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ヴィーヴル王国へ
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しおりを挟むヴィーヴル王国へ
出発の日、僕と、ルカと、チィは、王国からの車に乗せられて、ギア王国を出る門へと向かっていた。門の前で、一旦、車を降りると、そこには、フールさんが立っていて、僕もルカも、驚いた。
「やぁ、見送りに来たよ」
ふわふわと笑うフールさん。そんなフールさんを見て、ルカが、嬉しそうに笑った。
「フールさん、二人の出発は、極秘事項に当たるはずですが」
チィの言葉にも、フールさんの笑顔は、変わらない。
「うん。僕の国での立ち位置は、君の方が、良く知っているだろう?」
フールさんの言葉に、チィは、何も返さない。
何も聞いたことはないけれど、フールさんは、国の中枢で、研究者として、働いているし、サポートロボットも、ついていない。かなり重要な立場の人であることは、僕でも、少し考えれば、分かることだ。
「フールさん、本当は、出発前に、色々話をしたかったんですけど……」
ルカが、少し不安そうに、フールさんに言った。
「僕もだよ。でも、大丈夫。ルカちゃんは、ルカちゃんだから。君は、自分の目で見て、肌で感じて、そして、君の感性で、過ごせば良い」
フールさんの言葉に、ルカが、笑顔になる。
自分の目で見て、肌で感じて、感性で過ごす……。
普段の生活と、何も変わらない気がしたけれど、何故かその言葉が、とても、大切なことのように、聞こえる。
「すみません、ロキ。メインコントロールから指示です。私は五分ほどスリープします。フールさんの指示に従って、この場で、このまま、待っていて下さい」
「うん、分かったよ」
出発の直前に、チィがスリープしたのは、驚いたけれど、メインコントロールからの指示で、チィが、スリープすることは、たまにあったから、僕は、なんの疑いもなく、頷いて、フールさんを見ると、フールさんが、突然、手を握りしめて、前に出した。
その途端、僕たちの、見えている色が、変わった。何故か、周りが、緑色に見えて、さっきまでの風景と、違う景色に、見えるのだ。
「……フールさん……?」
ルカが、目を見開いて、フールさんを、見ている。
「ルカちゃん、今は何も言わないで。二人とも、時間がないから、落ち着いて聞いて。君たちが、ヴィーヴル王国に行くのには、国の意図することがある。それも含めて、ヴィーヴル王国の人たちが、教えてくれるはず。ルカちゃん、ロキくん、もし、どんなに傷つくことになっても、君たちの出生について……両親について知りたくなった時。……君たちの覚悟ができた時には、君たちが過ごす、ヴィーヴル王国が、独自に創っている、守護ギルド、ブルーローズのギルドマスター、キラさんに聞くんだ。二人とも、きっと、今までに経験したことのないくらい、苦しむことになると思う。だけれど、ロキくん。苦しいときには、あの懐中時計を、決して離さず、持っておいて。そして……人族を捨てて、生きても良い、と思えるくらい、覚悟ができたとき……この懐中時計を、チィのコアに、埋め込むんだ」
フールさんが、一気に、早口で言った。
こんなに、真剣な顔をしている、フールさんを見るのは、初めてで、僕もルカも、口をはさむ暇が、全くない。
フールさんは、何事もなかったかのように、ふわふわした笑顔に戻ると、もう一度、手を振るように、動かした。すると、風景が、何事もなかったかのように、元に戻る。一体これは、どういうことなのだろう。
「二人とも、絶対に忘れないで欲しい。僕は、いつだって、君たちを、想っている」
フールさんが、笑顔のまま、でも、力強く言った。
「お待たせしました。では、ヴィーヴル王国へ、向かいましょう」
チィのスリープが終わって、僕とルカは、チィに促されて、門の外に、足を進めた。
一瞬振り返ると、フールさんが、笑顔で、僕たちを、見守っていたのだった。
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