ロリータ少女と戦姫

Emi 松原

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ロリータ少女と戦姫

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六年後。私は自分の人生を後悔なく生きる。

 毎日が忙しくて、あの戦国時代が段々と遠くに感じてしまうようになってきた。
 だけど私はそのたびに、加奈に連れて行ってもらったあの博物館に行って、忘れられない一つ一つの大事な時間を思い出していた。
 私は、今、毎日忙しくて充実している。
 人に服を選んで着せる。
 可愛い人がクールな服を着たとき、セクシーな人がエスニックを着た時など、みんな自分のイメージと違う服を着たときは、まず驚いている。
 それから笑顔になってもらえるのが、私の仕事の一番のやりがいだった。
 私は、若い子向けの流行りの服から、大人向けの着物も手がける、大手出版社の雑誌のスタイリストとなっていた。

 美弥姫と別れた日、美弥姫がロリータ服を着たときの顔。
 その顔がいつも私の背中を押してくれていた。
 忙しい毎日の中で、最近私はあることをずっと考えていた。
 それは、最後に天狗の言った言葉だった、

 私が、戦国時代で何を思って生きるのか。それを見たかった。

 私は、あの時は必死で戦国時代を生きた。
 今の生活よりも、もっともっと必死に。
 そして、楽しかった。
 綺麗な着物を着て、美弥姫と過ごして・・・・。
 だけど、怖くもあった。
 戦の傷跡をまじかで見て、悲しくなった。
 殺されかけもした。
 そんな毎日をただただがむしゃらに生きたと思う。
 美弥姫が命をかけて戦っているのを見て、すごいと思った。
 繁蔵様の優しさが嬉しくて、戦が嫌いという繁蔵様に共感した。
 聖花さんに一生懸命作法も教わった。
 仕える主君が違うだけで、友人ではなく敵になってしまうことも知った。
 私は何を思って生きたか・・・・。

 答えをずっと探していたけれどまだまとまった答えは見つかっていなかった。
 これから生きていく人生の中でゆっくりと見つけて行こうと思う。

 私の主君は、私自身なのだから。

 その時、私の仕事用のスマホが鳴った。
 社長からだ。
 すぐに、社長室に来いとのことだった。
 私、何か大きなミスをしちゃったかな・・・?
 慌てて私は社長室に行った。
 そこで私は、驚くべきことを聞かされた。
 今度開かれる有名なファッションショーで、スタイリストとして参加しないかというオファーがきたらしいのだ。
 私はすぐに承諾の返事をした。

 なんでもチャレンジしてみる。
これも、戦国時代で身につけたものかもしれない。

 私は加奈に喜びのメールを送って、ついでに買い物と食事に誘った。
 加奈は、大学院に進学した。
 相変わらずの歴史マニアだ。
 それもこの六年間でどんどん拍車をかけて、そのうち歴史専門家になってテレビのニュースやなんかに出てもおかしくないくらい勉強に没頭している。
 私が誘い出さないと、まともにご飯も食べていないと思う。
 高校を卒業するまで、加奈が私の面倒を見てくれていたのに、今じゃまるで私が加奈の面倒を見ているようだ。
 それに加奈はファッションに全く無頓着で、ショッピングに平気で白衣で来るような人間だ。
 だから私は、いつも加奈に服を選んでいる。
 気軽に選べるから、色んなジャンルの服を加奈に着せて正直楽しんで遊んでいる。
 今でも、加奈は私を支えてくれる大事な友人だった。

 今の時代、戦で命を落とすことはない。

 これから先も、そんな平和が続いてほしい。

 それが、美弥姫と繁蔵様が何よりも望んだ世の中で、私もその中で生きていきたいから。

 後は、美弥姫みたいに一直線に愛せる旦那さんがいたら完璧かな、なんて思ったりするけれど・・・。
 残念ながら、何度か彼氏がいたことがあっても、仕事も一生懸命やりたかった私とはご縁がなく、今はフリーだ。

 繁蔵様と美弥姫を思い出すたび、私もあんなに愛せる人を見つけたいなと思う。
 だけど焦る必要なんてない。
 過去の自分と比べて、今の自分は確かに成長しているから。
 己自身と比べる。
 これも美弥姫が教えてくれた大事なことだ。

「あ----!加奈、また私の選んだ服をごっちゃに着て!まとまってないし、白衣も着てこないでっていつも言ってるでしょ!!」
 加奈の姿を見た私は呆れて言った。
「しょうがないでしょ。勉強で忙しくて、服を選んでる時間ももったいないよ・・・。」
 加奈はそう言うと大きなあくびをした。
 また寝ずに勉強していたんだろう。
「とりあえず、何か食べよう・・・。私、最近まともなもの食べてないのよ・・・。」
 加奈が眠たそうに言った。
 やっぱり。
 私はため息をついた。
 だけど、今でもこうして加奈と友達でいられることは嬉しかった。
 私と加奈は、お店に入ると食事を注文した。
 加奈は、私に大きな仕事が任されたことを一緒に喜んでくれた。
 そして、私に一冊の冊子を差し出した。

「これね、私が研究を続けている桜野城と梅田城のことや、志乃が教えてくれた天狗について、新しい文献を訳させてもらったから、分かりやすくまとめて持ってきた。」
「・・・・いつもありがとう。ゆっくりと読ませてもらうよ。」
 パラパラと冊子をめくりながら、私は言った。

 その時、ある一行に私の目がとまった。

 桜野城の正室美弥(享年十九歳)と、側室の志乃(年齢不明)は、正室と側室にも関わらず仲睦まじく、友達同士のようだった。

 ・・・・・・・・。

 友達だよ。

 今だって、ずっと、ずっと、ずっと・・・・・。

 生きた時代は違っても、生きた年数が違っても・・・・・。

 私は、泣きそうになったのを必死でこらえた。
 そして、いつも大事にカバンにいれている髪飾りをカバンの上から握りしめた。
 この髪飾りは、私の生きるお守りにしている。

 美弥姫と、私の大切な絆の証だから。

 加奈と、あの天狗岩の前で別れた。

 もし、今また戦国時代に行きたいと願ったらどうなるんだろう?

 ふとそんなことを思ったけれど、心からそう思うことはできなかった。
 だって、ここが私の生きていく世界だから。
 私は自分自身に繰り返す。

 私の主君は、私自身。
私は私の人生を後悔なく生きる。

天狗岩のそばでは、今年も一本の大きな桜が咲いていた。
 


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