巻き込まれ召喚娘の大逆転！？ ～転移者柚奈は、超絶理不尽な扱いを受けました～

残虐非道なる異世界生活

8 召喚の理由

　ヘレーナは私が訊いたことには答えてくれますが、業務に必要なこと以外はあまり自分からは話してくれません。
　でも、他のお屋敷に呼ばれると、結構いろんな話を聞くことが出来ます。
　何と言っても、私は惨殺される仕事をしていますからね。死にゆく者への冥途の土産話ってヤツですかね？
　いや、私、生き返りますけどね・・・。

　で、昨日、完全治癒を待つ間や休憩の時間に、美人戦闘狂令嬢から聞いた話。
　私が呼ばれた召喚儀式。治癒魔法を使える者を召喚するってことでしたが、それには理由がありました。
　治癒魔法を使える人って、かなりレアな存在なんですって。そうですよね。私、けっこう医療系学生の解剖実習に使われていますけど、魔法で治るんなら、そんな学校も必要ないですからね。
　現在、治癒魔法が使えるのは、この国には2人だけ。それも、その１人は王女様なんですって！
　もう１人はカナリの高齢で、もうヨボヨボ。つまり、実質、王女様だけ。
　それは拙いですよね。

　王女様は、貴族だけで無くて平民であっても治してくれるお優しい方。
　王城には平民は入れませんから城外の大神官邸で、重い病気や重症怪我人の治療をしてくれる。だから『聖王女様』と国民から慕われているのだそうです。

　え～っと、大神官邸って言ったら、私もそこに居るんですけど…と思ったら、なんと、あの、大神官の孫のチェリルというのが、その御方！
　う～ん、大神官の娘さんが王様に嫁ぎ、産まれたお子様がチェリル、いえ、チェリル様ってことですね…。

　召喚の直後に私の能力を鑑定したのも、このチェリル様。鑑定能力までもお持ちなんですよ。
　私と同年齢。金髪で、綺麗な御顔で、お淑やかそうな人でした。
　なるほど、王女様か。そう言われれば、納得かも…。っていうか、私は名目上、チェリル様の奴隷なんですからね！

　で、ですね。王様のお子様は３人で、チェリル様は末娘の上に側妻の子。
　普通は、正妻の子である２人のお兄様のどちらかが次の王。しかし、この２人、どっちもあまり評判がよろしくない。…ハッキリ言って、出来が悪いバカ王子どもということ。
　更に王様は御身体が弱い。治癒魔法であっても寿命まで延ばすことは出来ませんから、早く次の跡継ぎを定めなければならない。
　貴族にも平民にも、圧倒的に人気が高いのはチェリル様。王様も彼女に跡を継がせようとしているみたい。
　ただし、当の本人には、その気が全くない。
　絶対イヤだと王城を出て祖父の大神官邸に居を移してしまい、毎日治癒魔法で人々を助けている。
　結果、益々、人気が高まり、次の王にという声は強くなるが、「治癒魔法を行使できる者が他に居ないのだから、そっちに専念したい」と本人から言われると、王様としても、それも無視できない…。

　そこで、王様から大神官へ命令が下りました。他の治癒魔法能力者を召喚せよと。
　王命に従い召喚儀式が行われ、召喚者はチェリル様の指導を受けて治癒に当たることになった…。
　私は、それに巻き込まれたのです。

　こういうことですから、オマケとしてついてきてしまった私は、必然的にチェリル様の奴隷ということにされたんですね。
　チェリル様さえ素直に次の王を引き受けてくれていれば、私はこんなところに来なくて済んだ。そして、こんなひどい目に会わずに済んだ…。
　苦しんでいる病人たちを助ける為とは言え、私は恨みますよ、チェリル王女殿下！