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最大のサプライズ。

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 俺は、美沙さんの合図を受けて、歓談の中をこっそり抜け出した。

 そして、裏に止めていた、手作りの飾り付けをした軽トラックをカフェの前につける。
 きっと今、美沙さんが司会で締めて、次の指示を出してくれているはずだ。


 しばらく待っていると、カフェ結婚式に参列してくれた人達が出てきて、軽トラまでの道を作る。

 美沙さんの先導で、カフェから出てきたののさんと祐介さんは、目を丸くして驚いていた。当たり前だ。だって、これは祐介さんですら知らなかったのだから。

 二人は、参列者の花道をぬって、軽トラの側まで来て、皆の手を借りて軽トラの荷台に乗っている。
 扉が開いて、助手席に美沙さんが座った。


「お疲れ様。いよいよじゃね」
 そう言って、美沙さんは、俺の手にいちごみるく味の飴を握らせてくれた。
 俺はそれに、笑顔で頷く。

 そういえば、いつからだろう。じいちゃんじゃなくて、美沙さんがいちごみるく味の飴を握らせてくれるようになったのは。

「じゃ、準備できたみたいじゃけえ、ゆっくりの安全運転でお願いよ」
「わかっちょるよ」
 俺は、ゆっくりと軽トラを発進させた。
 荷台には、二人が立って乗っているはずだ。

 このまま、小学校の体育館まで移動する。二人には、何処に行くか内緒だ。


 ただ……運転をしている俺と、隣の美沙さんにも、サプライズがあった。

 田舎道の街頭で、近所のおじいちゃん、おばあちゃん、おじさんおばさん達が、笑顔で手を振って、ののさんと祐介さんに声をかけて祝福していたのだ。


 ……じいちゃんがこっそり動いていたのは、これだったのか。


 俺は、できるだけゆっくりと軽トラを走らせた。泣いてしまったら、前が見えなくなってしまって危ないから、今までにないくらい顔面筋に力を入れた。


 こうして、軽トラは小学校へと入っていった。


 俺は急いで移動しないといけなかったから、美沙さんの手を握って合図して、すぐに軽トラを出ると、二人に手を振って走る。

 小学校の体育館裏では、最後のサプライズの準備が待っていた。
 俺は大急ぎで、その準備の中に入っていく。

 その間、体育館の中には、ののさん、祐介さん、美沙さん、参列してくれた人、近所の人達が準備をしているはずだ。


「準備できたよ!!」
 美沙さんから着信が入る。


「準備できたそうです!!」
「よっしゃ!!」
 俺の声に応えてくれたのは、俺の所属する神楽団の組の人達。



 そう、最後の最大のサプライズは……俺の初舞台だ。


 美沙さんが提案してくれて、神楽団の人達はとても快く受け入れてくれた。
 俺はチラリと、裾から観客席を見る。


 真ん中にはののさん、祐介さん、美沙さん、じいちゃん、父親、母親……吉岡のおじさんにおばさんに……。ここに来て俺を支え続けてくれた、みんなが座って待ってくれている。


 そして一番裾に近い場所に、二人分席を空けて貰っていた。

 これは勿論……俺の、ノリじいちゃんと、文夫じいちゃんの席だ。


 もし、俺の持っているこの不思議な力が、神楽で神様を楽しませる為にあるものならば。あの二人が、俺が良い舞手になることを楽しみにしていてくれるのならば。


 そして俺自身が楽しんで、みんなの為に精一杯舞いたいから。


 だから俺は、神様の為に、じいちゃん達の為に、大切な人達の為に、そして俺自身の為に、今日この舞台で精一杯舞う。それが、俺の、みんなへの感謝と二人へのお祝いだ。


 笛の音が鳴り響き、太鼓の音が踊る。
 俺は、その曲に合わせて、舞台へと一歩を踏み出した。

 演目は、俺の原点、ジンリン。
長いようで短い舞が終わって、息を切らしながら一瞬観客席を見たとき。



 みんなの笑顔、拍手、そして……。
 二人のじいちゃんの為に用意した席に、あのキラキラして綺麗な光が見えたのだった。
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