きらめきの星の奇跡

Emi 松原

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ブルーローズ

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「どうだい?質問はあるかい?」
 元の場所に戻ってくると、キラさんが俺たちに聞いた。
「いえ……」
 俺は、情報を頭の中で整理するのに精一杯で、少し曖昧な返事をしてしまった。
「ここは、とても賑やかで、優しくて、不思議な場所ですね」
 リルが言った。
 キラさんが、優しく頷いた。
「このギルドは、元々国がつくったギルドではあるけれど、メンバーは、マスターが、直接声をかけて選んだ人間ばかりなんだ。だから、みんなが家族という感覚だし、君たちの助けになってくれることもあると思う。君たちは、立場的に、あまり他のメンバーと関わることはないかもしれないけれど、マスターやエリィ姫様の弟子ということで、敵意を向けられたり、妬まれたりすることはないと思うから安心して」
 キラさんの言葉に、俺たちは頷いた。
「じゃあ、次は、君たちの実力を見させて貰うよ。まずは、ルトくんからだ」
「あ、は、はい!!」
 俺とリルは、キラさんに連れられて、さっき案内された、創造魔法で道具を精製する工房に連れて行かれた。
「じゃあ、まずは、ルトくん、ここの作業台を使って、ここに置いてある材料を使って、この紙に書いてある魔法道具を精製してくれ。制限時間は二時間。出来上がりの具合は俺とマスターがチェックをするから。リルちゃんも同じ要領で、隣の薬の調合部屋で試験をするよ」
「はい!!」
 俺は、緊張して答えた。
 キラさんは、リルを連れて部屋を出た。試験の為か、工房には誰もいない。
 俺は、紙を見た。そして、一瞬固まってしまった。
 そこに書いてあるのは、フラワーストーンをはじめとして、クリスタルフラワーという、超希少種で、花が自然と結晶化したものや、蝶々石といった、入手困難で、入手するだけでも大変な材料が並んでいたのだ。
 それを魔法道具にするだけでも大変なのに、組み込む魔法も、難易度の高いものばかりだ。
 なんの魔法道具かと思ったら、短剣だった。つまり、武器魔法道具になる。武器魔法道具にこれほどの材料を使って、組み込むものもここまで難易度が高いとなると、成功したらこの武器魔法道具は、とても強力なものとなる。

 俺は、まずは、雑念を払って集中した。
 これは、一番はじめにじいちゃんが教えてくれたこと。何度も何度も、繰り返し教わったこと。心を落ち着かせて、集中する。
 そして、気持ちを込めて、石を扱う。
 この武器を誰が使うのかは分からないけれど、ここまでの武器を使うということは、きっと危険にさらされることになるのだろう。だからこそ、時間がないからと言って手を抜くことはできない。
 ここに書いてある、強い石達を使って、高度な魔法を組み込む。本来なら何日もかけて行う作業も二時間で終わらせないといけない。
 俺は深呼吸をした。
「……やるぞ」
 集中力を、どんどん高める。
 集中して、気持ちを込めて、丁寧に、だけれど手早く。
 俺は、エミリィ様達に技術を教えたじいちゃんの孫だ。そして今は、エミリィ様の弟子だ。
 これくらいで、ひるんでいたら進めない。
 俺は、頭の中で作業工程を一気に組み立てると、作業に取りかかった。
 創造魔法の呪文を唱えながら、フラワーストーン、クリスタルフラワー、蝶々石の形を変えていく。
 そこに同時に、紙に書かれていた魔法を組み込んでいく。
 あっという間に、時間は過ぎていった。

二時間後

「終了だよ」
 キラさんの声で、俺は我に返った。
 俺の手の中には、出来上がった短剣があった。
 ……なんとか、時間以内に全て終わった。
 安心して、どっと力が抜けた。
 キラさんは、短剣を俺から受け取ると、色々とチェックをしているようだ。
 優しい笑顔の表情を崩さないから、評価が全く分からなくて、緊張した。
「うん、じゃあ、この結果を、マスターに伝えておくね。お疲れ様。リルちゃんの試験も終わる頃だから、一緒に行こう」
 キラさんに言われて、俺は立ち上がった。
 こんなに困難な試験を出されたんだ。リル、大丈夫かな?

 キラさんと、薬の調合部屋に入ると、白衣を着て集中したリルがいた。
「終了だよ」
 キラさんが、俺の時と同じように、優しく声をかけた。
 リルが、ハッと顔を上げる。
「お疲れ様。チェックさせて貰うね」
 キラさんが、俺の時と同じように、リルのつくったと思われる数々の薬のチェックを始めた。
「ルト、お疲れ様。どうだった?」
「リルもお疲れ様。これを創ったんだ……」
 俺は、さっきの試験の紙を渡した。それを見て、リルが驚いているのが分かる。当たり前だ。
 リルも、試験の紙を見せてくれた。俺は、自分の試験の紙を見たときよりも驚いて、固まってしまった。
 そこに書いてある薬も、俺と同じで、フラワーストーンだけでなく、クリスタルフラワーや蝶々石、それに、生花も使う、高難易度の薬がいくつも書かれていたのだ。
「ここに書かれている薬を、作れるだけ作るという試験だったのよ」
 リルの言葉に、俺は無言で頷くことしかできなかった。

「うん、チェックは終わったよ。俺は、この結果をマスターのところに持っていくね。二人には、二時間、自由時間を与えるから、その間に居住部屋を整えたり、ギルドを見て回ったり、食事をしたり、好きに過ごしてね。二時間後に、さっき案内した庭に来てくれるかい?君たちの魔力量、魔法の使い方、戦闘力の試験を行うから。それが終わったら、正式に登録が終わって、ギルドのメンバーになるよ」
 キラさんの言葉に、俺たちは、黙って頷いた。
 俺たち二人は、大分疲れていた。だから、居住部屋に行って、休みながら、荷物を整理することにした。

 居住部屋に入った俺たちは、また驚いて、しばらく二人で固まってしまった。
 小さな家の中には、生活に必要なものは全て運び込まれていて、二人の部屋も、台所も、お風呂も、完璧に揃っている。
 しかも、創造魔法に必要な道具、薬を調合するのに必要な道具まで沢山揃えてある。
 そして、俺たちの服、特にリルの服が、大量に揃えてあった。
 エリィ姫様が揃えてくれたものだと、机の上に置いてあった、エリィ姫様直筆の手紙で分かった。
「……今更だけれど、私たち、大変な道を選んだわね」
 綺麗な服の一枚を持って、リルが苦笑した。
 俺は、肩をすくめることしかできなかった。

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