お供え物は、プロテイン

Emi 松原

文字の大きさ
2 / 39
事故現場の女性

1-2

しおりを挟む


※※※

「ひえぇぇぇぇ!!」
 大きな一軒家の縁側で、耳辺りまでの短髪、薄い茶色い髪をした青年が、叫び声をあげた。清潔感があり、好青年という言葉が、ぴったりとくるイメージである。
 怖がりなこの青年の名は、藤江 陽一。神社の跡取り息子であり、《キカイ》と呼ばれるメンバーの中では、一番の知識の持ち主である。得意術は、結界術。怖がりな陽一にとって、結界で守るスタイルはぴったりなのだ。
「……ヨーくん、怯えすぎ。《キカイ》のメンバーだからって、遠目に見られる側の人間のくせに。神社の跡取り息子のくせに」
 その隣に座っていた、肩の少し上ほどの短髪で、明るくて光にあたると薄い金色に見えるくらい染めた、少しチャラい印象の青年が嫌味っぽく返した。
 青年の名は、奥村 安明。《キカイ》メンバーの中で、一番明るく、人と話すのが上手いが、面倒くさがりな一面もある。寺の跡取り息子である彼の得意分野は、文字通り「さとす」こと。話をして、さとして、浄霊する。見た目は寺の跡取り息子に見えないが、性格はぴったりと合っているのだ。
「見えるのと、聞くのは違うの!! それに神社は、神様だよ!? お寺の跡取りの、やっすんとは違うの!! そっちは専門じゃないの!!」
「寺だって、そっちは本業じゃないけどな。まぁ、曰く付きのものとか持ってくる人はいるけど」
「やーめーてーよ!! 虎ちゃんも、筋トレしてないで何か言ってやってよ!!」
「むっ? 大胸筋がなんだって?」
「そんな話してないよ!?」
 庭で筋トレをしながら、話がかみ合っていない、黒髪短髪タンクトップでマッチョのこの青年は、岡地 虎之助。《キカイ》メンバーの最後の一人であり、最強、最凶、最狂とも呼ばれる、ゴリゴリのマッチョだ。得意分野は、筋トレと、拳で殴ること。この三人の中で、全く意味のないように思えるが、「最強」で「最狂」なのだ。
三人は、子供の頃からの幼なじみで、現在大学三年生。全員別々の大学へ通っている。
 《キカイ》とは、彼らが自ら名乗っているものではない。ただ、寺に来る依頼、神社に来る依頼、その依頼を解決したと口コミで聞いて頼ってくる人によって、彼らは、その方面で有名となった。
 陽一と安明の両親が、その手の依頼を、三人に任せていたのにも原因があるのだが。
 そして、彼らは、「奇怪な人物達」、通称《キカイ》と周りから呼ばれるようになったのである。

「で、新作のプロテインがなんだって?」
「虎ちゃん!? 何の話!?」
 プロテインの粉を出すために、自分のリュックを漁りはじめた虎之助に、陽一が突っ込む。虎之助は気にせず、プロテインを選んでいるようだ。
「とらちゃん、もっかい最初から説明するけど。最近、雨の日に、とある山道の特定の場所で、女の人の目撃談が相次いでるの。駅からの一本道を、住宅街に向けて歩いていて、話しかけても普通に返してくる。明るい感じで、それこそ幽霊とかには見えないのに、住宅街が近づくと、何故か突然消えてしまうんだってさ」
「なるほど、雨が好きなんだな」
「いや、違うと思うけど……」
 小さな声で陽一が突っ込んだが、安明は、気にせず続ける。
「その女の人は、話した相手に必ず、茶色いTシャツにジーパンの男性を知らないか訪ねている。はぐれたって言っているらしいな。まぁ、この話を聞く限り全く害はないんだけど、よほどハッキリと見えたらしくて、うちの寺に相談に来る人が、後を絶たなくなってきたんだよ」
「それってさぁ、その男の人を探してるってことだよね……もし、その男の人と知り合いだったら……。うわぁ! 考えたくもない!!」
「なんでよ、別に恨んで探してるとは限らないじゃない。でもねぇ、色々ネットとかで調べてはみたんだけれど、その辺で行方不明になった人や、それこそ住宅地での事件事故も見つからなかったんだよね」
「へぇ……それが最近突然……なんでだろうね」
「歩きたい場所を歩く! それで良いんだ!!」
 そう言って、虎之助は、いつの間にか作ったらしいプロテインを一気飲みし始めた。
「……虎ちゃんみたいな考え方の人ばっかりだったら、世界は平和かもしれないね」
「確かにな」
 陽一と安明が、顔を見合わせて苦笑する。
「とにかく、親父が出るほどのものでもないからって、また押しつけられたんだ。情報がこれしかないから、雨が降った日を狙って、一度行ってみるしかないかもなぁ」
「えー、やだよ! やっすん一人で行ってよー。三人っていう大人数で行って、出てくるとも限らないじゃんかー」
「へぇー、俺を危険かもしれない場所に、一人で行かせるんだ?」
「もぉ!! そういう嫌味な言い方やめてよ!!」
 二人が言い争いをしている横で、虎之助が、首をかしげた。
「要は、山に足の筋肉を鍛えに行くんだな?」
「違うけど、雨の日に山に行くからね」
 虎之助の言葉に、安明が、さらりと返す。陽一が、ため息をついたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

黄泉津役所

浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。 だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。 一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。 ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。 一体何をさせられるのか……

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を

花籠しずく
キャラ文芸
 ――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。  月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。  帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。 「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」  これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。 ※R-15っぽいゆるい性描写があります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...