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富山での御縁

22 デカパイコンビ2

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 朝食を終えて、チェックアウトしにフロントへ。
そこに、例のデカパイ二人が居ました。
 でも、何やら大いに困っている様子。
フロントマンを前にして荷物の中に手を突っ込んで、何かを大慌てで探しています。

「どうしたんですか?」

 近くに居た宿の人に訊いてみると、二人そろって財布を無くしたとか…。

 え? こ、これは……。

 隣の下方をみると、ビンちゃんがニヤッとした笑みを向けています。
 宿の人が遠ざかったのを確認してビンちゃんに小声で訊きます。

「あの……。もしかして、何かしました?」

「フン。私の楽しみの邪魔をした悪いヤツらめ。ちょっと、お仕置きじゃ」

 あちゃ~。ビンちゃんの仕業だ…。

「かわいそうじゃないですか。財布、返してあげてくださいよ」

「嫌だ。というか、無理だ。既に泥棒が持ち去ってしまった。
それに、私は力を制御できなくなって久しい。
財運を飛ばすことは出来ても、戻すことは、出来ない」

「え~!! じゃあ、あの二人、もう一生財運無し?」

「まさか、そこまではせん。
ハルカに飯を食わせてもろうて、力の加減は出来るようになった。
これ以上の事は無いはずだ」

 いや、それにしても、二人そろって財布無しでは、支払い出来ないし帰れないでしょうに…。

 ビンちゃんがやってしまったこと。
私に責任が……あるのかな?
 私、保護者じゃないんですけど……。

 まあ、仕方ありません。ここは、私が…。

 あ~あ、これで私のお金が減る。
 貧乏神様、恐るべし……。


 宿代と帰るための費用を貸すと、二人は土下座しそうな勢い。慌て止めさせます。
これ以上、目立ちたくありません。
 で、「必ず返しますから連絡先を教えてください」とのこと。
そうですね。私としても、やっぱり、返しては欲しい。
期待していませんがね。
 二人はそれぞれ、名刺を出してきます。

 ナニナニ、え? 大学生なの?
学生で名刺を持っているとは、何とも…。
 名古屋の大学か。家に、まあまあ近いじゃない。
 そういえば、私も名刺、あったな…。

 入るはずだった会社の名刺。
もういらないモノですけど、一応、持って来ていました。
 これ、肩書がハズイのよね。「新人」ですもん。
先輩社員さんとお得意様に配るためにと会社で事前に作ってくれていた顔写真入りのモノです。
 こういう辺りは、しっかりしていたのにな…。
 初出社日に持ってくるように言われていて、結局一度も使わず不用品になってしまいました。
 まあ、会社を潰したのは、お隣にいる貧乏神のエース様。
この御方に掛かれば、ひとたまりもないということですな。
 恐るべし、ビンちゃん……。

 で、その名刺の住所は会社のモノですが、名前と顔写真は私のモノ。名刺裏に自宅住所を書いて二人に渡しました。

「あら、この会社の住所、私たちの学校のすぐ近くですよ。
会社にお返しに行って良いですか?」

 お風呂ではかけていませんでしたが、眼鏡をかけた「突っ込み担当」女子が言います。

「あ、ダメ。この会社、数日前につぶれちゃったの。
だから、裏に書いた自宅へお願い」

「え!? つぶれたって…。じゃあ、お姉さんも大変じゃないですか!
それなのに、こんな……」

 これは語学堪能な「ボケ」の方の女子の発言。

「良いって。袖すり合うも他生の縁というでしょ。
あなたから声かけられたのも縁ってことね。
まあ、そういうことで。じゃあね」

 う~ん。我ながら、決まったかな。
まあ、金髪容姿と発言内容のギャップが酷いですが……。

 デカパイ二人組は、

「有難うございます」

 と揃って勢いよく頭を下げます。
 豊かなおっぱいがプルンプルンと揺れるのが服の上からも分かる。
やっぱ、羨ましい…。


 二人に見送られ、清算を済ませると、なぜか従業員が集まってきて、並んでお見送り。とんだビップ待遇ですよ。
 でも考えてみれば、別料金で個室での食事を頼み、大量のお酒に追加料理も。
おまけに先ほどのデカパイ二人組の件です。
 こ~んなことになっちゃいますか…。

「是非、また、お越しを!」

 はい、私も、そうしたいです。
ですが、どうかな…。
 何しろ、私は貧乏神様憑き。

 あ、いや、大丈夫。私はラッキーガール!
 また、必ず来ます!
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