16 / 74
ブルーローズ
1-3
しおりを挟む※※※
「これが、二人の試験の結果です」
キラが、マスター室で、椅子に座るエミリィの前の机に、ルトの創った短剣と、リルの調合した薬の数々を置いた。
「お疲れ様。キラ」
ラネンが、エミリィの隣に立って言った。
キラが、優しい笑顔で頷く。
「驚きました。マスターとエリィ姫様の弟子とはいえ、ここまでの実力者だとは」
「まぁ、技術は、先生達に叩き込まれてるからねー」
キラの言葉に、エミリィが答えた。
そして短剣を手に取ると、まじまじと眺める。
「にしても、二時間で完璧に仕上げてくるとは予想外だ。これ、このまますぐに実戦で使えるじゃん。丁度良い。リルの薬も、文句なし。あの時間内でここまでの種類と量が作れるんだ。これ、エリィが見たいだろうから、送っておこう」
エミリィはそう言うと、短剣を置いた。
「じゃあ、次がある意味本番だ」
暗く、少し怖い笑顔でエミリィが笑った。
「どこまでやれば良いですか?」
キラが、変わらない笑顔で問う。
「どこまで?徹底的にだよ。あ、この短剣、ルトに使わせて。どちらにしろ、その為に用意したものだし」
「分かりました」
キラが、苦笑した。
「あまり、意地悪はいけませんよ」
キラの言葉に、エミリィは答えず、暗い笑顔のまま、舌を出した。
キラは、もう一度優しく笑うと、短剣を持ち、一礼して、部屋を後にした。
「さすがってところか」
ラネンが、エミリィに言った。
「まぁね。技術だけだと、国の中でも上位に入れる。ここに閉じ込めておくのはもったいないねー」
エミリィが、椅子から立ち上がって、近くのソファに体を投げ出しながら言った。
「あの形状の短剣を与えるなんて、どういうつもりだ?」
「どうって?」
「ルトのことだ」
エミリィが首をかしげた。
「なるようにしかならないんじゃない?私は、あいつの復讐心を消そうなんて思わないよ。道を示したり、優しく導く気もない。ただ……あいつがどうなるのか、興味はある」
「……そういうことにしておくよ」
「なにそれ」
エミリィが、不機嫌な声を出した。
そして、ソファを叩く。ラネンに対して、こっちに来いという合図だ。
「仕事中」
そう言いながらも、ラネンはエミリィの隣に座った。
エミリィはかまわず、ラネンの体に、もたれかかった。
「付き人なんだから、言うこと聞きなさいよ」
「……」
「ねぇ、ラネン」
「なんだ?」
「私のこと、憎い?」
ラネンの顔を見上げて、エミリィが言った。
ふっとラネンは笑う。
「あぁ、憎くて憎くて、たまらないよ」
ラネンはそのまま、エミリィの腰に手を回すと、エミリィを引き寄せて、キスをした。
「仕事中って言ったくせに」
エミリィが、少し嬉しそうに言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる