月の影に隠れしモノは ~人魚と河童の事件編~

しんいち

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美雪と早紀

15 結婚許可1

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「慎也さん!大変です!」

 美雪が、慎也の部屋に駆け込んできた。
 早紀も同じであるが、美雪はそれまで慎也のことを「宮司さん」と呼んでいた。が、妾になることが決まり、呼び方を改めていた。

「な、なに? どうしたの?」

 机に向かって書き物をしていた慎也が振り返った。
 早紀の話では、彼女の父親は再婚したがっていて、その許可を貰いに来るとのこと。早紀に関しては特に問題なく話が進みそうだと、慎也は安心しきっていた。

「さ、早紀の小父おじ様が・・・」

「あ、もう、いらっしゃったのか。で、何が大変なの?」

「そ、それが・・・」

 美雪は口をパクパクさせて、後の言葉が出ない。

「と、とにかく、早く来てください!」

 それだけ何とか口にした美雪に左手を引かれて、慎也は部屋から連れ出される。途中で祥子も捕獲され、美雪に二人は引っ張られた。
 丁度、舞衣もあわてて神社から戻ってきた。

「舞衣さんも早く~!」

「え?何? あ、もういらっしゃってる? すぐ行くから!」

 舞衣の返事を聞いて、美雪はつかんでいる慎也と祥子を、そのままグイグイ引っ張ってゆく。
 慎也が座敷に入ると、上座に坐った御客様の向かいに早紀が坐り、そのお客様を早紀が無言でにらみつけていた。
 今日は早紀の相談の時と違い、客を迎えるということで机と座布団が用意してある。しかし、まだお茶も出していないようだ。
 坐っている男性は、早紀の父親であろう。が、女性は、かなり若い。そして困り顔でうつむいている。

(おや?)

 慎也は、少し首を下げてのぞき込むようにした。うつむいていて、よく見えないが…。確か・・・。舞衣と同じ隅田川乙女組の・・・。

「え、遠藤スミレさん…」

「はあ? 誰じゃ?」

慎也の口から発せられた聞いたことのない名前に、祥子が怪訝けげんな顔をした。

「いや、舞衣さんと同じアイドルグループに所属していた子なんだけど・・・。どういうこと?」

 小声で祥子に言いながら、その、上座二人をにらみつけている早紀の隣に慎也が坐る。
 祥子は慎也の斜め後ろ。美雪が、早紀のもう一方の隣に坐った。
 美雪が坐り終わったのを確認し、慎也は早紀にいた。

「えっと…。どういうことになっているのかな?」

「知りません! ただ、正面に居るのが、私の父です。みんなそろうまで黙ってろと言ってあります」

「は、はあ?」

 早紀は、慎也たちが来るまで自身の父親に発言を許さず、その目の前の二人をずっとにらみつけていたということだ。

「ゴメンナサイ~! お待たせしました。急なお客様があって・・・。あ、あれ? スミレちゃんが、何で?」

 あわてて入ってきた舞衣が固まった。

「え!! もしかして、スミレちゃんの結婚相手って、早紀さんの・・・」

 続く言葉を無くした舞衣に、早紀が視線を向ける。明らかな怒り顔。
 慎也が一番奥の、自分の隣の空席を指さした。舞衣に、ここへ坐れと…。

「さて、みんなそろいました。父さん、釈明をどうぞ!」

「え、え~と、私が早紀の父親の山上総司です。実は、隣に坐っている遠藤スミレさんと再婚したく、娘の了承をもらいに来たのですが・・・。実はスミレさんは、もう、身籠みごもっていまして…。ですから、男の責任として、正式に結婚したいと・・・」

 早紀がスミレに鋭い視線を流す。

「遠藤さん!失礼ですけど、御歳は?」

 困り顔のまま、スミレは顔を上げ、おずおずと答える。

「二十二歳です」

「私も二十二歳……。『若い』とは聞いていたけど…。父さん、娘と同年の子に手を出したの?
 で、遠藤さんは、いつから父とお付き合いを?」

 早紀は、「五年付き合っている彼女が居る」と、既に電話で父から聞いていた。この質問は、その確認の為。だから、父に向けていた視線を途中でスミレに移し、スミレにいた。

「は、はい、五年と少し前から・・・」

 返答を受け、再び鋭い視線を父親に戻す。

「こっちに全く帰ってこなくなった頃なのよね。娘をホッタラカシて、その娘と同い年の若くて可愛い子を手籠てごめにして、毎日イイコトしまくってたんだ…」

 いや、父は帰ってこなくなったのではない。帰っては来ていた。泊まらなくなっただけなのだ。
 しかし、その父、総司は娘に反論しなかった。そう、総司は・・・。

「ち、違うんです!」

 急に、隣のスミレが大きな声を出した。

「スミレちゃん、落ち着いて! いいんだよ。その通りなんだから」

 発言を止めようとする総司に、スミレは大きくかぶりを振った。

「違います! 総司さんは悪くなんかありません! 総司さんが居なければ、私は生きていない! 総司さんは、私の命の恩人なんです!」

 スミレは、やおら立ち上がり、いきなり服を脱ぎだした。

「ちょ、ちょっと、スミレちゃん!!」

 舞衣があわてる。総司も止めようとするが、その手を払い、ブラジャーも外す。スミレは上半身裸になった。
 舞衣は即座に慎也の目に手を当て、見えないように目隠しをした。
 祥子は怪訝けげんな顔。美雪と早紀は、唖然あぜんとして見つめる・・・。
 構わずスミレは、スカートも脱ぐ。そして、最後のショーツに手を掛ける。
 慎也は、目を隠されたまま。だが、ついこの間、同じようなことがあったばかり。それをしたのは、今、慎也の隣に坐っている早紀だ。

(もしかして・・・。いや、そんなはずは・・・。そんなこと、あり得ない・・・)

 舞衣の手で隠されてしまっているが、慎也はスミレが次々脱いでいく気配を感じていた。
 そのスミレは、ついにショーツも脱ぎ終わり、全裸になった。

 その股間には・・・。
 あるはずがない物が、ぶら下がっていた。

 舞衣も、呆然ぼうぜん・・・。慎也の目に当てている手の力を抜いた。
 目隠しが無くなり、慎也の目に飛び込んできたモノ。舞衣の後継者と言われた元美少女アイドルの全裸と、その股間の異物・・・。

 スミレの隣の総司が、彼女に服を羽織はおらせ、坐らせた。

「私と同じ体・・・」

 早紀が、小さな声でつぶやいた。
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