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『元の世界』へ戻る
26 何があったのか…
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翌朝。明るくなってきて、私は目を覚ましました。
真ん中で寝ている王女様は、まだスヤスヤ。しかし、その向こうのヘレーナが居ない。
キッチンへ行くとヘレーナが水を生成し、お湯を沸かす準備をしていました。
「おはよう、ヘレーナ。体は平気? それ、王女様にさせればよいのに…」
「いえ、そんな恐れ多い。私がするのが当然です。体もすっかり良くなりました。王女様のお蔭です」
「まあ、そうだけどね。無理しないでよ。けっこう出血してたからね」
「それなら柚奈も同じでしょ」
「いやいや、私の体は特別仕立てですからね。あんな出血程度はヘッチャラよ」
「柚奈は毎日、アレよりも酷い痛みに耐えてきていたんですね。尊敬します」
「それは、どうも。お誉めにあずかりまして光栄です」
私のおどけた笑顔に、ヘレーナも笑ってくれました。
水道と電気を確認しましたが、やっぱりどっちもダメ。テレビも点かないから、情報が無い。
少し古い電池式のラジオのスイッチをいれると…。
ザーーー。
周波数ダイヤルをいくら回しても同じ…。
嘘だ、どうなってる?ラジオも放送されていない??
いや、暫く使ってなかったから、壊れてるのかな……。
スマホは…、異世界で没収されて処分されちゃったから無い。
固定電話は…、電気きてないから繋がらないか。
これは、もうお手上げです。
取り敢えず食料だ。カップ麺だけじゃあ困る。他には何かないか…。
え~と、お米はある。
でも、電気が来てないから炊飯器が使えないよ!
あ、ヘレーナに魔法で炊いてもらえばよいのか…。
他には、買い置きの缶詰と、パスタやそうめんの乾麺。
野菜は、父さんがしていた庭の家庭菜園に葱とブロッコリーが植わっている。
あと、夏ミカンが生っているね。酸っぱくて家族の誰も見向きもしなかった物だけど、これも貴重な食料。
暫くは何とかなりそうね。
そうこうしていると、あくびしながら王女様が起きてきました。
「ねえ柚奈。あっちの机の上に、書き置きみたいなのがあったわよ。見たことない文字がびっしり書かれているけど、これ、なんて書いてあるの?」
え? 書き置き??
そういえば、王女様もヘレーナも、こっちへ来てからは何故か日本語で喋ってる。私がそうだったように、異世界転移すると転移先の言語が使えるようになるのよね。
但し、文字知識は得られないんでした…。
王女様から受け取ったのは、何枚かの便せん。
1枚目には「柚奈へ。母より」と書かれてる!
母さんからの手紙だ!!
急いで読むと・・・。
―――――
あなたが居なくなってしまい3ヶ月。でも、何となく、全く違う世界で元気でいてくれている気がしています。そして必ず帰ってきてくれる…。そんな気がします。
あなたが帰って来た時に困らないよう、何があったか書き記しておきます。
―――――
・・・・そうして、この世界で起きた大事件、恐ろしい『死の伝染病大流行』の顛末が順を追って記されていました。
さらに、その最後には・・・・
―――――
私も、父さんも、由梨も感染してしまいました。もう症状が出ています。これから感染者の集まる施設に向かいます。
柚奈、あなただけは、どうか元気でいて!
あなただけは、生きながらえて!
お別れです。さようなら。
―――――
読み終えて・・・。私はショックのあまり、そのまま気を失いました。
真ん中で寝ている王女様は、まだスヤスヤ。しかし、その向こうのヘレーナが居ない。
キッチンへ行くとヘレーナが水を生成し、お湯を沸かす準備をしていました。
「おはよう、ヘレーナ。体は平気? それ、王女様にさせればよいのに…」
「いえ、そんな恐れ多い。私がするのが当然です。体もすっかり良くなりました。王女様のお蔭です」
「まあ、そうだけどね。無理しないでよ。けっこう出血してたからね」
「それなら柚奈も同じでしょ」
「いやいや、私の体は特別仕立てですからね。あんな出血程度はヘッチャラよ」
「柚奈は毎日、アレよりも酷い痛みに耐えてきていたんですね。尊敬します」
「それは、どうも。お誉めにあずかりまして光栄です」
私のおどけた笑顔に、ヘレーナも笑ってくれました。
水道と電気を確認しましたが、やっぱりどっちもダメ。テレビも点かないから、情報が無い。
少し古い電池式のラジオのスイッチをいれると…。
ザーーー。
周波数ダイヤルをいくら回しても同じ…。
嘘だ、どうなってる?ラジオも放送されていない??
いや、暫く使ってなかったから、壊れてるのかな……。
スマホは…、異世界で没収されて処分されちゃったから無い。
固定電話は…、電気きてないから繋がらないか。
これは、もうお手上げです。
取り敢えず食料だ。カップ麺だけじゃあ困る。他には何かないか…。
え~と、お米はある。
でも、電気が来てないから炊飯器が使えないよ!
あ、ヘレーナに魔法で炊いてもらえばよいのか…。
他には、買い置きの缶詰と、パスタやそうめんの乾麺。
野菜は、父さんがしていた庭の家庭菜園に葱とブロッコリーが植わっている。
あと、夏ミカンが生っているね。酸っぱくて家族の誰も見向きもしなかった物だけど、これも貴重な食料。
暫くは何とかなりそうね。
そうこうしていると、あくびしながら王女様が起きてきました。
「ねえ柚奈。あっちの机の上に、書き置きみたいなのがあったわよ。見たことない文字がびっしり書かれているけど、これ、なんて書いてあるの?」
え? 書き置き??
そういえば、王女様もヘレーナも、こっちへ来てからは何故か日本語で喋ってる。私がそうだったように、異世界転移すると転移先の言語が使えるようになるのよね。
但し、文字知識は得られないんでした…。
王女様から受け取ったのは、何枚かの便せん。
1枚目には「柚奈へ。母より」と書かれてる!
母さんからの手紙だ!!
急いで読むと・・・。
―――――
あなたが居なくなってしまい3ヶ月。でも、何となく、全く違う世界で元気でいてくれている気がしています。そして必ず帰ってきてくれる…。そんな気がします。
あなたが帰って来た時に困らないよう、何があったか書き記しておきます。
―――――
・・・・そうして、この世界で起きた大事件、恐ろしい『死の伝染病大流行』の顛末が順を追って記されていました。
さらに、その最後には・・・・
―――――
私も、父さんも、由梨も感染してしまいました。もう症状が出ています。これから感染者の集まる施設に向かいます。
柚奈、あなただけは、どうか元気でいて!
あなただけは、生きながらえて!
お別れです。さようなら。
―――――
読み終えて・・・。私はショックのあまり、そのまま気を失いました。
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