かめ日和

Emi 松原

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さいかいはかめきち

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 どうも、かめです。
 いつもならゆっくりと寝ている時間なのに、気合いを入れて擬態した「ごしゅじんさま」に連れられて、近くの「こうえん」という場所に連れて行かれている最中のかめです。


 どうやらそこで、「ごしゅじんさま」は「しゅうくん」と「でぇと」をするそうだ。「こうえん」とはなんぞや。

 かめは、そこで、「しゅうくん」が「ごしゅじんさま」である、かめと仲良くなるように言われているのだが、なんせかめが、同じかめと会うのは、あの日「ごしゅじんさま」に出会った日以来である。

 しかし、「ごしゅじんさま」の動きがいつもと違うのは気のせいだろうか。それとも、これも擬態の一環なのだろうか。「すまほぉ」の奴も、今日は「ごしゅじんさま」の手の中にいない。まぁ、かめの水槽をもっているからだからなのだろうが。


「お、樹里亜―!!こっちこっちー!!」
「しゅ、秀くん!!」
 ん?「ごしゅじんさま」の声が、いつもと違う。なんぞや。「でぇと」とは、声まで擬態しないといけないものであるのだろうか。

 なんとも大変なものだ「でぇと」。

「お、その子がジェニファーだね。この子が、俺の相棒、亀吉!!」
「か、亀吉くん、こんにちは!!……って、え?もしかして、ジェニファーってオスだったの!?」
「えっ、うん。あ、もしかしてメスだと思ってた?かめの性別って判別難しいもんね。だからジェニファーなんだね」
「う、うん……」


 「ごしゅじんさま」、「しゅうくん」に隠しているが、かめは「ごしゅじんさま」が性別を見ていないことを覚えているぞ。まぁ、「なまえ」にこだわりはないし、何より、「ごしゅじんさま」がつけてくれた「じぇにふぁー」という「なまえ」を気に入っているから良いのだが。


「じゃあ、あっちの芝生の方に行く?そしたら二匹とも出せるからさ。縄張り意識で喧嘩しないと良いけどね」
「そっ、そうだねっ!!」

 ふむ、「ごしゅじんさま」は擬態を続けているのか。大変だなぁ。「でぇと」。

 そんなことを考えていると、「ごしゅじんさま」の手が伸びてきた。かめの甲羅を手慣れた様子で持つのは良いが、見知らぬところに出すのはやめて欲しい。

 かめはそのまま、柔らかい草の上に置かれた。ふむ、ふかふかだ。日も照っているし、なかなかに心地良い。
 これはお昼寝するのに最適だ。少し寝ようかな。
 そう思っていたかめなのだが、驚く声を聞いた。


(君は……)


 振り返ったかめは驚いた。向こうのかめも驚いている。

 忘れるはずがない。あの時。かめが「ごしゅじんさま」と出会った場所に一緒にいた、あの賢いかめ……。

 まさか、まさかまた会えるなんて……。


「あ、亀吉とジェニファーが向かい合ったよ。喧嘩もしなさそうだし、相性良いのかも」
「本当だ!!ジェニファー、秀くんのところの、亀吉くんだよ。仲良くするんだよ。もしかして、同じところ出身だから知り合いだったりするのかなぁ?」

 知り合いも何も、仲良くしていた賢いかめだ。賢いかめのご主人様は、「しゅうくん」になっていたのか。かめはびっくりだ。しかし、いつもの「ごしゅじんさま」の口調に戻っているが、擬態しなくて良いのだろうか。


(良いご主人様に巡り会えたんだね。良かった。僕も、とても良いご主人様と巡り会えたんだ。名前は亀吉になったんだよ。君は聞くところによると、ジェニファーになったんだね)
 賢いかめの言葉に、かめは笑顔になった。と言っても、ニンゲンから見たら変わっていないのかもしれないけれど。


 そうか、賢いかめは、「しゅうくん」が「ごしゅじんさま」で、「なまえ」は「かめきち」になったのか。ということは、「ごしゅじんさま」達のように、賢いかめも「なまえ」で呼んだ方が良いのだろうか。
(そうだねぇ、せっかく付けて貰えた名前だから。改めてよろしくね、ジェニファー)
 こちらこそ。よろしくだ。「かめきち」。

 かめは、「かめきち」と一緒に日を浴びる。あぁ、嬉しいな、穏やかだなぁ。



「それにしても、樹里亜が亀を飼うなんて意外だったな。SNSを見たときはびっくりした。だって、周りはみんな、もっと映えるって言われる可愛い動物を飼いたがってただろ?」
「うーん。前はそう思ってたけど、あの亀釣りを見たとき、すっごく亀が可愛く見えて。ジェニファーも、一目惚れだったの。確かにね、裏で言っている子もいるんだ。キモいとか。でも、私はジェニファーがやっぱり一番可愛く見えるんだ。だから、今までと変わらずSNSに上げるよ。最近はね、亀を飼っているユーザーさんとも繋がったの」
「女子って、そういうの大変そうだもんな。あ、俺も最近、亀好きの人と繋がっててさ。よければ共有しようぜ」
「良いの!?嬉しい!!あ、ジェニファーと亀吉くん、仲良く日を浴びてるね。写メとって上げたいけど……」
「ん?上げれば良いじゃん。俺も撮ろーっと」

 「しゅうくん」までも、「すまほぉ」を手に持っている。本当にお前は何者なんだ。「すまほぉ」よ。

「えっ……、あの、私と遊んでること、周りに知られても良いの……?」
「へっ……いや、あの、俺は勿論良いんだけれど……そっちは……?」
「も、勿論良いよ!!ジェニファー、亀吉くん、撮らせてねー」


 おお。「ごしゅじんさま」の「すまほぉ」、来ていたのか。そうだよな。「すまほぉ」がいなかったことはないもんな。


(ふふっ、ご主人様達も、良い感じだね)
 良い感じとはどういうことか分からないが、「ごしゅじんさま」は「しゅうくん」に「かたおもい」だ。「かたおもい」が何か分からないが、「かめきち」なら知っているかもしれない。
(あれは、もう両思いだと思うな)
 「りょうおもい」……?さすが「かめきち」。かめの分からない言葉を知っている。まぁ良い。今は「かめきち」と一緒にこの時間をのんびりしよう。




かめの学び


 「しゅうくん」が「ごしゅじんさま」のかめは、あの賢いかめ

 「なまえ」は「かめきち」

 「ごしゅじんさま」と「しゅうくん」は「りょうおもい」
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