を持つ貴族(…子爵以上)は自兵を率いて戦わなければならない。
 お嬢様は武門で有名な侯爵家の一人娘。この国では女性であっても爵位を受け継げます。次期侯爵様な訳です。
 で、お家柄、その戦うことにとても熱心な方ということみたいです。

 しかし、お相手ったってですね。私、剣ややりなんて、経験ないですからね。事前にヘレーナから少し教えてもらいましたが、完全素人です。
 おまけに、お嬢様を傷つけてはいけないというコトで、私に与えられるのは模擬刀や、刃の無い槍。対するお嬢様の使うのは本物の武器。
 これじゃあ、完全にやられ放題ですよ。
 つまるところ、どうすれば効率的に敵兵を殺せるかってことの実験台な訳ですね。
 惨殺したって生き返りますからね。罪悪感なく、やりたい放題できるってことです。

 ひっどい・・・。

 さて、今、その美しき御令嬢と向かい合っています。ヘレーナより少し若い?26歳か…。ホントに綺麗なヒトですよ。
 場所は御屋敷の庭、屋外です。
 外でするのは、血で汚れるからですね。私から出る血で…。

私が持たされているのは槍? 勿論もちろん、刃は無いから、タダの棒の様なモノ…。
 で、お嬢様は剣。それも、真剣。
 ヘレーナに教えられました。普通なら、槍と剣の場合は槍が優位。突いて相手を間合いに入れなければ良いのです。

「さあ、遠慮なく来なさい」

 美人お嬢様の、美声でのお言葉です。遠慮なんかしませんよ~。
 とにかく、必死で突きまくり!
 でも、相手はプロ。あっと言う間に剣でいなされ、間合いにスッと入られてしまう。
 そして、グサッと胸を一突き…。

「ゲフッ、ぐ、ぐうう……」

 鋭い剣は深々と突き刺さり、確実に私の心臓を貫いています。
 すっと抜かれると、勢いよく血が噴き出す。口からもゴフッと血を吐きます。
 普通、これはアウト。おしまい。もう戦えない。
 でも、今日は意識して自己治癒を止めなくてよいと言われているのです。だから、すぐに傷は塞がってゆく…。
 服は血みどろでも、あっと言う間に完全復活。

「おおお~! あなたホントに凄いわね。じゃあ、2回戦よ」

 と、再度…。やはりかなうはずなく、槍を跳ね飛ばされ、今度は左肩から斜めにバッサリ袈裟懸け…。
 3回戦はお腹を横へザックリ斬られ、グチュグチュ腸がはみ出る。その上、仰向けに押し倒され、とどめに胸をズブズブっと一突き…。
 何度も何度も一方的にヤラレ続ける。武器を槍から剣と盾に変えさせてもらっても同じこと。
 少しくらいは仕返ししたいけど、無理です~!!
 結局、なんやかんやで13回も「殺され」ました。

 いや、体の方は治りますけどね。着ている服は真っ赤に染まり、ズッタズタのボッロボロ…。
 トンデモナイ状態ですよ。
 このままでは馬車を汚してしまう為、その場で新しい服に着替えさせられ、馬車に乗せられました。

「今日は、良い体験ができたわ。アリガトウ。またよろしくね」

 なんて、血塗ちまみれ戦闘狂令嬢(…というか、殺人狂令嬢だ!)は、ニッコリ最高の笑顔で送り出してくれます。が、まただなんて、冗談じゃないですよ~。
 まあ、私に拒否権なんてありません。近いうちに再度呼ばれそうです。


「お疲れさまでした。たいへんでしたね」

 帰りの馬車の中、ヘレーナが濡らしたタオルで私の顔をぬぐってくれます。
 手足の血は先に拭きましたが、顔にも付いていたんですね。
 いや、それよりも、ですね。「殺され」ても私は「生き返り」ますが、それからある程度時間が経つと尋常じゃない疲労感が襲ってくるのです。その時間が来たようで…。
 この疲労感から回復するには、何かを食べないといけません。エネルギー不足による疲労ということなんですね。
 十分に心得てくれているヘレーナは、大きいサンドイッチを私の口へ。私はムシャムシャガツガツ、フードファイターの如く次々貪り食べます。
 しかし、何と言っても今日は13回分…。どんだけ食べても足りないよ~。それに、ヘレーナがボソッと一言。

「明日も、あのお嬢様に呼ばれていますので、よろしくね」

 ああ、やっぱりまた…。
 でも、明日って、そんな続けて・・・。
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