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梅干しと、父の思い

54 梅干し、作るぞ~!

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 さて、さて、です!
あれから暫く経ち、季節は六月。梅が実ってきましたよ。
 立派な梅がたわわについて、枝が重そうです。

 私、梅って青い内に収穫して利用するものだと思っていました。
実際、梅酒にするのは青い梅だそうです。
 でも、父さんの覚書によると、梅干しにするのは黄色くなったモノなんですって。
但し、熟しすぎると軟らかくて潰れちゃう。青いのだと硬い梅干しになっちゃう。
その中間だってことで、加減が難しそう…。

 今、全体的にジンワリ黄色く色づいてきた頃で、そんな頃が収穫時期と覚書には書いてある。
だから、今日は梅の収穫大作戦です!
 天気は、どんよりと曇り。雨が降り出しそうな感じでもありますけど、紫外線に弱いアルビノの私には好都合。
 そして、土曜日だけど弟子二人も手伝いに来てくれています。
その上、ヤスイの小父さんまでも…。
 ホント、有難うございます。
でも、小父さん、無理しないでね。もう、八十歳超えてるんですからね。

 私と小父さんで、下の方に生っているモノを収穫して行きます。
ですが、木はかなり大きく成長しています。上の方は届かない。
そっちは脚立を使って祐奈とレイラが担当。
 暫くすると、畑の方を再度耕す為に来てくれていた造園会社の人が、畑を済ませて手伝ってくれました。
 いやいや、流石プロ。手際よい。みるみる梅の山で、あっと言う間に終了です。

 で、ドドーンと積まれた収穫用の箱。中は全て梅の実が満杯ですよ。
全部で、いったい何キロあるの?
 小父さんが手配してくれた軽トラに積み込み、向かうはタカイの作業場です。

 到着した作業場。新しい…。新築なんですよ。
 小父さん曰く、漬物加工用として建てた最新施設。
というのも、食品衛生法の改正で漬物を作るのに保健所の許可が必要になったからということ。
それなりの設備の整った施設がないと、許可は下りませんからね。新たに作り、許可を取ったとのことです。
 どうも、父さんが作っていたころとは事情がかわってきているみたい。
小父さんの力を借りられるのは、ホントにラッキー。
 やっぱり私はラッキーガール!

 さて、まずは梅の実の選別。傷のついているモノは良い梅干しになりません。
それに、一気に同じように熟してくるわけではありませんので、その熟し具合でも分けます。
 青いのはスーパータカイで青梅として売ってもらい、そのお金で塩とシソを用意してもらうことになりました。
 小父さん、施設も使わせてもらっていますので、その使用料分も取っておいてくださいね。
 で、選別した梅干し用が300キロ。一樽30キロで、十樽分です!

 樽は既に家から運び込んであって、綺麗に洗って滅菌済みです。漬物石も…。
小父さんの指導監督の下、私と弟子二人で、頑張って梅のヘタを取り、水で洗います。
 水を切って、一樽あたりに塩4.5キロ。梅と交互に入れて行き、中蓋を入れて重石を乗せ、蓋をします。
 ドドーンと並んだ大きなプラ樽十個。壮観です!
 今日の作業はここまでですね。
いやしかし、これ、絶対明日は筋肉痛だわ…。

 この日はタカイでお惣菜を買い、弟子たちはお泊り。
当然の如く宴会と、五右衛門風呂で~す。



 翌日…。
か、体中が痛い……。

 予想を裏切らない筋肉痛です。運動不足ですね。
レイラも同じみたいですが祐奈は大丈夫みたい。さすが体力担当。

 小父さんとの約束で、昼過ぎに梅の様子を見に行きます。
 蓋を取って中を確認すると、熟し度が高い梅の樽は、既に水分が上がり始めている。
この水分が、「白梅酢」です。
 梅に被るまで白梅酢が上がってきたら、重石を軽くしなければなりません。
そうしないと、梅が潰れちゃうみたい。
 カビが浮いてきてもすぐに除去しなければなりませんので、これから毎日確認が必要です。


 毎日通って、全ての樽の確認。
無事にみんな梅酢が上がり、重石も軽くしてあります。
 カビも少し浮いてきた樽もありましたが、すぐに除去!広がることはありませんでした。一樽を除いては…。

 その一樽というのは、梅の完熟度が一番高かったモノ。
白い膜が梅酢の表面に張ってしまいました。
 こうなった場合の対処方法も覚書にありました。
すぐに天日に当てるのです。
 平日のことでしたので、弟子たちはいません。
小父さんと二人で樽から梅を取り出し、大きな平ザルに並べ、直射日光に当てます。
 樽もエッチラ、オッチラ、運び出し、梅酢も重石も蓋も、全て天日消毒。
 この作業で、カビは消えました。いや、良かった…。
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