一進一退夫婦道

Emi 松原

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密葬でも許してくれる?

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まだ遠距離恋愛に至らぬ前の友人時代、いっとくさんから突然このようなLINEがきた。

「死んだら密葬でも許してくれる?」


許すもなにも、当時は今のように「夫婦」でもなければ「恋人」ですらなかった。

許さないと言ったら逆にどうしていたのだろうか。と、今だから思う。



ただ、そのくらいいっとくさんが自分の死について考え込んでいたのは分かった。

確かこのLINEがくる少し前の透析中、突然体が痙攣して声も出せず、ナースコールも押せなかったことがあり、意識はしっかりとあったようなので余計に恐怖を感じたのであろう。


とことん好きなように生き、死ぬときは大いに喚いて死んでいく。


普段からそう豪語していたいっとくさんが、時折私に見せる本音でもあったのだろうな、と今なら分かる。


多分本人は覚えていない気がするが。
後で聞いてみよう。



さて、なんとも暗い話になってしまった。

何故こんなことを思い出したかというと、ついこの間、夫婦二人分、2冊のエンディングノートを購入したのだ。

まだ記入はできていないが、なんともこれが便利で面白い。


私たちが買ったものは主にチェックシートになっていて、何かあった時の説明も必要なこともわかりやすく書いてあった。

おお! と思ったのは、SNSをどうしたいか、パソコンはどうして欲しいか、という項目まであったことだ。

今の時代、とても重要である。


死んだときのことなんて、と思う人もいるかもしれない。


だが考えてみて欲しい。


生きているうちになーんにも用意していなくて、突然何かしらで自分が死んだとき。

葬儀場で一晩中、「えみはこのゲームが好きだったよね」なんて言いながら流された曲が、会社とシリーズは同じだが自分の一番の推しゲームじゃなかったら。微妙に違ったら。そっちのシリーズじゃないんだとの声も届くわけなく。

いや、私は死んでるからわからないだろうが、なんだか複雑な気持ちになるではないか。


と、ふざけたことは置いておいて(これも大事なことだが)


入っている保険やら、ネット契約のパスワードやら、その他諸々本当に重要だ。


夫婦になったからには
「密葬でも許してくれる?」
レベルではない。


後はお葬式やお墓。これは問題だ。我が家の場合何が問題って宗教うんぬんより、そう、お金である。何を考えても金の問題が出てくるのである。
日々の生活で手一杯なのに、どちらかが死んだ後のお金をどうしろと……!! と本気で思った。


チェックシートのお葬式の項目のチェックリストで、できるだけ派手にして欲しい、というものがあった。
自分の葬式を祭り並みに派手にしたら面白いかな、なんて思う。花火なんかあげちゃったりして。
だがしかし、そんな葬式にしたら諭吉さんがどれだけ出ていくのか……!!

まず私の保険金は全て飛ぶであろう。いや、そんな葬式にしたら間違いなくマイナスだ。

といった具合に、夫婦・家族間でのこういう話し合いはとても重要だと考えている。
これは透析云々関係なく必要で大事なことだ。


ただ、透析をしていると、どうしても死が身近に感じるのだ。
2年後目標で夫婦間腎移植を目指していた我が家だが、来年、いっとくさんの心臓バイパスの手術を決断しなければならなくなった。

生きる為に頑張りながらも、死を見ないようにするわけにもいかず。

なんとも難儀なことである。


しかし、これも考え方次第だ。

もし「密葬でも許してくれる?」の時代だったら、結局私は何も知らずで終わっていたかもしれない。
それは逆もしかり。突然何かしらの理由で私が死んでいたら、どこまで連絡がまわるかなんて分からない。


つまり、一緒にエンディングノートを見たり、その後のことを話し合えるということは、結局幸せなことなのではないかと思うのだ。


自分の人生がどう終わるかなんてわからない。
考えだって状況だって日々変わっていく。
それでも、今、最後までこの人と生きたいと思いながら書き記せることは大事にしていきたい。



しっかし、希望する永代供養の場所がお高いなあ……と、やはり悩むのがお金のことなのがなんとも言えないのである。

いっそ、形も色も彫り物もこだわって、なんなら夜光るようなお墓を建ててみたいものだ。


そんな馬鹿なことを考えながら、秋の夜長は過ぎていくのであった。
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