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輝きの石花と別れ
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しおりを挟む「良かった。このままなら、きっと、リィノさんを殺さなくて、良いよね。チィが、あの沢山の本の中から、方法を見つけてくれた、お陰だよ」
僕は、そう言って、チィを見た。だけれど、チィは、どこか、さっきまでと、違う。
ロボットの機体が、傾いていて、膝の部分が、その重みで、折れ曲がっていた。
「ち……い……?」
「ロキ、心配することは、ありませんよ。この機体に、限界がきただけです」
「どういう……こと……」
僕は、言葉が続かず、チィを、じっと見つめた。
その場にいた誰もが、突然の出来事に、何も言えず、僕たちを見ている。
「サポートロボットの機体は、そこまで、強く、作られていませんから。それに、魔石による、自家発電のエネルギーで、処理能力は上がっても、それに、機体が耐えられるかは、別の問題ですからね」
「じゃあ、僕が、チィの体に、負担をかけたってことじゃないか……。どうして。どうして、言ってくれなかったの」
「言う必要はないですよ。私は、ロキの、サポートロボットです。あなたが、自分自身の意思で決めたことを、必要に応じて、助ける為に、いるのです。大丈夫。私は、ロボットです。痛みも苦しみも、感じません。それに、ロキのデータは、全て、バックアップをとってあります。何の問題も、ありませんよ」
「問題あるよ!! だって、だって……!! チィが、いなくなっちゃうんだろう!?」
動揺して、叫んだ僕の手を、ルカが、震える手で、握ってきた。
「この機体は、なくなります。ですが、ロキのデータは、残ります。別の機体に、データを移せば、今までと、何も変わりませんし、機体の、アップグレードだってできます」
「そうじゃない……そうじゃなくて……」
どうしたら、この気持ちを、伝えることが、できるのだろう。
確かに、データは残る。チィの言っていることは、正しい。それでも、何かが違う。
「ロキ、私がいなくなることを、悲しんで、苦しんでくれているのですね。私には、その事実しか、分かりません。だけれど、私にも、分かることがあります」
チィが、僕の方を見て、ゆっくりと、優しく言った。
「私は、ギア王国からの、メインコントロールからの指示に、忠実に従い、ロキを、コントロールする為に、存在した、ロボットです。だけれど、この国に来たロキを、コントロールすることは、できませんでした。ロキ、あなたは、ロボットではないのです。心を持った、一人の、生きる者なのです。そして、私は、懐中時計のお陰で、コントロールロボットから、本物の、サポートロボットへとなりました。そのことについて、何も思うことはありません。プログラムが、変わっただけですから。ですが……」
チィは、真っ直ぐに、僕を見ている。
「あなたの表情が、心が、私が、コントロールするだけの、ロボットだった時より、とても豊かになったことは、事実です。その良し悪しは、私には、判断できませんが、その豊かさを、得たことに、私が、助けになれたのならば、それは、喜ぶべきことです」
僕は、何も言えない。
懐中時計を入れたとき、人族に戻らない覚悟を、決めた。
チィと離れる、覚悟もした。
だけれど、チィは、その後も、理性的に、冷静に、僕を助けてくれた。例え、それが、プログラムされたものであっても。チィが、感情のない、ロボットだからだとしても。僕にとって、チィは、家族より一緒にいた、大事な存在なのだ。
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