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たとえ地球が滅びても
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悪魔降臨~帰ってきたレジェント~
「あ~~~。この、明さんってどんな人なんだろう。めちゃくちゃ強いんだよな。マスターの妹なんだよな。ってことはマスターに似てるのか?」
「泉・・・いつもいつもそんな所でぶつぶつ言ってたら、変人に見られるぞ。」
レジェントの証の楯や賞状が厳重に飾ってあるケースの前で突然声をかけられた俺は我に返った。顔を上げると、俺の同期で同じ年の友人三人が立っていた。
俺に声をかけたのが栄喜(えいき)。頭の良い男(やつ)で、分析・研究部隊と戦闘部隊を両立させている。分析・研究部隊のハイパーナンバー1で戦闘部隊では俺に続くナンバー2の実力者。分析・研究レジェントになるのが夢で、そっちに集中したいらしいけれど、マスターに実力者として戦闘部隊に入ってほしいと言われたらしい。今使えるイノセントの色は知的で冷静な青と冷静さの中にも情熱がある、研究者に最も向いていると言われている紫だ。戦闘部隊のハイパーの中で、唯一二色のイノセントを使える。悔しいことに背が高くてなかなかのイケメンだ。
栄喜の横でニコニコ笑っているのが、智(とも)。サポート戦闘隊員ナンバー1で、いつもニコニコしている明るい女の子。使えるイノセントは明るくて調和を望む黄色。オペレーターの指示通り、いつも確実に仕事をこなす。俺たちのリーダー的存在でもある。長い髪の毛をポニーテールにしてるうえに童顔で背が低いから実年齢より下に見られるのが悩みらしい。
二人の後ろからひょっこり顔を出している女の子は桜(さくら)。桜は俺の幼馴染でもある。引っ込み思案でおとなしいくせに戦闘部隊ナンバー3で、使えるイノセントは優しさと素早さが特徴の緑。セミロングより少し短い髪で、前髪を花のピンで止めている。顔を隠したがる桜に、智が無理矢理つけているらしい。こういうのもなんだけど、背も高いし顔も悪くないんだから、もっと堂々としてればいいのにと昔から思う。
あ、忘れていたけど、俺の使えるイノセントは情熱の赤!!
「なんだよ、栄喜。今日は第二研究所の方に行くって言ってたじゃないか。」
「お前がここで空想にふけっている間に、もう昼だ。昼食に行こうと思って二人に連絡してから一旦こっちに戻ってきたんだよ。どうせお前はここにいると思ったから、あえて連絡しなかった。質問は?」
「そもそも俺は空想なんかしていたわけじゃない!!新たなイノセンスの色を出すためにモチベーションを上げてたんだよ!!それに!!俺がここにいなかったらどうするつもりだったんだ!!」
「ここにお前がいなかったら、もちろん連絡したさ。ただ何度も言うようにイノセントの色っていうのは考えて出るものじゃなくて勝手に・・・・・」
「はいはいはいはい!!ストップ!!栄喜、いつも同じことを言っているのはあなたも一緒。泉もムキにならない。そしてさっさとお昼に行く!!」
智に言われて、俺と栄喜は黙って食堂へ向かった。智はいつものようにニコニコしているし、桜も少し笑っている。なんだよ、まったく。
「俺はもちろん、焼き肉定食!」
「俺はバランス定食で。」
「私はヘルシー定食!!」
「あの・・・私は日替わり定食で・・・。」
俺たち四人は食堂の開いている席に座った。みんな頼むものはいつも一緒だ。一粒食べれば一日に必要な栄養素は全て補給できて、味も色んな種類のものがあり、なおかつ満腹感も得られるサプリメントはとっくの昔に開発されているんだけれど、マスターの意向で戦闘中以外はなるべく食事をとるように言われている。初めてここに来た時は食べるという習慣がなかったからなぜだか分からなかったけれど、一年たった今ならマスターの言うことが分かる気がする。食事はサプリとは全然違う美味しさがあるし、みんなでゆっくり集まって話をする習慣もついたから。
「泉、いつも肉ばっかり。少しは栄養考えなよ。」
笑いながら智が言う。
「うるせー。俺はこれでパワーをつけてるんだよ。智こそ、野菜ばっかりでそんなんじゃスタミナつかねーぞ!!」
「私はカロリー計算されたものを食べてるだけだから。ちゃんと栄養とってるもーん。」
「バランス的には俺が一番の答えだ。質問は?」
「あー!もう!この質問野郎!!」
「ちょ・・・ちょっと・・・喧嘩は・・・。」
「いつものこと。桜、気にしすぎだよ。」
俺はむすっとして肉を頬張った。
「そうむくれるなよ。さっき言ってた、新しいイノセントの色がほしいのは俺も同じだ。レジェントになるためには、赤・青・緑・黄色・ピンク・紫のイノセントの色を使いこなせるようになることが第一条件だからな。それにその後はマスターかレジェントの人に推薦してもらって、マスターとレジェントの全員が賛成したらやっとなれるものだ。それ相応の功績も必要。」
「・・・お前はどうやって二色使えるようになったんだよ。」
「何度も説明しただろ。俺は元々青のイノセントを使えていた。でも、研究の資料を没頭して読んでいた時、イノセントアームが熱くなったんだ。それで、試しにセットしたら、戦闘服に紫が追加されていた。以上。質問は?」
「質問はない。俺だっていつもイノセントアームに力を込めてる!!」
「だから赤なんじゃないか?」
「もぉー。いつも同じ話ばっかり。そんな悩めるお二人に、信憑性の高い面白そうな噂があるよ。」
綺麗に食べ終えた智が食器を重ねながら言った。智は、噂話が大好きだ。
「何!?」
俺と栄喜が同時に前のめりになる。桜がくすっと笑った。
「あのね、最近、幸多さんと照さんがよくマスター室に行ってるの。それは私も見てる。で、長時間出てこないことも多いらしいよ。幸多さんに至っては、時々何処かへ出かけているっていう情報もあるの。」
「それのどこが面白そうなんだよ。」
「なるほど。それは面白そうだな。」
「だからどこが!」
四人とも食器をかたずけて食堂を出ながら、俺は言った。
「三人が長時間一緒にいるってことは、何か重要な会議をしてるってことだろ。もしかしたらそれは俺たちに関係のあることかも知れない。あと、今の世界政府とのやり取りや新人類との平和交渉はマスターが行っているけれど一人で全てできるわけじゃない。幸多さんは全部の部隊のレジェント。何か大きなことで動いていても不思議ではない。」
栄喜の言葉に智が笑顔でうなずいた。
「それは、俺がレジェントになれる可能性の噂に入るのか?」
「可能性はゼロではないな。」
「だったら!!何を話しているのか聞けばいいじゃん!!」
「・・・誰に。」
「・・・幸多さん・・・?」
「お前、幸多さんに話しかけられるか?」
「うぅ・・・。」
俺は言葉に詰まった。幸多さんは、誰も近寄らせない独特の雰囲気を持っている。言ってしまえば、黙っているだけなのにこの俺でもかなり怖い。
「じゃあ、照さん!!」
俺は智を見た。
珍しく智がため息をついて首を振った。
「イノセントロボの訓練の時、さりげなく聞いてみたのよ。そしたら、「内緒のお話。」って素晴らしく輝くいつもの笑顔で言われたわ。」
「じゃ、情報待ちか。」
栄喜の言葉に俺たちがうなずいたちょうどその時。
〈新人類の機体接近・新人類の機体接近・隊員は直ちにイノセントアームを起動させ持ち場に待機してください。繰り返します・・・・・・・〉
アース・ライトの敷地内と俺たちのつけている小さなインカム(つけるのは義務)からけたたましいサイレンと共に放送が流れる。
俺たちは顔を見合わせると、ポケットからイノセントアームを取り出した。
「イノセントアーム!セット!」
俺のイノセントアームは赤く輝き、一瞬目を閉じると、もう戦闘服に変わっていた。いつ体験してもすごい。戦闘服って言っても普通の服と見た目は同じで、水色をベースに、左胸の辺りには俺の場合ハイパーの意味でHと赤で書かれている。右胸の辺りには、八つの二段に並んだ丸い枠が書いてあって、俺はその右上一番右が赤色になっている。つまり戦闘服に現れる色で、使えるイノセントも分かるんだ。この戦闘服、見た目はただの服だけど軽さと強度が半端じゃない。後は情報が映し出される+目を防護するためのアイガードがついたヘルメットに、頑丈でジェット機能がついたくつ。智はサポートロボのある待機場所に走って行った。俺たち三人も、戦闘部隊の待機場所に急ぐ。
〈新人類機体・裸眼で確認できる範囲まで残り二分。旧式戦闘機二台に新型戦闘機三台がすでに確認できています。マスター、指示をお願いします。〉
俺たちの耳に研究・分析ハイパーナンバー2の女性、知佳(ちか)さんの声が聞こえる。続けてすぐにマスターの指示が出される。
〈戦闘部隊ハイパーナンバー上位6人が出撃。次の上位四人はシールド内で出撃準備。サポート戦闘部隊ハイパーナンバー2まで援護。ナンバー3から5は、どの機体でも出られるよう準備。オペレーターの分析を冷静に聞いて全ての機体を撃破すること。三十秒後に本部より十メートルにシールド。以上。〉
俺は一気に外へと飛び出した。そしてまた一気に上昇して、敵を待ち構える。
戦闘の最中は、本部の周りにはシールドが張られる。本部が壊れたら困るしね。
〈新型戦闘機が間もなく到着。自爆用の爆弾の位置がつかめるまで警戒しながらの戦闘が必要。〉
インカムから研究・分析ハイパーナンバー6のオペレーター、健人(けんと)の声がする。俺はどうもこいつが苦手だ。向こうもなぜか俺を目の敵にしている。あっ、旧式と新型の違いはめちゃくちゃ沢山あるけれど、一番の違いは自爆装置の位置。新人類の機体は、昔から戦闘不能になると自爆して機体を残さないようになってる。なるべくこちら側に情報を与えないためらしいけれど、自爆した時の影響でアース・ライトの人間に死傷者が出ることもあったらしい。旧式の機体は機体の中心部に爆弾があるから、まずそこをなんとかすれば戦いやすい。けれど、新型は厄介なことに何処に爆弾が仕掛けてあるか分析するまで分からない。その上戦闘不能にならなくても、自爆した方が得策だと判断すると爆発する。そのせいで、ものすごく戦いにくい上に近づきすぎて自爆されても困る。
俺は一応健人の指示に従って、敵機に向かって飛び込んでいった。新型機をうまくかわすと、腰からイノセントガンを手に取った。「イノセント・セット!」イノセントガンが赤く光る。俺は旧式の背後に回ると、中心部を狙った。「イノセントガン、発射!!」俺の放った赤い球は見事中心部に命中。しかもでかいから、機体も戦闘不能。爆弾もろともまっさかさまに下に落ちていって爆発した。さすが俺。続いてもう一体の旧式にも同じことをする。でも・・・
〈泉、周りを見て戦え。今の機体がもしもう少しそれていたら他の隊員が危なかった。〉
「戦いの最中にそんな事考えられねーよ!」
言い返した瞬間、俺の目の前に新型機の小型ミサイルが飛んできていた。やばい!!そう思った瞬間、「イノセントガン、ドームシールド!!」桜がいつの間にか俺の前で二人を包む緑の球体のシールドを作り、俺たち二人は事なきことをえた。
「今のだってもっと危なかっただろ!!それをオペレーションしろよ!!」
インカムに向かって怒鳴る俺。
〈桜がお前を守るために動いていたことは分かっていた。〉
くっそー!!いちいち勘に触る奴!
〈新型機の最後の自爆装置位置特定。〉
何事もなかったかのように健人が言う。
俺はイライラしながら、戦場に戻った。・・・戦場で冷静な判断を失うことは一番いけない。それは分かっていた。でも・・・俺は怒りのままに飛んでいき、新型機の爆弾部分を避けて攻撃した。すでに残り最後の機体だった。直後、新型機は爆発した。俺は反射的に目をつぶって体の前で両手を組んで自分をかばった。けれど痛みどころか爆風も感じない。おそるおそる俺は目を開けた。桜の判断が早かったんだ。さっきと同様に、俺は守られていた。でも・・・俺の耳には、知佳さんの衝撃的な指示が聞こえた。
〈負傷者三名。栄喜・悟(さとる)・香(か)蓮(れん)の三人です。いずれも命に別状はない模様。栄喜のとっさの判断で最悪の状況は免れました。サポート戦闘部隊の待機者は、至急救護機で三人を収容、応急手当をしてください。〉
栄喜が怪我をした・・・。俺の頭の中は真っ黒になった。その場から動けなくなった俺の耳に、俺の心を察したような栄喜の声がした。
「大丈夫。全員軽い怪我だ。お前が攻撃した場所は爆弾の位置じゃなかったし、自爆はいつされるか分からない。今回の怪我は全員の力不足。質問は?」
俺は答えられなかったけれど、心配そうに俺を見ている桜に向かってうなずくと一緒に栄喜が手当てを受けているはずの救護機へと向かった。
マスター室。
「ついに恐れていたことが起きたわね・・・・。」
頭を抱えながらマスターの春日が言った。
「大丈夫、大丈夫。今の戦闘服ならあの距離とあれくらいの自爆レベルでしかも一機なら死人は出ないって。」
マスターの目の前に置いてあるパソコンから、気楽そうな女の声がした。
「そういう問題じゃないでしょ!死なないまでも大怪我につながる可能性は十分にあった。全員の信頼関係が完璧に構築されていない今、そんなことが起きたら・・・・。」
「マスター、落ち着いてください。明だってそれくらい分かってるんですから。」
照が笑顔で春日の前に湯気の立っているマグカップを置いた。
「ありがとう、照。それで、明。この資料読んだんだけれど・・・・。」
春日はプリントアウトされた資料の束をパソコンに向かって見せた。表紙には、アース・ライトレベルアップ計画書と書かれている。
「完璧だと思うんだけれど、問題あった?」
「完璧だから問題なの。この資料、幸多に作らせたわね!?」
「それは記憶にございませんねぇ。」
春日は幸多を見た。幸多は何も言わない。
春日はため息をつくとコーヒーに手を伸ばした。
「ため息の仕方が年を感じさせるね。おねぇは大変だねー。」
「明、今から大変なのはあなたよ。分かってる?」
「そうだねぇ、大変かどうかは分からないけれど、教官なんてメンドクサイことは確かだね。戦場に出るのは幸多と照がいれば問題ないけど。」
「・・・何度も確認して悪いけれど、戻ってこないという選択肢もあるのよ。政府には私から・・・・・。」
「だから、自分で戻るって決めたんだって。おねぇ、心配しすぎ。計画書はともかく、今のアース・ライトのメンバーのプロフィールと顔、それに各部署の上位二十人くらいは特徴と分析、さらには今の新人類の戦い方と今までの戦いの記録もちゃんと頭に入ってるから大丈夫。ただ、教官をあたしに任せる以上、あたしのやり方でやらせてもらうよ。」
「それはそのつもり。ただし、やりすぎないこと。幸多と照がついているから大丈夫だとは思うけれど、まさか訓練で大怪我をさせるわけにはいかないからね。」
「悪いけれどそれは約束できない。訓練をなめてかかってくる奴は戦場で確実に死ぬ。それなら訓練で大怪我して戦場に出ない方がよっぽどマシ。」
「・・・この資料は一応政府に提出するわ。どうせこの資料の通り訓練する気なんてないんだろうから、どういう方法をとるかは戻ってきてからじっくり聞かせてもらうから。たった今怪我人が出てしまったから、予定を早めてできれば明日には戦場復帰してほしいんだけれど・・・。」
「あたしはいつでも戦場に出られるようにしてるけど?」
「そうね。悪かった。言葉を変える。今日メンバーに新しい計画を発表するから、明日には本部に戻ってほしい。良い?」
「幸多ぁ~荷物取りに来てぇ~。重たくて運べな~い。」
春日の質問に答えず、明が言った。しかしその言葉が何を意味するか部屋にいる全員が分かっていた。無言で立ち上がる幸多。
「幸多、わがままな妹で本当に申し訳ないわね。」
春日が幸多に言った。
「全部知ったうえで真剣にお付き合いさせていただいているんです。問題ありません。」
そう言いながら幸多は部屋を出ていった。
「あーあ。本当におねぇが一番大変だと思うけどね。」
明がそう言うと、パソコンの通信が切れた。
「ごめん・・・・・。」
救護機の中で手当てを受けた三人に、うつむいて俺は言った。
智もすぐに駆けつけて、栄喜のそばにいた。
「さっきも言っただろ?お前が間違った攻撃をしたわけじゃない。それに全員かすり傷程度。」
栄喜が言った。ほかの二人もうなずいてくれた。だけど、この戦闘服を着て怪我人が出るのは今回が初めて。つまり、戦争が再開されてから怪我人が出たのは初めてなんだ。それだけの衝撃が三人にはあったはずだ。
「あれは最後の一機だった。誰が攻撃していても、結果は同じだった。いや、むしろ攻撃したのがお前で良かった。お前にはすぐに防御ができるよう、桜が自己判断でいつも動ける距離にいる。桜の防御力はかなり強い。だから二人ともなんともなかったし、俺もとっさに爆風を押し返せたおかげで近くにいた二人ともかすり傷ですんだ。もし、おまえ以外が攻撃をしていてとっさに反応できていなかったら、もっと大きな怪我になっていたかもしれない。質問は?」
栄喜は淡々としているようで、いつも俺の気持ちを汲んでくれる。俺は黙って首を横に振ろうとしたけど・・・
「三人とも、無事か!?」
健人が救護機に飛び込んできた。戦闘服のまま走ってきている。相当急いできたのが分かった。俺はびっくりした。健人が飛び込んできたのにもびっくりしたけれど、健人の戦闘服には赤・青・緑の三色の色がついていたんだ。健人とは所属部署が違う上に、仲が良いわけでもない。むしろ悪い。廊下でたまにすれ違うことや食堂で見かけることはあっても、戦闘服を見るのは初めてだった。健人は三色のイノセントを使えるんだ・・・。
「三人ともただのかすり傷だよ。」
栄喜が言った。
健人は一瞬ほっとしたような顔をしたが、すぐに俺を睨み付けた。
「お前のせいだ。」
「なっ・・・!!お前のオペレーターの通り、自爆装置を攻撃しなかったじゃないか!!」
俺は本当は自分が悪いと思っていたけれど、元々健人に腹を立てていたせいもあって、栄喜の言ったそのままに言い返した。すると健人が俺の胸ぐらをつかんだ。
「俺は周りを見て戦えと言った!!あれだけ戦闘部隊が近くにいたら、自爆するのは明白だ!!」
「だ・・・だったら、お前が周りの戦闘部隊を退避させればよかったじゃないか!」
「そんな時間はなかった!そんな時のために、戦闘部隊は自己判断で行動したり連携をとったりする権利を与えられているはずだ!!」
「最前線で戦っている最中に、周りなんか見れねーって言ってんだろ!」
「そんなの言い訳だ。現に栄喜や桜はいつも周りを見て戦っている。今回、怪我人が出たのは初めてだ。いつも冷静に判断せず突っ走って戦うお前の責任だ!」
俺は何も言い返せなくなった。・・・たぶん健人の言っていることは正しい。
「ちょっと・・・二人ともやめ・・・・・」
「いや、お前の責任だ。健人。」
智が俺たちの間に入ろうとした時、救護機の外から声がした。健人の手が俺から離れる。それと同じタイミングで救護機の中に幸多さんが入ってきた。
「ちょうど通りかかったら声が聞こえた。もう一度言う。今回怪我人が出たのは健人、お前の責任だ。」
俺たち戦闘部隊が幸多さんの声を聞くことは滅多にない。それもただ立ってしゃべっているだけなのに怖さがいつもより倍増(ばいぞう)している気がする。それを皆感じているのか、全員が緊張して固まっていた。
「戦闘隊員の実力に戦い方と性格、そしてサポート隊員がどれだけの機体を動かせてどこまでどんなサポートできるか分析・把握をしてオペレーションをするのが当たり前だ。健人、お前はさっき泉に突っ走って戦うと言った。それが泉の戦い方だと分かっていた。それにもかかわらず怪我人が出たのは、明らかにお前のミスだ。泉が最後の新型機に向かった時点で他の戦闘員に退避の指示を出し、桜には防御の指示を出していたら、怪我人は出ていなかった。そもそも、戦闘員を安心させて落ち着かせ、長所を生かした戦いをさせるオペレーションをすることは最も基本的なことだ。」
「・・・・申し訳ありません・・・・・。」
健人がうつむいた。幸多さんの言っていることは分かる。でも、そんな難しいことを健人は求められているんだ。幸多さんの静かな怖さもあって、俺もうつむいた。
「謝る暇があったらさっさと戻って報告書を書け。」
そう言いながら幸多さんは出ていった。健人もうつむいて俺たち全員に頭を下げると出ていった。俺は健人に謝らなければいけないと思ったけれど、何も言えなかった。
「幸多さんは特別、分析・研究部隊に厳しいんだよ。それに幸多さんはすべてのレジェントでまさに完璧。だけど俺たちにできないレベルのことは決して言わない。健人もそれは十分に分かってるはず。俺たちもそろそろ行こう。手当てはとっくに終わってる。それにしても幸多さん、何処に行ったんだろうな!」
栄喜が明るく言いながら立ち上がった。俺と智と桜は、栄喜について外に出た。うつむいて歩く俺に、栄喜が肩にぽんっと手を置いてきて、耳元で「後で健人にはフォロー入れておくから心配するな。」と言ってくれた。栄喜の手が暖かかった。そして、俺はもっと強くなりたいと心から思った。
幸多はアース・ライトの本部近くの森の中に入っていた。この森は、レジェント以下の隊員は立ち入り禁止になっている。機械を降りて少し歩くと、古くてさびれているが、けっこうな大きさの神社が現れた。神社の前でかなり巨大な鳥が、くつろいでいる様子で座っている。
「よぅ。ぽっぽ。」
幸多は鳥に向かって言った。鳥は動かないまま鳴いて答えた。神社の中に入っていく幸多。神社の中は、部屋になっていて色んなもので散らかっている。真ん中に布団が敷いてあり、パソコン数台に何枚もの紙、色鉛筆に布にマネキンとまったく整理整頓ができていない。そんな部屋の隅で、明が作業をしていた。
「荷物取りに来たけど。」
幸多が声をかけると、びっくりしたように明が顔を上げた。
「わっ。集中してたから、まったく気が付かなかった。ごめん、わざわざ。ただ来てほしかっただけっていうのもあるんだけれどね。」
「問題ない。こっちも来たくて来たんだ。」
そう言うと幸多は空いているスペースに座った。
「明日までに終わらせたいことがあるんだろ。待ってるから続けろよ。」
「ありがとう。幸多。」
明は作業に戻ったが、幸多が来たことで喜んでいるのが分かる。
「ねぇ、幸多。」
「何?」
「あたしが戻るの、嬉しい?」
「嬉しいに決まってる。毎日一緒にいられるんだから。だけど、素直に喜べない。」
「なんで?」
「お前を戦場の最前線に出すのが嫌だからに決まってるだろ。それに、お前は俺以上にハイパーに対して厳しい訓練をするつもりでいる。それは春日さんと比較されることでもあり誰より嫌われることも意味する。」
「別にハイパーのガキ達に嫌われようがいいもーん。あ、あたし自分の部屋より幸多の所で寝ることが多いと思うから、準備しといてね。」
「問題ない。もうしてる。」
「さっすが幸多!大好き!」
明が手を止めて幸多に飛びついた。
「明、本当に本部に戻ることを選ぶのか?」
幸多は明を受け止めると、明の目を見て真剣に聞いた。
「そうだよ。いくら戦闘服が進化しても、武器が進化しても、今の隊員じゃ陥落するのは時間の問題でしょ。あたしがそれを黙って見ているような人間じゃないことは、幸多が一番知ってると思うけど・・・。」
「俺と照がいる。それに春日さんだって。」
「その三人が大切だから戻るんじゃん。・・・今は、暖かい白のおねぇのイノセントより、あたしの黒い闇のイノセントの方が必要。でしょ?」
明が真剣な目をして幸多の目を見た。幸多はそれ以上何も言わず、明を抱きしめた。
今、俺達四人はトレーニングルームにいる。夕方は大体トレーニングしているんだ。トレーニングルームにも種類があって、置いてある器具や広さなど用途別に分かれている。戦闘訓練用のトレーニングルームで栄喜と戦ってトレーニングすることもあるけど、今日は栄喜が怪我をしてしまったし、筋トレや機械のシミュレーションの器具が置いてある部屋で栄喜に分析してもらいながらトレーニングをしている。
俺はとにかく力のトレーニング。もっと強くならないと新人類を倒せない。智は、機械のシミュレーション。桜は反射神経を鍛える機械でトレーニングをしている。栄喜は俺のトレーニングを小さなパソコンの画面を空中でタッチして操作しながら見ている。大体いつもと同じパターンだ。で、大体智が一番に機械の操縦が上手くいかなくてイライラするんだけれど、今日は違った。突然インカムから、マスターからのハイパー隊員全員の招集がかかった。場所は大会議室。本部で一番広い会議室だ。ノーマル部隊も通信で聞くように指示が出ているからよほどのことなのかもしれない。
俺は正直怖かった。もしかしたら、今日怪我人が出たことについてかもしれないから。でも、三人は何も言わずに一緒に行ってくれた。
俺たちが会議室についたときには、もうかなりの人数が集まって入り口が混雑していた。部隊は関係なくハイパー隊員全員だから、かなりの人数だ。そんな中、入り口近くに照さんがいた。智がすぐに頭を下げる。
「やぁ。全部隊の上位20人は、一番前の席に座って。部隊の場所は関係ないから、四人一緒で構わないよ。」
照さんが笑顔で言った。照さんの笑顔は、智のいうところのまさに素晴らしく輝く笑顔だ。照さんに笑顔で言われると、絶対に大丈夫って思えるくらい、安心できる。そんな照さんが、俺の所にさりげなく近づいてきた。
「今日の怪我のことじゃないから、心配しなくて大丈夫。むしろ、泉には一番嬉しいニュースだと思うよ。」
耳元で照さんがささやいた。そして笑顔で戻っていった。
俺たちは一番前の、真ん中辺りに座った。なんの話か分からないから、みんな警戒して真ん中が開いていたんだ。
「・・・照さんって、なんかすごいな。」
「そうなのよ。照さんって、普段目立たないように見えるけれど、なんだかすごいのよ。レジェントの称号はだてじゃないって感じ。」
俺のつぶやきに智がうなずきながら答えた。
そんなことを言っている間にもどんどん人が入ってくる。ハイパーだけで、こんなに人数がいたんだ・・・。栄喜と智、桜以外とはあまり関わらない俺は知らなかった。栄喜と智は人付き合いが良い方だし、そもそも栄喜は掛け持ちで智はサポート部隊だからあまり驚いていない。桜はたぶん知っていたんだろうけど、人見知りのせいもあっておどおどしている。珍しくて周りを観察していた俺は、健人の姿を見つけた。そして偶然にも目が合ってしまった。いつもの俺だったら、嫌味ったらしく思いっきり顔をそむけていただろうけど、今日のことがあってなんだかどうしていいか分からなくて、俺は下を向いた。
時間になった。会議室の前の扉が開いて、マスターの春日さんと幸多さんが入ってきた。幸多さんは照さんと反対側で俺たちから見てマスターの左側に座った。マスターは立ったまま話し始めた。
「今日、全員を集めたのは、世界政府から新しい通達があったことについてです。」
マスターは全体を見渡した。
「政府から、今のアース・ライトは以前と比べてかなり全体のレベルが落ちているため、対策をとるようにと通達がありました。アース・ライトのレベルが落ちているのは事実です。しかし、新人類の攻撃機は、日に日に進化します。政府からの指示があったのも事実ですが、私と幸多と照の三人で何度も話し合った結果、特別訓練の教官として、そして戦闘の最前線に、私の妹・・・明に本部に戻ってきてもらうことになりました。」
俺の胸がいきなり高鳴った。憧れの、戦闘レジェントの明さんが復活する・・・!?
「皆さんも知っていると思いますが、明は戦闘レジェントです。そして、これは実際に見る前に話しておいた方が良いという幸多の判断で、少しだけ明の説明をします。明のことはかなり色々な憶測が流れていることは知っていますが、どれも真実に近いものは聞いたことがありません。まず死亡説はもってのほか、そして復帰できないほどの大怪我も追っていません。私との不仲は見る人にもよると思いますが、決して仲の悪い関係だとは思っていません。明がアース・ライトを離れたのは、休戦になってしばらくしてから、他にやりたいことをみつけたからです。戦争が再開されてから今まで戻ってこなかったのも、そのためです。」
俺はマスターの一言一言を聞き逃さないように聞いた。明さんのことだったら、なんでも知りたい!
「・・・今から話すことは、皆さんが見たときの驚きを軽減させるために話します。まずイノセントの色のことは皆さんご存知だと思います。ここにいるほとんどの方は、イノセントの色は六色だと思っているでしょう。しかし、私と明は相反する七色のイノセントを使えます。私は白、そして明は黒です。白と黒のイノセントは私たち姉妹以外に例がないので、今までレジェントと当時を知る人しか知りませんでした。しかし明が戻ってくる以上、黒いイノセントを必ず見ることになります。」
黒いイノセントだって!?マスターと相反するってどういうことだ!?
「そして特別訓練ですが、これは明が組んだプログラムに沿って明が行います。訓練には必ず幸多が同席します。照にも、場合によっては同席してもらいます。主に戦闘部隊のハイパー上位20人を対象にしたものですが、一番初めの訓練時は全部隊の上位20人に来てほしいとのことです。・・・あまりこんなことは言いたくありませんが、明の訓練は厳しいのレベルをはるかに超えるでしょう。怪我人が出ることも多々あるでしょうし、急激な順位変動もあるでしょう。アース・ライトを去る人も出てくるかもしれません。それを踏まえたうえで、対象者には訓練に臨んでほしいと思います。これが、アース・ライト全体のレベルを上げるために、私が出した結論です。明日から明は復帰する予定です。もし明日以降新人類の攻撃機が来たら、一番初めはいつものポジションではなく、攻撃部隊・サポート攻撃部隊のハイパー上位20人はシールド内でしっかりと明の戦闘を見て聞いてください。分析・研究部隊とその他の方々は、画面上ですが同じくよく見て聞いてください。明は直接教えることより、自分たちで学び取ることを望んでいます。最初以降の戦闘は、全て明達レジェントに任せ、皆さんが訓練に集中できるようにします。そのため警報も最初しか出さないので、戦闘区域には出ないようにしてください。以上です。詳しいことはまた各自に連絡します。では今日はゆっくり休んでください。」
マスターは俺たちに一礼すると、会議室を後にした。続いて幸多さんも出ていく。そして照さんが前に立った。
「じゃあ、今日はこれで解散な。あっ、俺から一つアドバイスを言っておくとすれば・・・。」
全員が照さんにくぎ付けになる。
「明は幸多の彼女だから、男連中は手を出したらダメだぞ!」
照さんがニッコリと笑って親指を立てながら言った。そして唖然とする俺たちを残して、会議室から出ていった。途端にざわめき始める会議室。当たり前だ!なんたって、戦闘レジェントが復活するんだから!!この目で見られる上に、特別訓練まで受けられる!!これは、確実に俺の夢へと近づくことに間違いない!!俺も含めて皆が大興奮する中、ふと健人を見ると、健人はなぜか青ざめていて一人会議室を去ろうとしていた。理由が知りたかったけど、俺たちはそんな仲じゃない。それどころか犬猿の仲だ。だけど・・・やっぱり今日のことは謝らないといけないと思っていた。明さんのことで大興奮はしているけど、健人の一人青ざめた顔を見たら、なんとなく謝りに行こうと思った。
「ごめん、俺、ちょっと行ってくる!」
三人にそれだけ言うと、俺は健人を追いかけた。人が多くてなかなか追いつけなかったけれど、入り口を出て少ししたところで追いついた。なぜか健人は、人気のない道を行こうとしていたのだ。
「あの・・・健人・・・・・。」
俺は健人を呼び止めた。
健人は黙って振り返った。やっぱりどこか顔色が悪い。
「今日のことは栄喜からメールをもらった。もし今日のことだったら謝る必要はない。幸多さんの言っていた通り、全て俺のミス。俺の責任だ。申し訳なかった。・・・よかったな、特別訓練。じゃあな。」
「あ・・・ちょっと・・。」
健人は早足で去って行った。俺は一人残された。
「今はそっとしておいてやろう。」
いつの間にか、栄喜が隣に立っていた。
「ああぁぁ~!!特別訓練!何するんだろう!?楽しみすぎて絶対ねられねぇ!」
慌ただしく晩御飯を食べて、風呂にも入った俺たち四人は俺と栄喜の部屋にいた。俺と栄喜は相部屋だ。ちなみに智と桜も相部屋。アース・ライトでは、男女の部屋を行き来しても特に問題はないし恋愛も自由。でも一応、周りに特別逸脱した行為として見られることを行うことは禁止されているけれど、俺たちにそんな事もないから夜は大体この部屋で集まっている。
宇宙平和管理局の決まりで、夜の戦闘は禁止されているから、この時間になると新人類が攻撃してくることもない。宇宙平和管理局っていうのはこれまたえらい宇宙人たちの集まる平和についての団体としか言いようがない。戦争自体は元々俺たち地球人の事だから介入はされていないけれど、戦闘区域を定めているのと夜の戦闘を禁止してくれたのはありがたい。なんせ新人類達の住む星には昼と夜がないらしいから。太陽の光があたらないから、ずっと人工の明かりがついているって習ったような・・・。地球も場所によって昼と夜は違うけれど、今は本部のここだけが戦闘区域だから、ここが基準になる。そんな事より!明日からのことを考えると興奮しすぎて俺はさっきからずっとベットの上をゴロゴロと暴れている。
「あー、もう!こいつはどうにかならないかね。」
そう言いながら智もニコニコしている。智は対象者じゃないけれど、最初の訓練は出られるから楽しみなんだ、きっと。
栄喜もそれなりに楽しみなのが伝わってくる。でも桜だけが不安そうな顔をしていた。
「なんだよ、桜。お前も立派な対象者じゃんか。」
「だから不安なんだよ・・・。だって、マスターの言葉・・・厳しいレベルじゃないって・・・私、耐えられるかな・・・。」
「始まる前から何言ってるんだよ。俺たちは今現役で戦闘に出ている。いつだって命がけじゃんか。」
俺の言葉に、桜は黙ってうなずいた。桜は昔からいつもこうだ。実力があるのに、臆病で自信がない。
消灯の時間がきて、智と桜の二人は自分の部屋に帰って行った。栄喜も二段ベットの上に上がって、電気を消した。
俺は横になって目をつぶってみたけれど、興奮してやっぱり寝られない。でも寝ないと、明日にさしつかえる。それだけは避けたい。俺はなんとか別のことを考えようとした。でも、そしたらやっぱり今日の戦闘のことが頭に浮かんできた。そして健人の青ざめた顔。
「そんなに楽しみで眠れないか?」
上から栄喜の声がした。
「悪い。俺のせいで寝られないか?」
「いや、俺は考え事しててな。」
「何を?」
「イノセントの色の事。マスターの言っていた、黒と白のことだよ。」
「あぁ、二人しか例のないイノセント!どんなものか楽しみだよな!」
「そう。楽しみだ。ただ、俺は研究者としてな。」
「研究者として・・・。」
「俺はお前と違って、分析・研究レジェントになりたいからな。どんな戦いをするかより、どうやってイノセントを使うかとか、そもそものイノセントの色の特徴とか、そっちに関心があるんだ。質問は?」
「・・・・イノセントの色・・・・あっ!!」
「何?」
「・・・健人ってさ、三色のイノセントを使えるんだな。」
「あぁ、そうだな。悔しいか?でも、分析・研究部隊ではそんなに珍しいことじゃないぞ。むしろ二色の俺がハイパーナンバー1なのが不思議なくらいだ。」
「今は・・・悔しさより・・・なんだか分からないけれど、モヤモヤする。」
「お前、幸多さんの説教を初めて聞いたからな。」
「それだけじゃないんだよ・・・なんていうか、今日の発表の後の健人はなんだかおかしかった。それに、健人は幸多さんの説教を初めて受けたわけじゃないんだろ?」
「心配なのか?喧嘩するほど仲が良い?」
「違う!でも・・・。」
「お前は意外と優しいからなー。」
「だからそんなんじゃ・・・!!」
「内緒話しようか。絶対外には秘密の話。もちろん智と桜にも。」
「うん。」
俺と栄喜は、眠れないときこうやってよく話す。内緒話も、この一年間で数えきれないくらいしてきた。だからお互いの信頼関係は固い。
「健人はな、元々戦闘部隊の希望者だったらしいんだよ。」
「えっ・・・?でも、あいつが戦闘部隊の試験を受けているところなんて・・・。」
「受けさせてもらえないらしいんだよ。理由はなんでか分からないけれどな。」
「マスターに?でも、マスターは個人の意見をいつでも尊重してくれるじゃないか。」
「そう。だから、よほどの理由があるんだろうな。きっと。だけど、少しでも戦闘の役に立ちたいからって、健人はオペレーションを重点的に活動することにしたらしいんだよ。分析・研究部隊は研究の成果も順位に関係してくるから、分析を中心とするオペレーションを基盤にしている健人の順位は意外と低いだろ?」
「・・・・。」
「けれど、分析や研究に順位は関係ないって幸多さんはいつも言ってる。きっと幸多さんは俺たちの知らない健人の想いを知っていると思う。健人だけじゃなくて、皆のことも。だからこそ、厳しく説教する。そうやって、分析・研究部隊は成長してきたんだ。質問は?」
「ない・・・。」
「ここからはあくまでも俺の推測なんだけど・・・。健人は、俺たちが入隊する前からアース・ライトのメンバーだった気がするんだ。」
「俺たちより前?でも、健人は俺たちと同じ年じゃないか。俺たちは入隊できる十四歳になったすぐの段階で入隊が決まったんだから、そんなはず・・・。」
「そう。だから推測。断定する要素は少なすぎる。」
「・・・・・・・。」
「じゃあ、そろそろ真剣に寝るか。おやすみ。」
「・・・おやすみ。」
こうして俺たちはいつもより長い気がする一日を終え、眠りについた。
「あぁぁ~!楽しみ!でも、緊張してきた・・・!」
いつものように四人で朝食を食べていたけれど、俺は興奮を抑えきれなかった。
だけどそれは俺だけじゃないみたい。食堂が、いつもより一段と騒がしい。食堂を出てからも、あちこちで今日のことを話している声が聞こえた。
「なぁ!俺たち、今日もし戦闘があったら、シールド内だったら見る場所はどこでもいいんだろ!?一番良い場所はどこだ!?真っ先に確保しないと、他の奴にとられっちまう!」
俺は興奮しながら栄喜に聞いた。ここは一番頭の良い栄喜に判断してもらうのが良い!
「そうだなぁ。ジェットを使って飛びながら見るのは体力を使うし、集中力もいる。だけど地上からじゃ中心で見ても、高い所で戦われたらアイガードがあっても一番良いとは言えない・・・だったら、いっそ屋上はどうだ?」
「屋上!それが良い!屋上のど真ん中で見ようぜ!!」
「あの・・・・戦闘は、見世物じゃないんだよ・・・。楽しみじゃないって言ったら嘘になるけれど・・・・戦争を楽しむのは・・・・違うと思う。」
俺と栄喜、智は驚いて桜を見た。桜が俺たちの間に入ってくるなんて、ましてや否定的なことを言ったのは初めてだったから。桜は下を向いている。
「・・・・ごめんなさい!」
黙っている俺たちに向かって、泣きそうになりながら桜が言った。
「うおりゃー!!」
智が笑顔で桜を抱きしめた。
「なんで謝るのよ。桜は何も間違ったことは言っていない。むしろ、私たち、興奮しすぎて大切なことを忘れてたね。こっちこそごめんね、桜の気持ちにちゃんと気が付かなくて。」
桜は智の肩に顔を隠してうなずいた。俺と栄喜も顔を合わせてちょっとばつがわるそうにうなずいた。
俺たち四人はとりあえず屋上に上がってみた。すると、何人かハイパー隊員と思われる奴らがいた。考えることは皆同じってやつか・・・。でも真ん中の方には誰もいない。一番目立つところには、皆いつも行きたがらない。俺には不思議だ。俺は夢を叶えるためなら、どんどん前に出たいけどなぁ・・・って思うけど。
場所を決めた俺たちは、屋上から出ていこうとした。ちょうどその時。
〈新人類の機体接近・新人類の機体接近・隊員は直ちにイノセントアームを起動させ持ち場に待機してください。繰り返します・・・・・・・〉
「うわっ、すごいタイミング!」
俺は高鳴る胸をおさえてイノセントアームを握りしめた。
「お前といるようになってから、いつもなんかタイミングがよくなった気がするよ。」
栄喜も珍しく少し笑っている。
「イノセントアーム・セット!!」
俺たち四人はイノセントアームをセットして、屋上の真ん中ギリギリまで前に出た。
〈新人類機体・裸眼で確認できるまで残り三分です。衛星がたまたま捉えて、早めに確認できました。旧式戦闘機二台に新型戦闘機四台が確認できています。マスター、指示をお願いします。〉
〈レジェント戦闘隊員、明に出動命令。他の出動メンバーは明に任せます。新型戦闘機の爆弾を、安全に研究できるよう取り出し回収。新型戦闘機もできるだけ原型をとどめたまま撃破、回収。十分以内に。二分後に本部より十メートルにシールド。以上。〉
「なっ・・・!!命令が無茶すぎる!!」
栄喜が思わず叫んだ。そう思ったのは栄喜だけじゃないし、あちこちで驚きの声が上がっている。俺だってそう思う。戦闘機六台を撃破するだけでも難しいのに、あんな命令・・・。でも・・・俺たちが今から見るのはレジェント戦闘員・・・・。
〈あたしは幸多のオペレーションしか受けない。あとサポートは照だけで十分。他の奴らは、はっきり言って邪魔。二分以内には本部前に到着。〉
女の人の声が聞こえた。物凄くとげがある声と言い方。それにこれだけの任務を、オペレーターに戦闘員一人とサポート一人で行おうとしている。もうマスターも明さんも無茶苦茶だ。
〈俺ならとっくに準備してる。問題ない。〉
〈肯定しました。こちらも準備完了です。〉
幸多さんと照さんの声が続けて聞こえる。全く動じていない様子のこの二人も相当だ。・・・レジェントが三人そろった戦いが始まる・・・。
「あれ・・・!!」
智が森の方を指さした。その方を見た俺たち三人はさらなる衝撃を受けた。巨大な鳥に立ったまま乗った女の人が、すごいスピードで向かってきた。俺たちは目が釘づけになった。金色でリボンが横についているひざ上のドレスに、ピンクの前に大きなリボンがついたケープ。銀色のウエーブがかかった髪を高い位置に結んでいる。結び目にも金のリボン。でも、顔はあの真面目なマスターに似ている。ただ優しい目つきのマスターと正反対的な・・・きつい目をしている。
「栄喜、なんだよあのでかい鳥!!」
突っ込みどころが多すぎるけれど、とりあえず初めて見る生き物に俺はおもわず栄喜に向かって叫んだ。
「・・・分からない!調べている暇もない!」
栄喜の大きな声が返ってきた。
明さんらしき女の人は、いや正確には明さんを乗せた鳥は屋上より高い位置のシールドが張られるはるか向こうで止まった。
〈到着まで残り一分半。照、出てくれ。〉
〈肯定しました。〉
本部から、小型の戦艦のような、それも今まで見た中で一番でかい初めて見るロボが飛び出した。
「あれ・・・!回収からサポートから救護からとにかく全部が搭載された、ハイパーは誰も扱うどころか動かすこともできないロボだよ!!動いているところなんて、初めて見た!!」
智の解説と驚きの声が聞こえる。俺は明さんの後姿を見つめていた。
〈シールド、張ります。〉
知佳さんの声と同時に、俺たちの目の前に透明のシールドが張られた。
突然、明さんが振り返った。物凄い笑顔だ。でもその笑顔はマスターと違ってどこか怖い感じがする。
〈こーうたー!見えてるー?どうー?今日のために作ったドレスー!かーわーいーいー?〉
えっ・・・?明さんは戦闘一分前なのにまだイノセントアームを使用していないうえ、戦闘とは全く関係ないことを・・・。
〈スカートが短い。〉
幸多さんも幸多さんで普通に答えてる・・・。
明さんは第二研究所の窓の方に向けてベーっと下を出すと、また後ろを向いた。
〈あ、おねぇ、さっきの命令一つ気に食わないんだけど。十分以内ってさぁ・・・。〉
〈明、ここではマスターと呼びなさい。〉
マスターの声、聞き比べると明さんと似ている。でも、マスターの声にはとげがない感じがする・・・。いやいや、声じゃなくて、そうだよな、十分なんていくらなんでも・・・。
〈それはすみませんね!!マスター様、十分以内なんて、あたしの事なめてるの?〉
えっ・・・・。まだ戦闘が始まってもいないのに、俺たちには驚愕が多すぎるのに、さらに驚愕を与えてくる。
〈様は余計。旧型機一分、新型機二分の計算なんだけれど。〉
〈旧型機は原型残さなくていいんでしょ。だったら五分で十分(じゅうぶん)。〉
〈わかった。好きにして。〉
〈ふんっ!!イノセントアーム・セット!〉
明さんの周りを黒い光が包み込んだ。光が消えたとき、俺たちはまた驚かされた。明さんの戦闘服は俺たちと全く違った。いや、その前に戦闘服に見えない。黒い長袖に前は短い浴衣のようなデザインのワンピースのようだ。でもスカート部分はふんわりと広がっている。俺たちの戦闘服と同じ色の帯に後ろは大きなリボン。袖・襟・服の境目・・・って言えばいいのかな?あとスカートの下にも同じ色のフリル。服には黄色・ピンク・紫・青のバラと緑のとげの生えたツルが描かれていて、左胸には黄色でRの文字。黒いタイツには赤いバラが描かれている。あとは黒い手袋に靴に頭には黒いバラの大きな飾り。ヘルメットもアイガードもない。
「ど・・・どういうことだよ・・・。」
俺は、もう大きな声も出せないくらいだった。
「マスターとレジェントは、自分用の戦闘服を作れるんだ。だけど、あれが戦闘服なのか・・・?」
栄喜も同じことになっているようだ。智と桜に至っては、もう声すら出せていない。
そうこうしている間に、敵機が小さく見えた。
〈来たぞ。俺は新型の爆弾の位置を探す。〉
〈んじゃ、とりあえず旧式の二機を砕いとく。〉
でも明さんはその場から動かずに、腰にかけてある武器をとった。それは、俺たちが今までに見たことのない武器だった。小さな弓矢の形をしてる。
〈ぶっ飛べ。〉
明さんが二度その小さな弓矢を引いて手を離した。すると、小さな黒い球がアイガードでやっと見える速さで飛んでいき、まだ小さい敵機の方で二度爆発が起きた。
〈二弾とも旧式機に命中、旧式機は爆発。ついでに新型機全機の爆弾の位置も特定完了。オペレーターを開始する。〉
〈ぽっぽ、行くよ。ここからが本物の悪魔の見せ所だ。照、爆弾と機体の回収、ついでに状況に応じてあたしを乗っけるサポートよろしく。〉
〈肯定しました。〉
言い終わった瞬間、今までに見たことのないスピードで、明さんを乗せた鳥が敵機に向かって飛んでいった。続いて少し離れて照さんのサポートロボが飛ぶ。幸多さんの爆弾の特定も明さんの動きも照さんの反応も何もかもが早すぎる。
〈小型の追尾ミサイルが来るぞ。〉
〈はーい。イノセントガン、イエローアンドグリーンセット。〉
両手でイノセントガンを持って明さんが言った。右が黄色、左が緑に光る。二色同時だって!?
〈自爆してもらったら命令守れないからね。メンドクサイ。イノセントガン、発射。〉
ミサイルと新型機の間に黄色い壁が、ミサイルと明さんの間に緑の壁が出来た。緑の壁に当たってミサイルが爆発する。新型機が黄色い壁を突破した。それを待っていたかのように動く明さん(正確には鳥)。
〈一番最初に突破したやつの爆弾の位置は、真ん中の少し右下。〉
〈はーい。まず爆弾飛ばして縦切りいきまーす。照、よろしく。〉
〈肯定しました。〉
真ん中の少し右下・・・それだけ!?俺たちはいつも、爆弾の位置はオペレーターから送られてきた正確な位置がアイガードに映るようになっている。でも、明さんはアイガードをしていない・・・。明さんはいつの間にか左手にイノセントガン、右手にイノセントソードを持っている。イノセントガンは青、ソードは赤だ。明さんは突然ジャンプした。そして空中で半回転して、新型機の後ろに反対向きに落ちていく。
〈ここだな。ぶっ飛べ。〉
青い光がはなたれ、氷で固められた爆弾が飛び出した。俺たちが爆弾の位置を追う暇もなく、照さんが爆弾を回収した。何が起きたのか一瞬だったから分かりづらかったけれど、明さんは落ちる瞬間にイノセントガンを真ん中に付けると、ほんの少しずらした瞬間に爆弾の位置を見極めて見事に打ち抜いた。明さんは鳥に一旦着地し、また飛んだ。そして右手を縦に振ると、新型機は綺麗に縦に割れた。機体がバラバラに落ちていく寸前に、照さんの機械が今度は新型の機体を回収した。
〈新型機の爆弾と機体、一体目を無事回収しました。〉
〈了解。〉
〈照、離れて。〉
〈肯定しました。〉
新型機が三体集中して明さんを襲う。でも明さんはまったく動じていない。
〈ぽっぽ、次は下から行くよ。〉
明さんを乗せた鳥が一気に急降下した。追いかける新型機。
〈一番に追いかけている新型機の爆弾の位置は真ん中のかなり下。下からの方が近い。〉
〈ん。次は横切りでお願いしまーす。〉
〈肯定しました。〉
鳥が今度は急上昇した。一番最初に追いかけていた新型機と残り二体の新型機の間に入ると、いつの間にか黒く光っているソードを二体に向けて軽く振った。黒い風が吹き付け、新型機二台が離れた。その隙に一番に追いかけてきた新型機に向けて一気に距離を詰めると、新型機が動く暇も与えず、また爆弾だけを打ち抜いて、赤いソードで今度は横半分に機体を切った。それもすぐに照さんが回収。
〈新型機二台目の爆弾と機体も無事回収しました。〉
〈了解。〉
〈えーっと、次はあっち。右斜め切りでいくね。最後は左斜めに切る。〉
明さんが指をさしながら言った。
〈了解。爆弾の位置は・・・・。〉
もうそこからはほとんど会話も一緒で、動きも早すぎて説明も難しい。明さんは残りの二体をあっという間に片づけて、照さんは一つ残らず回収した。照さんに至っては、肯定しましたと無事回収しましたしか言っていない。
〈全新型機の爆弾と機体、無事に回収しました。〉
〈了解。お疲れ様。爆弾がつんであるから、第二研究所のコアシステムの方へ戻ってくれ。任務完了だ。〉
〈照、戻ったら、まずお風呂の準備しておいて。ぽっぽのブラシとシャンプーも忘れずにね。〉
〈どちらも肯定しました。〉
〈ちなみに最後の機体が回収された時点で四分五四秒。つまり五分以内。〉
〈ほらー。五分でよかったじゃん。思ったより新型機も大したことないね。一旦本部の屋上に降りて、そこから幸多の所に顔を出してお風呂行くね。上がったら一緒にランチしよ。良い?〉
〈問題ない。〉
見学していたハイパーは、誰も何も言えずただただ唖然としていた。そんな中、俺たちの頭上をドレス姿に戻った明さんを乗せた巨大な鳥が通過して、着地する音がした。
「明、お疲れ様。だけどいい加減、私生活で照に頼るのをやめなさい。」
マスターの声に驚いて俺たちはとっさに振り返った。マスターと明さんが向き合って立っている。いつの間に来たんだろう?マスターと明さんがちょうど重なって、二人の表情は見えない。巨大な鳥は明さんの隣で大人しくしている。
「何かにつけて説教するのもやめてくださーい。えーっと、この場合は、挨拶はただいまでいいのかな?」
「そうね。正式に本部に戻るんだから。おかえりなさい、明。」
「ただいま。おねぇ。」
「早速だけれど、昼食が終わったら幸多となるべく急いでマスター室に来て。特別訓練についてね。話し合うことが多いんだから、お風呂も長風呂しないこと。」
「妹使いが荒いなー。ケーキと紅茶、用意しておいてよ。」
そう言うと、明さんは鳥を引き連れて本部の中へと入って行った。俺たちはマスターと目が合った。マスターは俺たちに向けてほほ笑むと、本部の中へ戻って行った。顔や声は似ているけれど二人は全然違う。髪の色や髪型、服もそうだけれど・・・なんていうか、そう。まさにマスターの言っていた、相反するって感じ。
俺たちは誰も何も言えず、しばらくその場から動けなかった。
「あ~~~。この、明さんってどんな人なんだろう。めちゃくちゃ強いんだよな。マスターの妹なんだよな。ってことはマスターに似てるのか?」
「泉・・・いつもいつもそんな所でぶつぶつ言ってたら、変人に見られるぞ。」
レジェントの証の楯や賞状が厳重に飾ってあるケースの前で突然声をかけられた俺は我に返った。顔を上げると、俺の同期で同じ年の友人三人が立っていた。
俺に声をかけたのが栄喜(えいき)。頭の良い男(やつ)で、分析・研究部隊と戦闘部隊を両立させている。分析・研究部隊のハイパーナンバー1で戦闘部隊では俺に続くナンバー2の実力者。分析・研究レジェントになるのが夢で、そっちに集中したいらしいけれど、マスターに実力者として戦闘部隊に入ってほしいと言われたらしい。今使えるイノセントの色は知的で冷静な青と冷静さの中にも情熱がある、研究者に最も向いていると言われている紫だ。戦闘部隊のハイパーの中で、唯一二色のイノセントを使える。悔しいことに背が高くてなかなかのイケメンだ。
栄喜の横でニコニコ笑っているのが、智(とも)。サポート戦闘隊員ナンバー1で、いつもニコニコしている明るい女の子。使えるイノセントは明るくて調和を望む黄色。オペレーターの指示通り、いつも確実に仕事をこなす。俺たちのリーダー的存在でもある。長い髪の毛をポニーテールにしてるうえに童顔で背が低いから実年齢より下に見られるのが悩みらしい。
二人の後ろからひょっこり顔を出している女の子は桜(さくら)。桜は俺の幼馴染でもある。引っ込み思案でおとなしいくせに戦闘部隊ナンバー3で、使えるイノセントは優しさと素早さが特徴の緑。セミロングより少し短い髪で、前髪を花のピンで止めている。顔を隠したがる桜に、智が無理矢理つけているらしい。こういうのもなんだけど、背も高いし顔も悪くないんだから、もっと堂々としてればいいのにと昔から思う。
あ、忘れていたけど、俺の使えるイノセントは情熱の赤!!
「なんだよ、栄喜。今日は第二研究所の方に行くって言ってたじゃないか。」
「お前がここで空想にふけっている間に、もう昼だ。昼食に行こうと思って二人に連絡してから一旦こっちに戻ってきたんだよ。どうせお前はここにいると思ったから、あえて連絡しなかった。質問は?」
「そもそも俺は空想なんかしていたわけじゃない!!新たなイノセンスの色を出すためにモチベーションを上げてたんだよ!!それに!!俺がここにいなかったらどうするつもりだったんだ!!」
「ここにお前がいなかったら、もちろん連絡したさ。ただ何度も言うようにイノセントの色っていうのは考えて出るものじゃなくて勝手に・・・・・」
「はいはいはいはい!!ストップ!!栄喜、いつも同じことを言っているのはあなたも一緒。泉もムキにならない。そしてさっさとお昼に行く!!」
智に言われて、俺と栄喜は黙って食堂へ向かった。智はいつものようにニコニコしているし、桜も少し笑っている。なんだよ、まったく。
「俺はもちろん、焼き肉定食!」
「俺はバランス定食で。」
「私はヘルシー定食!!」
「あの・・・私は日替わり定食で・・・。」
俺たち四人は食堂の開いている席に座った。みんな頼むものはいつも一緒だ。一粒食べれば一日に必要な栄養素は全て補給できて、味も色んな種類のものがあり、なおかつ満腹感も得られるサプリメントはとっくの昔に開発されているんだけれど、マスターの意向で戦闘中以外はなるべく食事をとるように言われている。初めてここに来た時は食べるという習慣がなかったからなぜだか分からなかったけれど、一年たった今ならマスターの言うことが分かる気がする。食事はサプリとは全然違う美味しさがあるし、みんなでゆっくり集まって話をする習慣もついたから。
「泉、いつも肉ばっかり。少しは栄養考えなよ。」
笑いながら智が言う。
「うるせー。俺はこれでパワーをつけてるんだよ。智こそ、野菜ばっかりでそんなんじゃスタミナつかねーぞ!!」
「私はカロリー計算されたものを食べてるだけだから。ちゃんと栄養とってるもーん。」
「バランス的には俺が一番の答えだ。質問は?」
「あー!もう!この質問野郎!!」
「ちょ・・・ちょっと・・・喧嘩は・・・。」
「いつものこと。桜、気にしすぎだよ。」
俺はむすっとして肉を頬張った。
「そうむくれるなよ。さっき言ってた、新しいイノセントの色がほしいのは俺も同じだ。レジェントになるためには、赤・青・緑・黄色・ピンク・紫のイノセントの色を使いこなせるようになることが第一条件だからな。それにその後はマスターかレジェントの人に推薦してもらって、マスターとレジェントの全員が賛成したらやっとなれるものだ。それ相応の功績も必要。」
「・・・お前はどうやって二色使えるようになったんだよ。」
「何度も説明しただろ。俺は元々青のイノセントを使えていた。でも、研究の資料を没頭して読んでいた時、イノセントアームが熱くなったんだ。それで、試しにセットしたら、戦闘服に紫が追加されていた。以上。質問は?」
「質問はない。俺だっていつもイノセントアームに力を込めてる!!」
「だから赤なんじゃないか?」
「もぉー。いつも同じ話ばっかり。そんな悩めるお二人に、信憑性の高い面白そうな噂があるよ。」
綺麗に食べ終えた智が食器を重ねながら言った。智は、噂話が大好きだ。
「何!?」
俺と栄喜が同時に前のめりになる。桜がくすっと笑った。
「あのね、最近、幸多さんと照さんがよくマスター室に行ってるの。それは私も見てる。で、長時間出てこないことも多いらしいよ。幸多さんに至っては、時々何処かへ出かけているっていう情報もあるの。」
「それのどこが面白そうなんだよ。」
「なるほど。それは面白そうだな。」
「だからどこが!」
四人とも食器をかたずけて食堂を出ながら、俺は言った。
「三人が長時間一緒にいるってことは、何か重要な会議をしてるってことだろ。もしかしたらそれは俺たちに関係のあることかも知れない。あと、今の世界政府とのやり取りや新人類との平和交渉はマスターが行っているけれど一人で全てできるわけじゃない。幸多さんは全部の部隊のレジェント。何か大きなことで動いていても不思議ではない。」
栄喜の言葉に智が笑顔でうなずいた。
「それは、俺がレジェントになれる可能性の噂に入るのか?」
「可能性はゼロではないな。」
「だったら!!何を話しているのか聞けばいいじゃん!!」
「・・・誰に。」
「・・・幸多さん・・・?」
「お前、幸多さんに話しかけられるか?」
「うぅ・・・。」
俺は言葉に詰まった。幸多さんは、誰も近寄らせない独特の雰囲気を持っている。言ってしまえば、黙っているだけなのにこの俺でもかなり怖い。
「じゃあ、照さん!!」
俺は智を見た。
珍しく智がため息をついて首を振った。
「イノセントロボの訓練の時、さりげなく聞いてみたのよ。そしたら、「内緒のお話。」って素晴らしく輝くいつもの笑顔で言われたわ。」
「じゃ、情報待ちか。」
栄喜の言葉に俺たちがうなずいたちょうどその時。
〈新人類の機体接近・新人類の機体接近・隊員は直ちにイノセントアームを起動させ持ち場に待機してください。繰り返します・・・・・・・〉
アース・ライトの敷地内と俺たちのつけている小さなインカム(つけるのは義務)からけたたましいサイレンと共に放送が流れる。
俺たちは顔を見合わせると、ポケットからイノセントアームを取り出した。
「イノセントアーム!セット!」
俺のイノセントアームは赤く輝き、一瞬目を閉じると、もう戦闘服に変わっていた。いつ体験してもすごい。戦闘服って言っても普通の服と見た目は同じで、水色をベースに、左胸の辺りには俺の場合ハイパーの意味でHと赤で書かれている。右胸の辺りには、八つの二段に並んだ丸い枠が書いてあって、俺はその右上一番右が赤色になっている。つまり戦闘服に現れる色で、使えるイノセントも分かるんだ。この戦闘服、見た目はただの服だけど軽さと強度が半端じゃない。後は情報が映し出される+目を防護するためのアイガードがついたヘルメットに、頑丈でジェット機能がついたくつ。智はサポートロボのある待機場所に走って行った。俺たち三人も、戦闘部隊の待機場所に急ぐ。
〈新人類機体・裸眼で確認できる範囲まで残り二分。旧式戦闘機二台に新型戦闘機三台がすでに確認できています。マスター、指示をお願いします。〉
俺たちの耳に研究・分析ハイパーナンバー2の女性、知佳(ちか)さんの声が聞こえる。続けてすぐにマスターの指示が出される。
〈戦闘部隊ハイパーナンバー上位6人が出撃。次の上位四人はシールド内で出撃準備。サポート戦闘部隊ハイパーナンバー2まで援護。ナンバー3から5は、どの機体でも出られるよう準備。オペレーターの分析を冷静に聞いて全ての機体を撃破すること。三十秒後に本部より十メートルにシールド。以上。〉
俺は一気に外へと飛び出した。そしてまた一気に上昇して、敵を待ち構える。
戦闘の最中は、本部の周りにはシールドが張られる。本部が壊れたら困るしね。
〈新型戦闘機が間もなく到着。自爆用の爆弾の位置がつかめるまで警戒しながらの戦闘が必要。〉
インカムから研究・分析ハイパーナンバー6のオペレーター、健人(けんと)の声がする。俺はどうもこいつが苦手だ。向こうもなぜか俺を目の敵にしている。あっ、旧式と新型の違いはめちゃくちゃ沢山あるけれど、一番の違いは自爆装置の位置。新人類の機体は、昔から戦闘不能になると自爆して機体を残さないようになってる。なるべくこちら側に情報を与えないためらしいけれど、自爆した時の影響でアース・ライトの人間に死傷者が出ることもあったらしい。旧式の機体は機体の中心部に爆弾があるから、まずそこをなんとかすれば戦いやすい。けれど、新型は厄介なことに何処に爆弾が仕掛けてあるか分析するまで分からない。その上戦闘不能にならなくても、自爆した方が得策だと判断すると爆発する。そのせいで、ものすごく戦いにくい上に近づきすぎて自爆されても困る。
俺は一応健人の指示に従って、敵機に向かって飛び込んでいった。新型機をうまくかわすと、腰からイノセントガンを手に取った。「イノセント・セット!」イノセントガンが赤く光る。俺は旧式の背後に回ると、中心部を狙った。「イノセントガン、発射!!」俺の放った赤い球は見事中心部に命中。しかもでかいから、機体も戦闘不能。爆弾もろともまっさかさまに下に落ちていって爆発した。さすが俺。続いてもう一体の旧式にも同じことをする。でも・・・
〈泉、周りを見て戦え。今の機体がもしもう少しそれていたら他の隊員が危なかった。〉
「戦いの最中にそんな事考えられねーよ!」
言い返した瞬間、俺の目の前に新型機の小型ミサイルが飛んできていた。やばい!!そう思った瞬間、「イノセントガン、ドームシールド!!」桜がいつの間にか俺の前で二人を包む緑の球体のシールドを作り、俺たち二人は事なきことをえた。
「今のだってもっと危なかっただろ!!それをオペレーションしろよ!!」
インカムに向かって怒鳴る俺。
〈桜がお前を守るために動いていたことは分かっていた。〉
くっそー!!いちいち勘に触る奴!
〈新型機の最後の自爆装置位置特定。〉
何事もなかったかのように健人が言う。
俺はイライラしながら、戦場に戻った。・・・戦場で冷静な判断を失うことは一番いけない。それは分かっていた。でも・・・俺は怒りのままに飛んでいき、新型機の爆弾部分を避けて攻撃した。すでに残り最後の機体だった。直後、新型機は爆発した。俺は反射的に目をつぶって体の前で両手を組んで自分をかばった。けれど痛みどころか爆風も感じない。おそるおそる俺は目を開けた。桜の判断が早かったんだ。さっきと同様に、俺は守られていた。でも・・・俺の耳には、知佳さんの衝撃的な指示が聞こえた。
〈負傷者三名。栄喜・悟(さとる)・香(か)蓮(れん)の三人です。いずれも命に別状はない模様。栄喜のとっさの判断で最悪の状況は免れました。サポート戦闘部隊の待機者は、至急救護機で三人を収容、応急手当をしてください。〉
栄喜が怪我をした・・・。俺の頭の中は真っ黒になった。その場から動けなくなった俺の耳に、俺の心を察したような栄喜の声がした。
「大丈夫。全員軽い怪我だ。お前が攻撃した場所は爆弾の位置じゃなかったし、自爆はいつされるか分からない。今回の怪我は全員の力不足。質問は?」
俺は答えられなかったけれど、心配そうに俺を見ている桜に向かってうなずくと一緒に栄喜が手当てを受けているはずの救護機へと向かった。
マスター室。
「ついに恐れていたことが起きたわね・・・・。」
頭を抱えながらマスターの春日が言った。
「大丈夫、大丈夫。今の戦闘服ならあの距離とあれくらいの自爆レベルでしかも一機なら死人は出ないって。」
マスターの目の前に置いてあるパソコンから、気楽そうな女の声がした。
「そういう問題じゃないでしょ!死なないまでも大怪我につながる可能性は十分にあった。全員の信頼関係が完璧に構築されていない今、そんなことが起きたら・・・・。」
「マスター、落ち着いてください。明だってそれくらい分かってるんですから。」
照が笑顔で春日の前に湯気の立っているマグカップを置いた。
「ありがとう、照。それで、明。この資料読んだんだけれど・・・・。」
春日はプリントアウトされた資料の束をパソコンに向かって見せた。表紙には、アース・ライトレベルアップ計画書と書かれている。
「完璧だと思うんだけれど、問題あった?」
「完璧だから問題なの。この資料、幸多に作らせたわね!?」
「それは記憶にございませんねぇ。」
春日は幸多を見た。幸多は何も言わない。
春日はため息をつくとコーヒーに手を伸ばした。
「ため息の仕方が年を感じさせるね。おねぇは大変だねー。」
「明、今から大変なのはあなたよ。分かってる?」
「そうだねぇ、大変かどうかは分からないけれど、教官なんてメンドクサイことは確かだね。戦場に出るのは幸多と照がいれば問題ないけど。」
「・・・何度も確認して悪いけれど、戻ってこないという選択肢もあるのよ。政府には私から・・・・・。」
「だから、自分で戻るって決めたんだって。おねぇ、心配しすぎ。計画書はともかく、今のアース・ライトのメンバーのプロフィールと顔、それに各部署の上位二十人くらいは特徴と分析、さらには今の新人類の戦い方と今までの戦いの記録もちゃんと頭に入ってるから大丈夫。ただ、教官をあたしに任せる以上、あたしのやり方でやらせてもらうよ。」
「それはそのつもり。ただし、やりすぎないこと。幸多と照がついているから大丈夫だとは思うけれど、まさか訓練で大怪我をさせるわけにはいかないからね。」
「悪いけれどそれは約束できない。訓練をなめてかかってくる奴は戦場で確実に死ぬ。それなら訓練で大怪我して戦場に出ない方がよっぽどマシ。」
「・・・この資料は一応政府に提出するわ。どうせこの資料の通り訓練する気なんてないんだろうから、どういう方法をとるかは戻ってきてからじっくり聞かせてもらうから。たった今怪我人が出てしまったから、予定を早めてできれば明日には戦場復帰してほしいんだけれど・・・。」
「あたしはいつでも戦場に出られるようにしてるけど?」
「そうね。悪かった。言葉を変える。今日メンバーに新しい計画を発表するから、明日には本部に戻ってほしい。良い?」
「幸多ぁ~荷物取りに来てぇ~。重たくて運べな~い。」
春日の質問に答えず、明が言った。しかしその言葉が何を意味するか部屋にいる全員が分かっていた。無言で立ち上がる幸多。
「幸多、わがままな妹で本当に申し訳ないわね。」
春日が幸多に言った。
「全部知ったうえで真剣にお付き合いさせていただいているんです。問題ありません。」
そう言いながら幸多は部屋を出ていった。
「あーあ。本当におねぇが一番大変だと思うけどね。」
明がそう言うと、パソコンの通信が切れた。
「ごめん・・・・・。」
救護機の中で手当てを受けた三人に、うつむいて俺は言った。
智もすぐに駆けつけて、栄喜のそばにいた。
「さっきも言っただろ?お前が間違った攻撃をしたわけじゃない。それに全員かすり傷程度。」
栄喜が言った。ほかの二人もうなずいてくれた。だけど、この戦闘服を着て怪我人が出るのは今回が初めて。つまり、戦争が再開されてから怪我人が出たのは初めてなんだ。それだけの衝撃が三人にはあったはずだ。
「あれは最後の一機だった。誰が攻撃していても、結果は同じだった。いや、むしろ攻撃したのがお前で良かった。お前にはすぐに防御ができるよう、桜が自己判断でいつも動ける距離にいる。桜の防御力はかなり強い。だから二人ともなんともなかったし、俺もとっさに爆風を押し返せたおかげで近くにいた二人ともかすり傷ですんだ。もし、おまえ以外が攻撃をしていてとっさに反応できていなかったら、もっと大きな怪我になっていたかもしれない。質問は?」
栄喜は淡々としているようで、いつも俺の気持ちを汲んでくれる。俺は黙って首を横に振ろうとしたけど・・・
「三人とも、無事か!?」
健人が救護機に飛び込んできた。戦闘服のまま走ってきている。相当急いできたのが分かった。俺はびっくりした。健人が飛び込んできたのにもびっくりしたけれど、健人の戦闘服には赤・青・緑の三色の色がついていたんだ。健人とは所属部署が違う上に、仲が良いわけでもない。むしろ悪い。廊下でたまにすれ違うことや食堂で見かけることはあっても、戦闘服を見るのは初めてだった。健人は三色のイノセントを使えるんだ・・・。
「三人ともただのかすり傷だよ。」
栄喜が言った。
健人は一瞬ほっとしたような顔をしたが、すぐに俺を睨み付けた。
「お前のせいだ。」
「なっ・・・!!お前のオペレーターの通り、自爆装置を攻撃しなかったじゃないか!!」
俺は本当は自分が悪いと思っていたけれど、元々健人に腹を立てていたせいもあって、栄喜の言ったそのままに言い返した。すると健人が俺の胸ぐらをつかんだ。
「俺は周りを見て戦えと言った!!あれだけ戦闘部隊が近くにいたら、自爆するのは明白だ!!」
「だ・・・だったら、お前が周りの戦闘部隊を退避させればよかったじゃないか!」
「そんな時間はなかった!そんな時のために、戦闘部隊は自己判断で行動したり連携をとったりする権利を与えられているはずだ!!」
「最前線で戦っている最中に、周りなんか見れねーって言ってんだろ!」
「そんなの言い訳だ。現に栄喜や桜はいつも周りを見て戦っている。今回、怪我人が出たのは初めてだ。いつも冷静に判断せず突っ走って戦うお前の責任だ!」
俺は何も言い返せなくなった。・・・たぶん健人の言っていることは正しい。
「ちょっと・・・二人ともやめ・・・・・」
「いや、お前の責任だ。健人。」
智が俺たちの間に入ろうとした時、救護機の外から声がした。健人の手が俺から離れる。それと同じタイミングで救護機の中に幸多さんが入ってきた。
「ちょうど通りかかったら声が聞こえた。もう一度言う。今回怪我人が出たのは健人、お前の責任だ。」
俺たち戦闘部隊が幸多さんの声を聞くことは滅多にない。それもただ立ってしゃべっているだけなのに怖さがいつもより倍増(ばいぞう)している気がする。それを皆感じているのか、全員が緊張して固まっていた。
「戦闘隊員の実力に戦い方と性格、そしてサポート隊員がどれだけの機体を動かせてどこまでどんなサポートできるか分析・把握をしてオペレーションをするのが当たり前だ。健人、お前はさっき泉に突っ走って戦うと言った。それが泉の戦い方だと分かっていた。それにもかかわらず怪我人が出たのは、明らかにお前のミスだ。泉が最後の新型機に向かった時点で他の戦闘員に退避の指示を出し、桜には防御の指示を出していたら、怪我人は出ていなかった。そもそも、戦闘員を安心させて落ち着かせ、長所を生かした戦いをさせるオペレーションをすることは最も基本的なことだ。」
「・・・・申し訳ありません・・・・・。」
健人がうつむいた。幸多さんの言っていることは分かる。でも、そんな難しいことを健人は求められているんだ。幸多さんの静かな怖さもあって、俺もうつむいた。
「謝る暇があったらさっさと戻って報告書を書け。」
そう言いながら幸多さんは出ていった。健人もうつむいて俺たち全員に頭を下げると出ていった。俺は健人に謝らなければいけないと思ったけれど、何も言えなかった。
「幸多さんは特別、分析・研究部隊に厳しいんだよ。それに幸多さんはすべてのレジェントでまさに完璧。だけど俺たちにできないレベルのことは決して言わない。健人もそれは十分に分かってるはず。俺たちもそろそろ行こう。手当てはとっくに終わってる。それにしても幸多さん、何処に行ったんだろうな!」
栄喜が明るく言いながら立ち上がった。俺と智と桜は、栄喜について外に出た。うつむいて歩く俺に、栄喜が肩にぽんっと手を置いてきて、耳元で「後で健人にはフォロー入れておくから心配するな。」と言ってくれた。栄喜の手が暖かかった。そして、俺はもっと強くなりたいと心から思った。
幸多はアース・ライトの本部近くの森の中に入っていた。この森は、レジェント以下の隊員は立ち入り禁止になっている。機械を降りて少し歩くと、古くてさびれているが、けっこうな大きさの神社が現れた。神社の前でかなり巨大な鳥が、くつろいでいる様子で座っている。
「よぅ。ぽっぽ。」
幸多は鳥に向かって言った。鳥は動かないまま鳴いて答えた。神社の中に入っていく幸多。神社の中は、部屋になっていて色んなもので散らかっている。真ん中に布団が敷いてあり、パソコン数台に何枚もの紙、色鉛筆に布にマネキンとまったく整理整頓ができていない。そんな部屋の隅で、明が作業をしていた。
「荷物取りに来たけど。」
幸多が声をかけると、びっくりしたように明が顔を上げた。
「わっ。集中してたから、まったく気が付かなかった。ごめん、わざわざ。ただ来てほしかっただけっていうのもあるんだけれどね。」
「問題ない。こっちも来たくて来たんだ。」
そう言うと幸多は空いているスペースに座った。
「明日までに終わらせたいことがあるんだろ。待ってるから続けろよ。」
「ありがとう。幸多。」
明は作業に戻ったが、幸多が来たことで喜んでいるのが分かる。
「ねぇ、幸多。」
「何?」
「あたしが戻るの、嬉しい?」
「嬉しいに決まってる。毎日一緒にいられるんだから。だけど、素直に喜べない。」
「なんで?」
「お前を戦場の最前線に出すのが嫌だからに決まってるだろ。それに、お前は俺以上にハイパーに対して厳しい訓練をするつもりでいる。それは春日さんと比較されることでもあり誰より嫌われることも意味する。」
「別にハイパーのガキ達に嫌われようがいいもーん。あ、あたし自分の部屋より幸多の所で寝ることが多いと思うから、準備しといてね。」
「問題ない。もうしてる。」
「さっすが幸多!大好き!」
明が手を止めて幸多に飛びついた。
「明、本当に本部に戻ることを選ぶのか?」
幸多は明を受け止めると、明の目を見て真剣に聞いた。
「そうだよ。いくら戦闘服が進化しても、武器が進化しても、今の隊員じゃ陥落するのは時間の問題でしょ。あたしがそれを黙って見ているような人間じゃないことは、幸多が一番知ってると思うけど・・・。」
「俺と照がいる。それに春日さんだって。」
「その三人が大切だから戻るんじゃん。・・・今は、暖かい白のおねぇのイノセントより、あたしの黒い闇のイノセントの方が必要。でしょ?」
明が真剣な目をして幸多の目を見た。幸多はそれ以上何も言わず、明を抱きしめた。
今、俺達四人はトレーニングルームにいる。夕方は大体トレーニングしているんだ。トレーニングルームにも種類があって、置いてある器具や広さなど用途別に分かれている。戦闘訓練用のトレーニングルームで栄喜と戦ってトレーニングすることもあるけど、今日は栄喜が怪我をしてしまったし、筋トレや機械のシミュレーションの器具が置いてある部屋で栄喜に分析してもらいながらトレーニングをしている。
俺はとにかく力のトレーニング。もっと強くならないと新人類を倒せない。智は、機械のシミュレーション。桜は反射神経を鍛える機械でトレーニングをしている。栄喜は俺のトレーニングを小さなパソコンの画面を空中でタッチして操作しながら見ている。大体いつもと同じパターンだ。で、大体智が一番に機械の操縦が上手くいかなくてイライラするんだけれど、今日は違った。突然インカムから、マスターからのハイパー隊員全員の招集がかかった。場所は大会議室。本部で一番広い会議室だ。ノーマル部隊も通信で聞くように指示が出ているからよほどのことなのかもしれない。
俺は正直怖かった。もしかしたら、今日怪我人が出たことについてかもしれないから。でも、三人は何も言わずに一緒に行ってくれた。
俺たちが会議室についたときには、もうかなりの人数が集まって入り口が混雑していた。部隊は関係なくハイパー隊員全員だから、かなりの人数だ。そんな中、入り口近くに照さんがいた。智がすぐに頭を下げる。
「やぁ。全部隊の上位20人は、一番前の席に座って。部隊の場所は関係ないから、四人一緒で構わないよ。」
照さんが笑顔で言った。照さんの笑顔は、智のいうところのまさに素晴らしく輝く笑顔だ。照さんに笑顔で言われると、絶対に大丈夫って思えるくらい、安心できる。そんな照さんが、俺の所にさりげなく近づいてきた。
「今日の怪我のことじゃないから、心配しなくて大丈夫。むしろ、泉には一番嬉しいニュースだと思うよ。」
耳元で照さんがささやいた。そして笑顔で戻っていった。
俺たちは一番前の、真ん中辺りに座った。なんの話か分からないから、みんな警戒して真ん中が開いていたんだ。
「・・・照さんって、なんかすごいな。」
「そうなのよ。照さんって、普段目立たないように見えるけれど、なんだかすごいのよ。レジェントの称号はだてじゃないって感じ。」
俺のつぶやきに智がうなずきながら答えた。
そんなことを言っている間にもどんどん人が入ってくる。ハイパーだけで、こんなに人数がいたんだ・・・。栄喜と智、桜以外とはあまり関わらない俺は知らなかった。栄喜と智は人付き合いが良い方だし、そもそも栄喜は掛け持ちで智はサポート部隊だからあまり驚いていない。桜はたぶん知っていたんだろうけど、人見知りのせいもあっておどおどしている。珍しくて周りを観察していた俺は、健人の姿を見つけた。そして偶然にも目が合ってしまった。いつもの俺だったら、嫌味ったらしく思いっきり顔をそむけていただろうけど、今日のことがあってなんだかどうしていいか分からなくて、俺は下を向いた。
時間になった。会議室の前の扉が開いて、マスターの春日さんと幸多さんが入ってきた。幸多さんは照さんと反対側で俺たちから見てマスターの左側に座った。マスターは立ったまま話し始めた。
「今日、全員を集めたのは、世界政府から新しい通達があったことについてです。」
マスターは全体を見渡した。
「政府から、今のアース・ライトは以前と比べてかなり全体のレベルが落ちているため、対策をとるようにと通達がありました。アース・ライトのレベルが落ちているのは事実です。しかし、新人類の攻撃機は、日に日に進化します。政府からの指示があったのも事実ですが、私と幸多と照の三人で何度も話し合った結果、特別訓練の教官として、そして戦闘の最前線に、私の妹・・・明に本部に戻ってきてもらうことになりました。」
俺の胸がいきなり高鳴った。憧れの、戦闘レジェントの明さんが復活する・・・!?
「皆さんも知っていると思いますが、明は戦闘レジェントです。そして、これは実際に見る前に話しておいた方が良いという幸多の判断で、少しだけ明の説明をします。明のことはかなり色々な憶測が流れていることは知っていますが、どれも真実に近いものは聞いたことがありません。まず死亡説はもってのほか、そして復帰できないほどの大怪我も追っていません。私との不仲は見る人にもよると思いますが、決して仲の悪い関係だとは思っていません。明がアース・ライトを離れたのは、休戦になってしばらくしてから、他にやりたいことをみつけたからです。戦争が再開されてから今まで戻ってこなかったのも、そのためです。」
俺はマスターの一言一言を聞き逃さないように聞いた。明さんのことだったら、なんでも知りたい!
「・・・今から話すことは、皆さんが見たときの驚きを軽減させるために話します。まずイノセントの色のことは皆さんご存知だと思います。ここにいるほとんどの方は、イノセントの色は六色だと思っているでしょう。しかし、私と明は相反する七色のイノセントを使えます。私は白、そして明は黒です。白と黒のイノセントは私たち姉妹以外に例がないので、今までレジェントと当時を知る人しか知りませんでした。しかし明が戻ってくる以上、黒いイノセントを必ず見ることになります。」
黒いイノセントだって!?マスターと相反するってどういうことだ!?
「そして特別訓練ですが、これは明が組んだプログラムに沿って明が行います。訓練には必ず幸多が同席します。照にも、場合によっては同席してもらいます。主に戦闘部隊のハイパー上位20人を対象にしたものですが、一番初めの訓練時は全部隊の上位20人に来てほしいとのことです。・・・あまりこんなことは言いたくありませんが、明の訓練は厳しいのレベルをはるかに超えるでしょう。怪我人が出ることも多々あるでしょうし、急激な順位変動もあるでしょう。アース・ライトを去る人も出てくるかもしれません。それを踏まえたうえで、対象者には訓練に臨んでほしいと思います。これが、アース・ライト全体のレベルを上げるために、私が出した結論です。明日から明は復帰する予定です。もし明日以降新人類の攻撃機が来たら、一番初めはいつものポジションではなく、攻撃部隊・サポート攻撃部隊のハイパー上位20人はシールド内でしっかりと明の戦闘を見て聞いてください。分析・研究部隊とその他の方々は、画面上ですが同じくよく見て聞いてください。明は直接教えることより、自分たちで学び取ることを望んでいます。最初以降の戦闘は、全て明達レジェントに任せ、皆さんが訓練に集中できるようにします。そのため警報も最初しか出さないので、戦闘区域には出ないようにしてください。以上です。詳しいことはまた各自に連絡します。では今日はゆっくり休んでください。」
マスターは俺たちに一礼すると、会議室を後にした。続いて幸多さんも出ていく。そして照さんが前に立った。
「じゃあ、今日はこれで解散な。あっ、俺から一つアドバイスを言っておくとすれば・・・。」
全員が照さんにくぎ付けになる。
「明は幸多の彼女だから、男連中は手を出したらダメだぞ!」
照さんがニッコリと笑って親指を立てながら言った。そして唖然とする俺たちを残して、会議室から出ていった。途端にざわめき始める会議室。当たり前だ!なんたって、戦闘レジェントが復活するんだから!!この目で見られる上に、特別訓練まで受けられる!!これは、確実に俺の夢へと近づくことに間違いない!!俺も含めて皆が大興奮する中、ふと健人を見ると、健人はなぜか青ざめていて一人会議室を去ろうとしていた。理由が知りたかったけど、俺たちはそんな仲じゃない。それどころか犬猿の仲だ。だけど・・・やっぱり今日のことは謝らないといけないと思っていた。明さんのことで大興奮はしているけど、健人の一人青ざめた顔を見たら、なんとなく謝りに行こうと思った。
「ごめん、俺、ちょっと行ってくる!」
三人にそれだけ言うと、俺は健人を追いかけた。人が多くてなかなか追いつけなかったけれど、入り口を出て少ししたところで追いついた。なぜか健人は、人気のない道を行こうとしていたのだ。
「あの・・・健人・・・・・。」
俺は健人を呼び止めた。
健人は黙って振り返った。やっぱりどこか顔色が悪い。
「今日のことは栄喜からメールをもらった。もし今日のことだったら謝る必要はない。幸多さんの言っていた通り、全て俺のミス。俺の責任だ。申し訳なかった。・・・よかったな、特別訓練。じゃあな。」
「あ・・・ちょっと・・。」
健人は早足で去って行った。俺は一人残された。
「今はそっとしておいてやろう。」
いつの間にか、栄喜が隣に立っていた。
「ああぁぁ~!!特別訓練!何するんだろう!?楽しみすぎて絶対ねられねぇ!」
慌ただしく晩御飯を食べて、風呂にも入った俺たち四人は俺と栄喜の部屋にいた。俺と栄喜は相部屋だ。ちなみに智と桜も相部屋。アース・ライトでは、男女の部屋を行き来しても特に問題はないし恋愛も自由。でも一応、周りに特別逸脱した行為として見られることを行うことは禁止されているけれど、俺たちにそんな事もないから夜は大体この部屋で集まっている。
宇宙平和管理局の決まりで、夜の戦闘は禁止されているから、この時間になると新人類が攻撃してくることもない。宇宙平和管理局っていうのはこれまたえらい宇宙人たちの集まる平和についての団体としか言いようがない。戦争自体は元々俺たち地球人の事だから介入はされていないけれど、戦闘区域を定めているのと夜の戦闘を禁止してくれたのはありがたい。なんせ新人類達の住む星には昼と夜がないらしいから。太陽の光があたらないから、ずっと人工の明かりがついているって習ったような・・・。地球も場所によって昼と夜は違うけれど、今は本部のここだけが戦闘区域だから、ここが基準になる。そんな事より!明日からのことを考えると興奮しすぎて俺はさっきからずっとベットの上をゴロゴロと暴れている。
「あー、もう!こいつはどうにかならないかね。」
そう言いながら智もニコニコしている。智は対象者じゃないけれど、最初の訓練は出られるから楽しみなんだ、きっと。
栄喜もそれなりに楽しみなのが伝わってくる。でも桜だけが不安そうな顔をしていた。
「なんだよ、桜。お前も立派な対象者じゃんか。」
「だから不安なんだよ・・・。だって、マスターの言葉・・・厳しいレベルじゃないって・・・私、耐えられるかな・・・。」
「始まる前から何言ってるんだよ。俺たちは今現役で戦闘に出ている。いつだって命がけじゃんか。」
俺の言葉に、桜は黙ってうなずいた。桜は昔からいつもこうだ。実力があるのに、臆病で自信がない。
消灯の時間がきて、智と桜の二人は自分の部屋に帰って行った。栄喜も二段ベットの上に上がって、電気を消した。
俺は横になって目をつぶってみたけれど、興奮してやっぱり寝られない。でも寝ないと、明日にさしつかえる。それだけは避けたい。俺はなんとか別のことを考えようとした。でも、そしたらやっぱり今日の戦闘のことが頭に浮かんできた。そして健人の青ざめた顔。
「そんなに楽しみで眠れないか?」
上から栄喜の声がした。
「悪い。俺のせいで寝られないか?」
「いや、俺は考え事しててな。」
「何を?」
「イノセントの色の事。マスターの言っていた、黒と白のことだよ。」
「あぁ、二人しか例のないイノセント!どんなものか楽しみだよな!」
「そう。楽しみだ。ただ、俺は研究者としてな。」
「研究者として・・・。」
「俺はお前と違って、分析・研究レジェントになりたいからな。どんな戦いをするかより、どうやってイノセントを使うかとか、そもそものイノセントの色の特徴とか、そっちに関心があるんだ。質問は?」
「・・・・イノセントの色・・・・あっ!!」
「何?」
「・・・健人ってさ、三色のイノセントを使えるんだな。」
「あぁ、そうだな。悔しいか?でも、分析・研究部隊ではそんなに珍しいことじゃないぞ。むしろ二色の俺がハイパーナンバー1なのが不思議なくらいだ。」
「今は・・・悔しさより・・・なんだか分からないけれど、モヤモヤする。」
「お前、幸多さんの説教を初めて聞いたからな。」
「それだけじゃないんだよ・・・なんていうか、今日の発表の後の健人はなんだかおかしかった。それに、健人は幸多さんの説教を初めて受けたわけじゃないんだろ?」
「心配なのか?喧嘩するほど仲が良い?」
「違う!でも・・・。」
「お前は意外と優しいからなー。」
「だからそんなんじゃ・・・!!」
「内緒話しようか。絶対外には秘密の話。もちろん智と桜にも。」
「うん。」
俺と栄喜は、眠れないときこうやってよく話す。内緒話も、この一年間で数えきれないくらいしてきた。だからお互いの信頼関係は固い。
「健人はな、元々戦闘部隊の希望者だったらしいんだよ。」
「えっ・・・?でも、あいつが戦闘部隊の試験を受けているところなんて・・・。」
「受けさせてもらえないらしいんだよ。理由はなんでか分からないけれどな。」
「マスターに?でも、マスターは個人の意見をいつでも尊重してくれるじゃないか。」
「そう。だから、よほどの理由があるんだろうな。きっと。だけど、少しでも戦闘の役に立ちたいからって、健人はオペレーションを重点的に活動することにしたらしいんだよ。分析・研究部隊は研究の成果も順位に関係してくるから、分析を中心とするオペレーションを基盤にしている健人の順位は意外と低いだろ?」
「・・・・。」
「けれど、分析や研究に順位は関係ないって幸多さんはいつも言ってる。きっと幸多さんは俺たちの知らない健人の想いを知っていると思う。健人だけじゃなくて、皆のことも。だからこそ、厳しく説教する。そうやって、分析・研究部隊は成長してきたんだ。質問は?」
「ない・・・。」
「ここからはあくまでも俺の推測なんだけど・・・。健人は、俺たちが入隊する前からアース・ライトのメンバーだった気がするんだ。」
「俺たちより前?でも、健人は俺たちと同じ年じゃないか。俺たちは入隊できる十四歳になったすぐの段階で入隊が決まったんだから、そんなはず・・・。」
「そう。だから推測。断定する要素は少なすぎる。」
「・・・・・・・。」
「じゃあ、そろそろ真剣に寝るか。おやすみ。」
「・・・おやすみ。」
こうして俺たちはいつもより長い気がする一日を終え、眠りについた。
「あぁぁ~!楽しみ!でも、緊張してきた・・・!」
いつものように四人で朝食を食べていたけれど、俺は興奮を抑えきれなかった。
だけどそれは俺だけじゃないみたい。食堂が、いつもより一段と騒がしい。食堂を出てからも、あちこちで今日のことを話している声が聞こえた。
「なぁ!俺たち、今日もし戦闘があったら、シールド内だったら見る場所はどこでもいいんだろ!?一番良い場所はどこだ!?真っ先に確保しないと、他の奴にとられっちまう!」
俺は興奮しながら栄喜に聞いた。ここは一番頭の良い栄喜に判断してもらうのが良い!
「そうだなぁ。ジェットを使って飛びながら見るのは体力を使うし、集中力もいる。だけど地上からじゃ中心で見ても、高い所で戦われたらアイガードがあっても一番良いとは言えない・・・だったら、いっそ屋上はどうだ?」
「屋上!それが良い!屋上のど真ん中で見ようぜ!!」
「あの・・・・戦闘は、見世物じゃないんだよ・・・。楽しみじゃないって言ったら嘘になるけれど・・・・戦争を楽しむのは・・・・違うと思う。」
俺と栄喜、智は驚いて桜を見た。桜が俺たちの間に入ってくるなんて、ましてや否定的なことを言ったのは初めてだったから。桜は下を向いている。
「・・・・ごめんなさい!」
黙っている俺たちに向かって、泣きそうになりながら桜が言った。
「うおりゃー!!」
智が笑顔で桜を抱きしめた。
「なんで謝るのよ。桜は何も間違ったことは言っていない。むしろ、私たち、興奮しすぎて大切なことを忘れてたね。こっちこそごめんね、桜の気持ちにちゃんと気が付かなくて。」
桜は智の肩に顔を隠してうなずいた。俺と栄喜も顔を合わせてちょっとばつがわるそうにうなずいた。
俺たち四人はとりあえず屋上に上がってみた。すると、何人かハイパー隊員と思われる奴らがいた。考えることは皆同じってやつか・・・。でも真ん中の方には誰もいない。一番目立つところには、皆いつも行きたがらない。俺には不思議だ。俺は夢を叶えるためなら、どんどん前に出たいけどなぁ・・・って思うけど。
場所を決めた俺たちは、屋上から出ていこうとした。ちょうどその時。
〈新人類の機体接近・新人類の機体接近・隊員は直ちにイノセントアームを起動させ持ち場に待機してください。繰り返します・・・・・・・〉
「うわっ、すごいタイミング!」
俺は高鳴る胸をおさえてイノセントアームを握りしめた。
「お前といるようになってから、いつもなんかタイミングがよくなった気がするよ。」
栄喜も珍しく少し笑っている。
「イノセントアーム・セット!!」
俺たち四人はイノセントアームをセットして、屋上の真ん中ギリギリまで前に出た。
〈新人類機体・裸眼で確認できるまで残り三分です。衛星がたまたま捉えて、早めに確認できました。旧式戦闘機二台に新型戦闘機四台が確認できています。マスター、指示をお願いします。〉
〈レジェント戦闘隊員、明に出動命令。他の出動メンバーは明に任せます。新型戦闘機の爆弾を、安全に研究できるよう取り出し回収。新型戦闘機もできるだけ原型をとどめたまま撃破、回収。十分以内に。二分後に本部より十メートルにシールド。以上。〉
「なっ・・・!!命令が無茶すぎる!!」
栄喜が思わず叫んだ。そう思ったのは栄喜だけじゃないし、あちこちで驚きの声が上がっている。俺だってそう思う。戦闘機六台を撃破するだけでも難しいのに、あんな命令・・・。でも・・・俺たちが今から見るのはレジェント戦闘員・・・・。
〈あたしは幸多のオペレーションしか受けない。あとサポートは照だけで十分。他の奴らは、はっきり言って邪魔。二分以内には本部前に到着。〉
女の人の声が聞こえた。物凄くとげがある声と言い方。それにこれだけの任務を、オペレーターに戦闘員一人とサポート一人で行おうとしている。もうマスターも明さんも無茶苦茶だ。
〈俺ならとっくに準備してる。問題ない。〉
〈肯定しました。こちらも準備完了です。〉
幸多さんと照さんの声が続けて聞こえる。全く動じていない様子のこの二人も相当だ。・・・レジェントが三人そろった戦いが始まる・・・。
「あれ・・・!!」
智が森の方を指さした。その方を見た俺たち三人はさらなる衝撃を受けた。巨大な鳥に立ったまま乗った女の人が、すごいスピードで向かってきた。俺たちは目が釘づけになった。金色でリボンが横についているひざ上のドレスに、ピンクの前に大きなリボンがついたケープ。銀色のウエーブがかかった髪を高い位置に結んでいる。結び目にも金のリボン。でも、顔はあの真面目なマスターに似ている。ただ優しい目つきのマスターと正反対的な・・・きつい目をしている。
「栄喜、なんだよあのでかい鳥!!」
突っ込みどころが多すぎるけれど、とりあえず初めて見る生き物に俺はおもわず栄喜に向かって叫んだ。
「・・・分からない!調べている暇もない!」
栄喜の大きな声が返ってきた。
明さんらしき女の人は、いや正確には明さんを乗せた鳥は屋上より高い位置のシールドが張られるはるか向こうで止まった。
〈到着まで残り一分半。照、出てくれ。〉
〈肯定しました。〉
本部から、小型の戦艦のような、それも今まで見た中で一番でかい初めて見るロボが飛び出した。
「あれ・・・!回収からサポートから救護からとにかく全部が搭載された、ハイパーは誰も扱うどころか動かすこともできないロボだよ!!動いているところなんて、初めて見た!!」
智の解説と驚きの声が聞こえる。俺は明さんの後姿を見つめていた。
〈シールド、張ります。〉
知佳さんの声と同時に、俺たちの目の前に透明のシールドが張られた。
突然、明さんが振り返った。物凄い笑顔だ。でもその笑顔はマスターと違ってどこか怖い感じがする。
〈こーうたー!見えてるー?どうー?今日のために作ったドレスー!かーわーいーいー?〉
えっ・・・?明さんは戦闘一分前なのにまだイノセントアームを使用していないうえ、戦闘とは全く関係ないことを・・・。
〈スカートが短い。〉
幸多さんも幸多さんで普通に答えてる・・・。
明さんは第二研究所の窓の方に向けてベーっと下を出すと、また後ろを向いた。
〈あ、おねぇ、さっきの命令一つ気に食わないんだけど。十分以内ってさぁ・・・。〉
〈明、ここではマスターと呼びなさい。〉
マスターの声、聞き比べると明さんと似ている。でも、マスターの声にはとげがない感じがする・・・。いやいや、声じゃなくて、そうだよな、十分なんていくらなんでも・・・。
〈それはすみませんね!!マスター様、十分以内なんて、あたしの事なめてるの?〉
えっ・・・・。まだ戦闘が始まってもいないのに、俺たちには驚愕が多すぎるのに、さらに驚愕を与えてくる。
〈様は余計。旧型機一分、新型機二分の計算なんだけれど。〉
〈旧型機は原型残さなくていいんでしょ。だったら五分で十分(じゅうぶん)。〉
〈わかった。好きにして。〉
〈ふんっ!!イノセントアーム・セット!〉
明さんの周りを黒い光が包み込んだ。光が消えたとき、俺たちはまた驚かされた。明さんの戦闘服は俺たちと全く違った。いや、その前に戦闘服に見えない。黒い長袖に前は短い浴衣のようなデザインのワンピースのようだ。でもスカート部分はふんわりと広がっている。俺たちの戦闘服と同じ色の帯に後ろは大きなリボン。袖・襟・服の境目・・・って言えばいいのかな?あとスカートの下にも同じ色のフリル。服には黄色・ピンク・紫・青のバラと緑のとげの生えたツルが描かれていて、左胸には黄色でRの文字。黒いタイツには赤いバラが描かれている。あとは黒い手袋に靴に頭には黒いバラの大きな飾り。ヘルメットもアイガードもない。
「ど・・・どういうことだよ・・・。」
俺は、もう大きな声も出せないくらいだった。
「マスターとレジェントは、自分用の戦闘服を作れるんだ。だけど、あれが戦闘服なのか・・・?」
栄喜も同じことになっているようだ。智と桜に至っては、もう声すら出せていない。
そうこうしている間に、敵機が小さく見えた。
〈来たぞ。俺は新型の爆弾の位置を探す。〉
〈んじゃ、とりあえず旧式の二機を砕いとく。〉
でも明さんはその場から動かずに、腰にかけてある武器をとった。それは、俺たちが今までに見たことのない武器だった。小さな弓矢の形をしてる。
〈ぶっ飛べ。〉
明さんが二度その小さな弓矢を引いて手を離した。すると、小さな黒い球がアイガードでやっと見える速さで飛んでいき、まだ小さい敵機の方で二度爆発が起きた。
〈二弾とも旧式機に命中、旧式機は爆発。ついでに新型機全機の爆弾の位置も特定完了。オペレーターを開始する。〉
〈ぽっぽ、行くよ。ここからが本物の悪魔の見せ所だ。照、爆弾と機体の回収、ついでに状況に応じてあたしを乗っけるサポートよろしく。〉
〈肯定しました。〉
言い終わった瞬間、今までに見たことのないスピードで、明さんを乗せた鳥が敵機に向かって飛んでいった。続いて少し離れて照さんのサポートロボが飛ぶ。幸多さんの爆弾の特定も明さんの動きも照さんの反応も何もかもが早すぎる。
〈小型の追尾ミサイルが来るぞ。〉
〈はーい。イノセントガン、イエローアンドグリーンセット。〉
両手でイノセントガンを持って明さんが言った。右が黄色、左が緑に光る。二色同時だって!?
〈自爆してもらったら命令守れないからね。メンドクサイ。イノセントガン、発射。〉
ミサイルと新型機の間に黄色い壁が、ミサイルと明さんの間に緑の壁が出来た。緑の壁に当たってミサイルが爆発する。新型機が黄色い壁を突破した。それを待っていたかのように動く明さん(正確には鳥)。
〈一番最初に突破したやつの爆弾の位置は、真ん中の少し右下。〉
〈はーい。まず爆弾飛ばして縦切りいきまーす。照、よろしく。〉
〈肯定しました。〉
真ん中の少し右下・・・それだけ!?俺たちはいつも、爆弾の位置はオペレーターから送られてきた正確な位置がアイガードに映るようになっている。でも、明さんはアイガードをしていない・・・。明さんはいつの間にか左手にイノセントガン、右手にイノセントソードを持っている。イノセントガンは青、ソードは赤だ。明さんは突然ジャンプした。そして空中で半回転して、新型機の後ろに反対向きに落ちていく。
〈ここだな。ぶっ飛べ。〉
青い光がはなたれ、氷で固められた爆弾が飛び出した。俺たちが爆弾の位置を追う暇もなく、照さんが爆弾を回収した。何が起きたのか一瞬だったから分かりづらかったけれど、明さんは落ちる瞬間にイノセントガンを真ん中に付けると、ほんの少しずらした瞬間に爆弾の位置を見極めて見事に打ち抜いた。明さんは鳥に一旦着地し、また飛んだ。そして右手を縦に振ると、新型機は綺麗に縦に割れた。機体がバラバラに落ちていく寸前に、照さんの機械が今度は新型の機体を回収した。
〈新型機の爆弾と機体、一体目を無事回収しました。〉
〈了解。〉
〈照、離れて。〉
〈肯定しました。〉
新型機が三体集中して明さんを襲う。でも明さんはまったく動じていない。
〈ぽっぽ、次は下から行くよ。〉
明さんを乗せた鳥が一気に急降下した。追いかける新型機。
〈一番に追いかけている新型機の爆弾の位置は真ん中のかなり下。下からの方が近い。〉
〈ん。次は横切りでお願いしまーす。〉
〈肯定しました。〉
鳥が今度は急上昇した。一番最初に追いかけていた新型機と残り二体の新型機の間に入ると、いつの間にか黒く光っているソードを二体に向けて軽く振った。黒い風が吹き付け、新型機二台が離れた。その隙に一番に追いかけてきた新型機に向けて一気に距離を詰めると、新型機が動く暇も与えず、また爆弾だけを打ち抜いて、赤いソードで今度は横半分に機体を切った。それもすぐに照さんが回収。
〈新型機二台目の爆弾と機体も無事回収しました。〉
〈了解。〉
〈えーっと、次はあっち。右斜め切りでいくね。最後は左斜めに切る。〉
明さんが指をさしながら言った。
〈了解。爆弾の位置は・・・・。〉
もうそこからはほとんど会話も一緒で、動きも早すぎて説明も難しい。明さんは残りの二体をあっという間に片づけて、照さんは一つ残らず回収した。照さんに至っては、肯定しましたと無事回収しましたしか言っていない。
〈全新型機の爆弾と機体、無事に回収しました。〉
〈了解。お疲れ様。爆弾がつんであるから、第二研究所のコアシステムの方へ戻ってくれ。任務完了だ。〉
〈照、戻ったら、まずお風呂の準備しておいて。ぽっぽのブラシとシャンプーも忘れずにね。〉
〈どちらも肯定しました。〉
〈ちなみに最後の機体が回収された時点で四分五四秒。つまり五分以内。〉
〈ほらー。五分でよかったじゃん。思ったより新型機も大したことないね。一旦本部の屋上に降りて、そこから幸多の所に顔を出してお風呂行くね。上がったら一緒にランチしよ。良い?〉
〈問題ない。〉
見学していたハイパーは、誰も何も言えずただただ唖然としていた。そんな中、俺たちの頭上をドレス姿に戻った明さんを乗せた巨大な鳥が通過して、着地する音がした。
「明、お疲れ様。だけどいい加減、私生活で照に頼るのをやめなさい。」
マスターの声に驚いて俺たちはとっさに振り返った。マスターと明さんが向き合って立っている。いつの間に来たんだろう?マスターと明さんがちょうど重なって、二人の表情は見えない。巨大な鳥は明さんの隣で大人しくしている。
「何かにつけて説教するのもやめてくださーい。えーっと、この場合は、挨拶はただいまでいいのかな?」
「そうね。正式に本部に戻るんだから。おかえりなさい、明。」
「ただいま。おねぇ。」
「早速だけれど、昼食が終わったら幸多となるべく急いでマスター室に来て。特別訓練についてね。話し合うことが多いんだから、お風呂も長風呂しないこと。」
「妹使いが荒いなー。ケーキと紅茶、用意しておいてよ。」
そう言うと、明さんは鳥を引き連れて本部の中へと入って行った。俺たちはマスターと目が合った。マスターは俺たちに向けてほほ笑むと、本部の中へ戻って行った。顔や声は似ているけれど二人は全然違う。髪の色や髪型、服もそうだけれど・・・なんていうか、そう。まさにマスターの言っていた、相反するって感じ。
俺たちは誰も何も言えず、しばらくその場から動けなかった。
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