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40 女王代理
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王となれば、綺麗ごとだけでは済まされません。時には非情な選択も必要になります。
全ての国民を、全て完全に満足させるなんてことは不可能です。
しかし、それで恨みを買うと、その念に悩まされることになってしまう・・・。
能力者ゆえの厄介事なんですね。
頭の良い彼女は、それを分かっていた。
単に、病気の人の治療をしているだけなら、感謝こそされ恨まれることは無いですからね。だから、王にはならず、医療に専念したいなどと言っていたのです。
これは大変申し訳ないことでした。
だけども、彼女しか正当な王位継承者が居なかったのですから、仕方ないでしょう。
それに・・・。
国民にしてみれば、家族・親族・友人たちが殺されているのです。焼け出され、全財産を失った人もいるのです。
ここで「報復はしない」なんていえば、逆に自国民から恨まれることになりかねませんよ。
どっちかに恨まれるなら、近くに居る国民よりも遠くの敵国民に恨まれる方がダメージ少なくない? 向こうは自業自得なんだし!
グダグダ言ってる暇なんてありません。反撃するなら、今しかない。
時期を逃せば、打つ手は無くなる……。
そう思うから、また私、ちょっとばかり強く言っちゃいました。
「アンタ、それでも王なの? 情けないったらありゃしない!
王なら王らしく、自分のことより国民の気持ちを考えなさいよ。一方的に攻められて命を落とした同胞の仇も取ってくれない王なんて、あり得ないでしょう!
こんな当たり前の決断も出来ないヘタレ女王なんかじゃ、それこそ国民が可哀想過ぎるわ。最悪のヘタレ女王よ!」
流石にこれは・・・、女王・・・キレちゃった。
「何よ、柚奈! アンタですって?? ヘタレって何!!
無礼よ。王に対する不敬。反逆よ。死刑よ」
いや、そんなこと言われますとね、私も売り言葉に買い言葉ですよ。というか、最初に売ったのは私だけどさ…。
「死刑? 出来るもんならしてみなさいよ。私、不死身なんだから。ほら、そこに立派な剣があるじゃない。それで私の首をスポンと刎ねなさいよ。心臓をえぐり出してズタズタに切り刻んで見なさいよ。ほらほら、早く! 出来もしないくせに、このヘタレ!」
「お、おのれ~、奴隷の分際で~。ゆ、ゆ、ゆ、許さない~!!」
女王、私に掴みかかってくる。私だって大人しくなんかしてませんよ。2人で取っ組み合いです。
すぐ、ヘレーナが止めに入ってくれました。
「柚奈、口が過ぎます。こちらの世界では、あなたは奴隷なのです。立場を弁えなさい。それからチェリル様も落ち着いてください。柚奈は悪気があって言っているのではありません」
はい、その通り。ゴメンナサイ。しかし、女王の方が納得しません。
「いや、女王を侮辱するなんて、絶対、絶対、ゼ~ッタイ、許さない。なにか罰を…。そうだ、柚奈。あなた偉そうに私にお説教垂れてくれたわね。そんなに言うなら、あなたがなさい。この件についての王の権限をあなたに移譲します。あなたはたった今から女王代理です。これは、女王たる私の命令です」
「は、はああ?! そ、そんな無茶苦茶な・・・」
「いや、王命です。あなたは私の奴隷なのですよ。王の命令に従いなさい!」
「い、いやいやいや。無理無理。私になんか出来るはず無いでしょ」
「無理もへったくれもありません。そうだ、この件が上手くいったら、あなたを奴隷身分から解放してあげます。だからお願い! 私の代理を、あなたがやってよ!!」
あまりに無茶な命令。普通であれば奴隷が国を動かすなんて絶対あり得ません。でも今は非常時です。ですからこんなこともまかり通る?!
いや、そんな馬鹿な。非常識過ぎる・・・。
チェリル女王は、そのまま逃げるように奥の部屋に引っ込んでしまいました。
・・・と思ったら、暫しして私のところに、高価そうなお盆に載せた立派な書面を侍女が運んできました。
これは、女王からの正式な勅令書…。
『ユナ・コクボを臨時王権執行者とし、この度の敵国に対する処置の全権限を委任する・・・』
うわ、本気なんだ・・・。
ヘレーナが苦笑します。
「何だか面白いことになってしまいましたね」
「他人事みたいに言わないで!」
「で、どうされますか、ユナ女王代理」
「やめてよ、そんな呼び方…。でも、当然、報復します。完膚亡きまで」
「ですよね。存分に、やりましょう!」
いや~、ヘレーナも完全にヤル気ですよ。彼女も容赦ないヒトですからね・・・。
全ての国民を、全て完全に満足させるなんてことは不可能です。
しかし、それで恨みを買うと、その念に悩まされることになってしまう・・・。
能力者ゆえの厄介事なんですね。
頭の良い彼女は、それを分かっていた。
単に、病気の人の治療をしているだけなら、感謝こそされ恨まれることは無いですからね。だから、王にはならず、医療に専念したいなどと言っていたのです。
これは大変申し訳ないことでした。
だけども、彼女しか正当な王位継承者が居なかったのですから、仕方ないでしょう。
それに・・・。
国民にしてみれば、家族・親族・友人たちが殺されているのです。焼け出され、全財産を失った人もいるのです。
ここで「報復はしない」なんていえば、逆に自国民から恨まれることになりかねませんよ。
どっちかに恨まれるなら、近くに居る国民よりも遠くの敵国民に恨まれる方がダメージ少なくない? 向こうは自業自得なんだし!
グダグダ言ってる暇なんてありません。反撃するなら、今しかない。
時期を逃せば、打つ手は無くなる……。
そう思うから、また私、ちょっとばかり強く言っちゃいました。
「アンタ、それでも王なの? 情けないったらありゃしない!
王なら王らしく、自分のことより国民の気持ちを考えなさいよ。一方的に攻められて命を落とした同胞の仇も取ってくれない王なんて、あり得ないでしょう!
こんな当たり前の決断も出来ないヘタレ女王なんかじゃ、それこそ国民が可哀想過ぎるわ。最悪のヘタレ女王よ!」
流石にこれは・・・、女王・・・キレちゃった。
「何よ、柚奈! アンタですって?? ヘタレって何!!
無礼よ。王に対する不敬。反逆よ。死刑よ」
いや、そんなこと言われますとね、私も売り言葉に買い言葉ですよ。というか、最初に売ったのは私だけどさ…。
「死刑? 出来るもんならしてみなさいよ。私、不死身なんだから。ほら、そこに立派な剣があるじゃない。それで私の首をスポンと刎ねなさいよ。心臓をえぐり出してズタズタに切り刻んで見なさいよ。ほらほら、早く! 出来もしないくせに、このヘタレ!」
「お、おのれ~、奴隷の分際で~。ゆ、ゆ、ゆ、許さない~!!」
女王、私に掴みかかってくる。私だって大人しくなんかしてませんよ。2人で取っ組み合いです。
すぐ、ヘレーナが止めに入ってくれました。
「柚奈、口が過ぎます。こちらの世界では、あなたは奴隷なのです。立場を弁えなさい。それからチェリル様も落ち着いてください。柚奈は悪気があって言っているのではありません」
はい、その通り。ゴメンナサイ。しかし、女王の方が納得しません。
「いや、女王を侮辱するなんて、絶対、絶対、ゼ~ッタイ、許さない。なにか罰を…。そうだ、柚奈。あなた偉そうに私にお説教垂れてくれたわね。そんなに言うなら、あなたがなさい。この件についての王の権限をあなたに移譲します。あなたはたった今から女王代理です。これは、女王たる私の命令です」
「は、はああ?! そ、そんな無茶苦茶な・・・」
「いや、王命です。あなたは私の奴隷なのですよ。王の命令に従いなさい!」
「い、いやいやいや。無理無理。私になんか出来るはず無いでしょ」
「無理もへったくれもありません。そうだ、この件が上手くいったら、あなたを奴隷身分から解放してあげます。だからお願い! 私の代理を、あなたがやってよ!!」
あまりに無茶な命令。普通であれば奴隷が国を動かすなんて絶対あり得ません。でも今は非常時です。ですからこんなこともまかり通る?!
いや、そんな馬鹿な。非常識過ぎる・・・。
チェリル女王は、そのまま逃げるように奥の部屋に引っ込んでしまいました。
・・・と思ったら、暫しして私のところに、高価そうなお盆に載せた立派な書面を侍女が運んできました。
これは、女王からの正式な勅令書…。
『ユナ・コクボを臨時王権執行者とし、この度の敵国に対する処置の全権限を委任する・・・』
うわ、本気なんだ・・・。
ヘレーナが苦笑します。
「何だか面白いことになってしまいましたね」
「他人事みたいに言わないで!」
「で、どうされますか、ユナ女王代理」
「やめてよ、そんな呼び方…。でも、当然、報復します。完膚亡きまで」
「ですよね。存分に、やりましょう!」
いや~、ヘレーナも完全にヤル気ですよ。彼女も容赦ないヒトですからね・・・。
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