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神に舞う。
お祭りに向けて。
しおりを挟むお祭りが近くなってきて、いつもは静かな町が、どこか活気だっているように感じる。
ののさんと、祐介さんのカフェも、準備が終盤になっていて、試しにメニューをこのお祭りの屋台で出してみることになっていた。
俺たち三人は、計画書を広げて見ている。最初は俺が入っても良いのか分からなかったけれど、これからも俺はこのカフェを手伝っていきたいし、ののさんと祐介さんからも、正式にお願いされたから、今は自分にできることを一生懸命やろうと思っている。
計画書には【いきいきカフェ・お祭り計画】と、ののさんの可愛らしい文字で書かれていた。
カフェの名前は、最終的にののさんが決めた。なんでも、祐介さんと俺を見ていたら、これしかないと思ったらしい。
ちなみに、俺が案を出した、マッスルカフェとプロテインカフェは却下された。なんでだろう。
今このカフェで詰めているのは、メニューだ。ここの野菜、特産物をメインにして、なおかつ、少しインパクトが欲しい。
「うーん、大分詰まってきたけれど、どうかね?」
「何かが足りない気がするんだけれど……それが分からなくて」
ののさんと祐介さんが、頭を抱える。
「陽介くんは、どう思う?」
「うーん……。凄く美味しそうなメニューだし、特に問題はないと思うんですけど……。強いて言うなら、筋肉はつきそうにないですね」
「あははっ!カフェのメニューじゃけんね」
俺の言葉に、ののさんが笑う。真面目に言ったのに何故だろう。
「それだ!!」
そんな俺たちを見て、祐介さんが突然大きな声を出した。
びっくりして祐介さんを見ると、祐介さんはまたあの力強い目をしていた。
「確かに、野菜、名産物、カフェのメニューとしては問題ない。だけれどこれ……遊んだ後、お腹が空いてがっつり食べたい人からしたら、物足りないかもしれない」
「……言われてみれば、そうじゃね。お客さんの全員が、ちょっと休憩に寄るだけじゃあなあかもしれんし、ここら辺は食事処もなあし、もうちいとお腹に溜まるもんがあれば……!!」
ののさんも、目を輝かせる。
「なら早速、作ってみんとね!!後は、外装と内装をもうちいとインパクトのあるものにしたいんよねえ」
ののさんがそういった時、俺のスマホのアラームが鳴った。
「あ、もうこんな時間か……」
「陽介くん、今日はもう行かんとけんの?」
「はい、すみません。最近、神楽の練習にじいちゃんと行っていて……見学しながら、少しだけ教えてもらってるんです」
「神楽……。それじゃ!!」
ののさんの大きな声に、今度は俺と祐介さんがビクッとなる。
「このカフェの見た目のモチーフ、神楽にしたらどうかね!?衣装はきらびやかじゃし、小物はインテリアとして置けるし!!」
「良いじゃないか!インパクトもあって!!それに神楽は、この地の伝統だしね」
こうして、少しずつ色んな事が決まっていく。
水害もあって、どうなるかと思ったけれど、積み上げてきたものが形になるってこんなに嬉しいことなんだな。
俺は、二人に挨拶をして、じいちゃんの待つ吉岡のおじさんの家へと向かう。
《ふふっ、楽しいね》
《舞うんかね》
「俺はまだ舞えないよ」
思わずこの声に答えてしまうことがあるけれど、最近はそれでも良いかと思えるようになった。
神楽の練習に行くこと、習うことは、俺の何かの扉を一気に開いてしまいそうな気がしたけれど、それでも自分から通いたいとじいちゃんに言ったのは俺だ。
……結城さんや、祐介さんは……きっと自分と向き合った。だから……。
でも、怖い。
そんな気持ちがいつも葛藤していた。
「陽介くんじゃなあね!乗っていく?」
近所のおばさんが車から声をかけてくれた。俺は素直に頷く。
そいえば、ここ、やっぱり車がないと生活するのが難しいよなあ。今は行く場所が限られているから良いけれど。
免許をとること、考えた方が良いのかな?
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