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27 恐怖の伝染病
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気が付くと、布団に寝かされ、ヘレーナと王女様が心配そうに私を覗き込んでいる…。
あの手紙の通りだと、母さんも父さんも妹の由梨も、もう死んじゃっているでしょう。
横になったままですが涙が止めどなく溢れ出てきて、私を見詰める2人の顔がかすみます。
「柚奈。いったいどうしたの?何が書かれていたの?」
ヘレーナばかりか、王女様までが心配してくれている…。
そう、しっかりしなくちゃ。
私だけじゃない。この2人も居るんだから!
私は、体を起こし、手紙に書かれていたことを2人に話しました。
それは・・・。
私が異世界へ召喚された直ぐ後のことです。海を越えた隣の独裁国家C国で研究施設から危険なウイルスが流出しました。それはあっという間に彼の国の内に広がり、独裁者である首領も、政府高官たちも、全て感染し、死亡。国が崩壊してしまったのです。
このウイルスは生物兵器として人工的に作られたモノ。まだ実験段階であったものが誤って流出したようです。
自業自得。危険な国が消えてしまい。万々歳・・・とはゆきませんでした。
ウイルス感染は、彼の国の友好国であった陸続きである隣の大国へ。空気感染することからすぐに国中に広まり、そこからさらにヨーロッパ・南米・オーストラリアにも飛び火し、世界中が大パニック。感染が起きた国では政府機関も機能しなくなり無法状態。
そして、わが国にも…。
福岡と東京で同時に感染が確認されると、後はもう瞬く間に広まって、一般人のみか国会議員やら政府官僚やらも次々感染・・・。国の機能は完全麻痺。テレビやラジオも放送されなくなり、電車も止まり、流通も途絶え、電気も止まり、水道も…。
情報が無いからどうなっているのかも分からなくなってしまった。
公民館や学校などに避難し、食料を持ち寄って助け合って生活するようになったが、そこでも感染の疑いがある者が出たりしてパニックになることも。
感染者と接触したものは隔離施設に指定された場所に行くことになり、10日以上の隔離で問題なければ戻ることが出来るという取り決めがなされた。
そして感染者は更に感染者の施設に行くことになる。その感染者の施設というのが、町の斎場。
そう、感染すると、もう助からない。
最初の5日程度は微熱と咳の症状。この咳でウイルスをまき散らす。発症6日目で急激に熱が上がって動けなくなり、目・鼻・口・耳等から血を噴き流し、死んでしまう。致死率100%の恐るべき殺人ウイルスなのです。
この恐怖のウイルスに、私の家族は感染してしまった。それが約1か月前のこと。
もう、3人とも、とっくに死んでしまっているでしょう・・・。
涙をタラタラ零しながらここまで話すと、ヘレーナが私を抱きしめてくれました。
「大切な家族を亡くしてしまったのね。可哀想な柚奈」
そう、私は完全なヒトリボッチになってしまったのです。
私の家族は、もうこの世に存在しない。みんな死んでしまった・・・。
でも、もしも、あの時私が召喚の儀に巻き込まれていなかったら……私も同じ運命をたどっていたことでしょう。自分の運命を呪っていたけど、これはある意味、凄い幸運だったのでした。
ヒトリボッチは寂し過ぎる。しかし、亡くなってしまった家族の分までも、私だけは生き抜く義務がある!
「もう大丈夫よ、ヘレーナ。それよりも、こんな危険な世界に来ちゃって、あなたたちこそ大変よ」
「そうよ、ヘレーナ。どうするのよ! 話が違うわよ! こんな世界じゃ生きていけないわ!」
王女様も涙目になっています。
私のことを同情して・・・じゃなくって、自分の身を案じてですよね……。
まあ、それは良いですよ。それが普通です。
「アロマ神官には、あちら側のことをお願いしてあります。危険が無くなり次第、呼び戻してもらえる手はずになっています。なるべく早く呼び戻すと言われていますので、早ければ来月の満月にでも」
「早ければって、じゃあ、遅くなったら、いつになるのよ!」
「いや、それは分かりません。通信の手段はありませんので、向こうに任せるしか…」
「そ、そんな・・・」
王女様、床にヘタリ込んで項垂れてしまいました。そうですよね。私が彼女の立場だったらと考えると、気持ちは分かります。
しかし、だからこそ、私も同じように落ち込んでいる訳には行かないのですよ。空元気、上等よ!
「とりあえず、食事にしましょう! 大丈夫よ。餓死しないだけのものはあるから。美味しい物を期待されると困るけどね。腹が減っては戦が出来ぬ。食事、食事!」
「柚奈、あなたはホントに強い子ですね」
い、いや…。私だってスゴク悲しいよ。泣き叫びたいよ。
でも、そんなことしてても始まりませんからね。出来ることを精一杯やるだけです。
向こうの世界でも、これは同じでした。抵抗せずに、ずっと大人しく生体解剖され続けていた私なんです。
食事は…。ヘレーナはもう大丈夫と言っていますが、まだ無理させられない。お湯だけ沸かしてもらって、やっぱりカップ麺。今日は味噌味です。
デザートに、庭の夏ミカン。
カップ麺は、引き続き好評。でも夏ミカンは酸っぱくて不評。
ビタミンCを補給しないといけませんからね。我慢して食べてください。酸っぱい物は体に良いですよ。
あの手紙の通りだと、母さんも父さんも妹の由梨も、もう死んじゃっているでしょう。
横になったままですが涙が止めどなく溢れ出てきて、私を見詰める2人の顔がかすみます。
「柚奈。いったいどうしたの?何が書かれていたの?」
ヘレーナばかりか、王女様までが心配してくれている…。
そう、しっかりしなくちゃ。
私だけじゃない。この2人も居るんだから!
私は、体を起こし、手紙に書かれていたことを2人に話しました。
それは・・・。
私が異世界へ召喚された直ぐ後のことです。海を越えた隣の独裁国家C国で研究施設から危険なウイルスが流出しました。それはあっという間に彼の国の内に広がり、独裁者である首領も、政府高官たちも、全て感染し、死亡。国が崩壊してしまったのです。
このウイルスは生物兵器として人工的に作られたモノ。まだ実験段階であったものが誤って流出したようです。
自業自得。危険な国が消えてしまい。万々歳・・・とはゆきませんでした。
ウイルス感染は、彼の国の友好国であった陸続きである隣の大国へ。空気感染することからすぐに国中に広まり、そこからさらにヨーロッパ・南米・オーストラリアにも飛び火し、世界中が大パニック。感染が起きた国では政府機関も機能しなくなり無法状態。
そして、わが国にも…。
福岡と東京で同時に感染が確認されると、後はもう瞬く間に広まって、一般人のみか国会議員やら政府官僚やらも次々感染・・・。国の機能は完全麻痺。テレビやラジオも放送されなくなり、電車も止まり、流通も途絶え、電気も止まり、水道も…。
情報が無いからどうなっているのかも分からなくなってしまった。
公民館や学校などに避難し、食料を持ち寄って助け合って生活するようになったが、そこでも感染の疑いがある者が出たりしてパニックになることも。
感染者と接触したものは隔離施設に指定された場所に行くことになり、10日以上の隔離で問題なければ戻ることが出来るという取り決めがなされた。
そして感染者は更に感染者の施設に行くことになる。その感染者の施設というのが、町の斎場。
そう、感染すると、もう助からない。
最初の5日程度は微熱と咳の症状。この咳でウイルスをまき散らす。発症6日目で急激に熱が上がって動けなくなり、目・鼻・口・耳等から血を噴き流し、死んでしまう。致死率100%の恐るべき殺人ウイルスなのです。
この恐怖のウイルスに、私の家族は感染してしまった。それが約1か月前のこと。
もう、3人とも、とっくに死んでしまっているでしょう・・・。
涙をタラタラ零しながらここまで話すと、ヘレーナが私を抱きしめてくれました。
「大切な家族を亡くしてしまったのね。可哀想な柚奈」
そう、私は完全なヒトリボッチになってしまったのです。
私の家族は、もうこの世に存在しない。みんな死んでしまった・・・。
でも、もしも、あの時私が召喚の儀に巻き込まれていなかったら……私も同じ運命をたどっていたことでしょう。自分の運命を呪っていたけど、これはある意味、凄い幸運だったのでした。
ヒトリボッチは寂し過ぎる。しかし、亡くなってしまった家族の分までも、私だけは生き抜く義務がある!
「もう大丈夫よ、ヘレーナ。それよりも、こんな危険な世界に来ちゃって、あなたたちこそ大変よ」
「そうよ、ヘレーナ。どうするのよ! 話が違うわよ! こんな世界じゃ生きていけないわ!」
王女様も涙目になっています。
私のことを同情して・・・じゃなくって、自分の身を案じてですよね……。
まあ、それは良いですよ。それが普通です。
「アロマ神官には、あちら側のことをお願いしてあります。危険が無くなり次第、呼び戻してもらえる手はずになっています。なるべく早く呼び戻すと言われていますので、早ければ来月の満月にでも」
「早ければって、じゃあ、遅くなったら、いつになるのよ!」
「いや、それは分かりません。通信の手段はありませんので、向こうに任せるしか…」
「そ、そんな・・・」
王女様、床にヘタリ込んで項垂れてしまいました。そうですよね。私が彼女の立場だったらと考えると、気持ちは分かります。
しかし、だからこそ、私も同じように落ち込んでいる訳には行かないのですよ。空元気、上等よ!
「とりあえず、食事にしましょう! 大丈夫よ。餓死しないだけのものはあるから。美味しい物を期待されると困るけどね。腹が減っては戦が出来ぬ。食事、食事!」
「柚奈、あなたはホントに強い子ですね」
い、いや…。私だってスゴク悲しいよ。泣き叫びたいよ。
でも、そんなことしてても始まりませんからね。出来ることを精一杯やるだけです。
向こうの世界でも、これは同じでした。抵抗せずに、ずっと大人しく生体解剖され続けていた私なんです。
食事は…。ヘレーナはもう大丈夫と言っていますが、まだ無理させられない。お湯だけ沸かしてもらって、やっぱりカップ麺。今日は味噌味です。
デザートに、庭の夏ミカン。
カップ麺は、引き続き好評。でも夏ミカンは酸っぱくて不評。
ビタミンCを補給しないといけませんからね。我慢して食べてください。酸っぱい物は体に良いですよ。
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