かめ日和

Emi 松原

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ふくそうとかみがた

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「ええええええ!?」


どうも、かめです。たった今、「ごしゅじんさま」の大きな声で起こされた、かめです。
せっかく気持ちよく寝ていたのに。

「ごしゅじんさま」は、「すまほぉ」を握りしめて固まっているが、どうしたのだろうか。
「すまほぉ」の奴とは会話ができないから、何があったのか分からないが、かめはまだ眠い。もう少し寝よう。


「じぇ、ジェニファー!!どうしよう!?」
 「ごしゅじんさま」に「なまえ」を呼ばれて、かめは寝ようとしたのに起こされてしまった。

 しかし、「ごしゅじんさま」は何をそんなに取り乱しているのだろう。もっと、かめのように、ゆっくりとお昼寝すれば良いのに。


「ジェニファー!!あのね、秀くんがね、ジェニファーと秀くんのところのかめちゃんを会わせてみないかって。同じかめ釣りでお互い出会ったから、同じ種類で性別も同じだろうからって。こ、これってもしかして、デート!?」

 「ごしゅじんさま」が大興奮しているが、「でぇと」とはなんぞや。

 しかも、かめも連れて行かれるのか。できれば寝かせて欲しいのだが。


「えっ!?何着ていけば良いの!?うわーん、いつも制服でしか会ってないから、秀くんの好みわかんない!!」
 「ごしゅじんさま」が慌てて「すまほぉ」を叩いている。痛くないのか、「すまほぉ」よ。

 だが、かめはいつも見てて思う。「ごしゅじんさま」達は、「ふくそう」というものを気にするのだ。
 多分、かめの甲羅と同じようなものなのだろうが、かめの甲羅は変える必要はない。
 「ごしゅじんさま」は学校に行く時の「ふくそう」があるし、「まこ」と遊びに行くときはいつも違う「ふくそう」をしているし、寝床にいるときも違う。

 ふむ、きっと「ふくそう」とは、「ごしゅじんさま」達、ニンゲンにとって、擬態のようなものなのだろう。


 かめが納得していると、「ごしゅじんさま」は、また「すまほぉ」に向かって叫んでいる。どうやら、「まこ」と話しているようだ。「まこ」とは、かめも、あれから何度か会っている。いつも大量に食事を入れてくれるのは良いが、かめはそんなに食べない。
「動きやすくて可愛い服……うわぁん、後、髪もどうしよう!?ジェニファー達を会わせるって理由だし、巻かない方が良いよね!?」

 「ごしゅじんさま」は「すまほぉ」に向かって叫び続けているが、何やらどう擬態しようか決めているらしい。
 ニンゲンとは大変だ。擬態するのにも、こんなに考えないといけないのか。「ふくそう」だけでなく、「かみがた」というものも決めないといけないらしい。


 かめは、「ごしゅじんさま」の言葉で少し覚えている。
 「かみがた」とは、「ごしゅじんさま」の頭に生えている毛を擬態させることだ。
 この「かみがた」の擬態は、どうやら難しいらしい。何故なら、「かみがた」のことで、よく「おかあさん」に怒られているのだ。
 ふむ、ニンゲンの擬態は難しいのだなぁ。


 それにしても、どうやらかめは、「でぇと」というものに連れて行かれるらしいが、「ごしゅじんさま」があんなに慌てて擬態をしているのに、かめはこのままで良いのだろうか。

 「ごしゅじんさま」の言葉で、「しゅうくん」に会う事は分かったが……。

 そうだ。「しゅうくん」は、「ごしゅじんさま」が、「かたおもい」をしているニンゲンだ。
 だが、かめには、「かたおもい」がなんなのか分からない。
 うむ、考えていたら眠くなってきた。


 「ごしゅじんさま」は自分の住処を荒らして、擬態するための「ふくそう」を探している。
「ジェニファー、この服どう!?」
 かめに見せられても、わからぬ。少なくとも、この部屋には擬態できていない気がするが。
「あーやっぱり、こっちの方が良いかな!?」
 だから、かめはわからぬ。
 「ごしゅじんさま」は大慌てだ。

 それほどまでに、「しゅうくん」との「でぇと」は大事なものなのだろうか。
 あんなに慌てているのだ。きっと大事なものなのだろうが、擬態を考えたり、落ち着きがなくなったり、「ごしゅじんさま」は本当にせわしない。

「ジェニファー!!なんとしても、秀くんのところのかめちゃんと仲良くなってね!!そうしたら、またそれを口実にデートできるかもしれないから!!」


 ……なんぞ!?


 かめに、なにか求められたぞ!?
 だが、何を言っているか、少しは分かる。「しゅうくん」が「ごしゅじんさま」であるかめと、仲良くなれと言っているのだろう。

 うーむ。かめの住処に入って来られるのは嫌なのだが……。その辺、「ごしゅじんさま」には考えてもらいたいが、「ごしゅじんさま」は擬態を考えるのに夢中になっている。

 ……正直、かめには全て同じに見えるので、どれでも良いと思うのだが、「ごしゅじんさま」にとっては「でぇと」の擬態は大切なのだ。


 ふむ、また「すまほぉ」が叩かれている。苦労しているな、「すまほぉ」よ。





 かめの学び

 「ごしゅじんさま」と「しゅうくん」が「でぇと」をする

 「ごしゅじんさま」は「でぇと」の為の「ふくそう」と「かみがた」の擬態を選ばなくてはいけない


かめへのミッション

「しゅうくん」のところのかめと仲良くなる
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