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富山での御縁

23 帰宅

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 車に乗り込みますと、そうです。車内には、大きな石がゴーロゴロ。
こんな重い荷物を持ってどこか寄るのも……。
ということで、このまま帰ることにしました。
 安全運転で家まで。到着は午後三時頃。

 あ、昼食は途中のサービスエリアでした。
 他人に見られないようにビンちゃんに食べさせるのは、かなり気を使います。
エビフライをビンちゃんにア~ンした時、うっかり向かいのテーブルのお婆さんに見られてしまいました。
お婆さん、箸をポロッと落としてた。
 多分、エビフライが空中で消えて行くように見えたのでしょう。

 大丈夫、お婆ちゃん、気の所為せいですよ。
今、見たのは幻覚。
あなたは、ボケたわけではありません。
 大丈夫、大丈夫……。


 家に到着後は、ビンちゃんの指示で結界を張る作業。
拾って来た石を二人でエッチラホッチラ運びます。
 我が家は高屋敷で石段があるため、駐車場は門の外というか、下。
そこから重い石を十個、運び上げなければならない……。
 かなり大変です。

「ハルカよ。お前、トンデモナイ家に住んでいるな」

「はい、ごめんなさい。先祖代々の家です。
ですが、八年ホッタラカシにしていまして、三日前に戻って来たばっかりです。
まだ掃除途中なんですが、もう、嫌になってしまって長野へ逃げ出したというような次第でありまして……」

「フ~ン。そうか…。
でも、家相的にも非常に良い家じゃぞ。結界が張りやすい」

 へ~。そうなんだ。
やっぱり、昔の家って、そういうことも考えて建てられているんでしょうね…。

 で、石はと言うと、まず一番デッカイのを、庭に置きます。
 次は北東隅に二番目にデカイ物。
 後は、順番に大きい順で時計回りに敷地隅へ。
そして、東、南・西・北に。
 これで九個です。

 最後に残ったのは一番小さいモノ。

「これは、予備じゃ。家の中にでも置いておけ」

と、結界張り作業は終了したのでした。

 気休め程度なんてビンちゃんは言いますが、まあ、少しでも効果あるのなら、あった方が良いですもんね。
 ありがとう、ビンちゃん。



 さて、そうだ。
帰ってきたのですから、氏神様にお参りしなきゃ。
ただいまの御挨拶です。
 ビンちゃん引き連れ、やってきました名木林神社。

 あ、あれ? 誰かいる…。白い着物に緋の袴。
髪は長く、とっ~ても美人。
 巫女さん?
 いや、神主さんが常駐していない神社なのです。
なのに、巫女さんなんて居るはず無い。
 おまけに、とっても、と~っても美人さんではありますが、失礼ながら巫女さんと言うには、ちょいと御歳がいっている感じのお姉様…。
 も、もしかして……。

 真っ直ぐその女性の方へ歩いて行きますと、女性は気が付き、驚いた表情。
そして、その驚きの表情のまま、ズリッ、ズリッと後退ります。

「あ、あの…。もしかして、神様ですか?」

「へえ?! な……、何故?
ハ、ハルカ、あなた、私が見えるの?」

 な、何故って…。
こっちは、私の名前が知られている方が驚きですよ。
 あ、そうか、氏神様だとしたら、当然か……。

「あ、あの。色々ありまして、見えるようになっちゃいました。
お声も聞こえます」

「う、うそ……。
そ、それに、あなたの後ろに隠れている、その御方は……」

「あ、この子はビンちゃん…、あ、いえ、貧乏神様のエース様。
スサノオ様の、お子さんだそうです」

「ひいいいいっ!」

 ええ?! なんで、そんなに怯えるの?

 だって、ここの御祭神は天照大御神様のはず。
スサノオ様はアマテラス様の弟です。
 ですから、ビンちゃんはアマテラス様の姪っ子ってことになるはずです。

 深々と頭を下げるアマテラス様を見て、ビンちゃんは頭をポリポリ掻きます。

「ハルカよ。お前から事情を説明してやってくれ。私は少し席を外す。
終わったら、私の名を呼べ」

「あ、待って。ビンちゃんが居ないと困る!」

「大丈夫だ。ここには悪いモノは近づけぬからな。では」

 ビンちゃんは、ポンと消えてしまいました。
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