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ヴィーヴル王国へ
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しおりを挟む「ロキ、心配しないでください。私にも、緊急用の、飛行装置が、付いていますから」
チィは、そう言ってくれたけれど、僕も、ルカも、龍を目の前にすること自体、初めてで、固まってしまっていた。
「問題ない。この龍は、俺のパートナーで、向こうは、エミリィのパートナーだ。人を乗せることには、慣れている」
ライキさんが、そう言って、龍のお腹を叩くと、龍は背中を下ろして、僕たちが、のぼりやすい体勢になってくれた。ライキさんが、僕たちに、手を伸ばす。
ルカが、少し楽しそうに、その手を取って、龍にのぼった。それを見た僕も、続いて、ライキさんの手を握る。チィは、自分でのぼってきていた。
「わぁ、凄く高いですね! それに、龍のうろこは、凄く固いと、本で読んだのですが、全然痛くない!」
ルカが、とてもはしゃいでいる。こんなルカを見るのは、初めてだ。
「確かに、龍のうろこは固くて、鍛冶の材料にも使われる。だが、まだ生えたばかりのうろこや、頭や、この背中の部分……人が乗るところは、そんなに固くない」
「へぇ、そうなんですね!」
ライキさんは、口調はぶっきらぼうだけれど、丁寧に説明してくれていた。
「じゃあ、飛ぶぞ」
ライキさんの言葉と共に、龍が宙を舞い、僕たちは、気がついたら、空を飛んでいた。
「うわぁ……凄い……」
強い風に当たりながらも、僕は、その光景に、思わず呟いた。
「風には、すぐに慣れる。もっと慣れたら、うろこから手を離して、乗れるようになる」
「この龍には、名前はあるんですか?」
ルカが、楽しそうに聞いた。
「あるが、ほとんど、呼ぶことはない。俺たち龍人族は、言葉で、龍と、意思疎通をとれるが、基本は、動作で見ているし、指示を出すのも、この笛を使う」
そう言って、ライキさんは、首から下げている、沢山の、小さな木の笛を、見せてくれた。
「これは、一本一本、その龍に合わせて、音が出る」
「ということは、ライキさんは、こんなに沢山の龍と、意思疎通がとれるんですか?」
「これくらい、龍人族では、普通だ」
風を、こんなに浴びて、景色を見ながら、飛ぶなんてはじめてで、最初は、少し怖かった僕も、心がワクワクしていた。
その時、チラリと、視界に、エミリィさんが映った。エミリィさんは、龍の上で、足を伸ばして座っていて、僕たちの方を、見ていなかった。案内役兼世話役と、言っていたけれど、ライキさんと違って、話しかけづらい。大丈夫だろうか……。
少し心配になったけれど、ルカの、今までにないくらい、楽しそうな声を、聞いていたら、いつの間にか、僕まで、嬉しくなっていたのだった。
「着いたぞ」
しばらく飛んだ後、龍が、地上に降りた。ライキさんが、声をかけてくれる。
ついに、ヴィーヴル王国に、到着したんだ。
ライキさんに、手を貸して貰って、龍から降りた僕は、驚いて、目の前の門を、見つめた。
とても綺麗な、木の門で、外壁も木でできている。ギア王国とは全く違うけれど、セキュリティは大丈夫なのだろうかと、思ってしまう。
門の前にも、門番のような人は立っているけれど、何も持っていない。
「ライキさん、エミリィさん、お疲れ様です。そちらが、ギア王国の、方々ですね」
門番の人が、ライキさんとエミリィさんに、声をかけた。エミリィさんは無言で、片手を振って返している。
「あぁ。お疲れ様。さぁ、行こうか」
「えっ、えっ!? セキュリティチェックはしないんですか!?」
ライキさんの言葉に、僕は思わず、声を出した。だって、ギア王国では、入るのにも、出るのにも、それはそれは、厳しいセキュリティチェックを、受けるのだから。
「問題ない。異変があったら、森が気がつくし、龍も気がつく」
ライキさんは、そう言うと、手招きをして歩き始めた。エミリィさんは、もう先を行っている。僕とルカは、慌てて、ライキさんを追いかける。チィは、いつものように、僕の横に、ついていてくれていた。
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