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事故現場の女性
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「ひえぇぇぇぇ!!」
大きな一軒家の縁側で、耳辺りまでの短髪、薄い茶色い髪をした青年が、叫び声をあげた。清潔感があり、好青年という言葉が、ぴったりとくるイメージである。
怖がりなこの青年の名は、藤江 陽一。神社の跡取り息子であり、《キカイ》と呼ばれるメンバーの中では、一番の知識の持ち主である。得意術は、結界術。怖がりな陽一にとって、結界で守るスタイルはぴったりなのだ。
「……ヨーくん、怯えすぎ。《キカイ》のメンバーだからって、遠目に見られる側の人間のくせに。神社の跡取り息子のくせに」
その隣に座っていた、肩の少し上ほどの短髪で、明るくて光にあたると薄い金色に見えるくらい染めた、少しチャラい印象の青年が嫌味っぽく返した。
青年の名は、奥村 安明。《キカイ》メンバーの中で、一番明るく、人と話すのが上手いが、面倒くさがりな一面もある。寺の跡取り息子である彼の得意分野は、文字通り「さとす」こと。話をして、さとして、浄霊する。見た目は寺の跡取り息子に見えないが、性格はぴったりと合っているのだ。
「見えるのと、聞くのは違うの!! それに神社は、神様だよ!? お寺の跡取りの、やっすんとは違うの!! そっちは専門じゃないの!!」
「寺だって、そっちは本業じゃないけどな。まぁ、曰く付きのものとか持ってくる人はいるけど」
「やーめーてーよ!! 虎ちゃんも、筋トレしてないで何か言ってやってよ!!」
「むっ? 大胸筋がなんだって?」
「そんな話してないよ!?」
庭で筋トレをしながら、話がかみ合っていない、黒髪短髪タンクトップでマッチョのこの青年は、岡地 虎之助。《キカイ》メンバーの最後の一人であり、最強、最凶、最狂とも呼ばれる、ゴリゴリのマッチョだ。得意分野は、筋トレと、拳で殴ること。この三人の中で、全く意味のないように思えるが、「最強」で「最狂」なのだ。
三人は、子供の頃からの幼なじみで、現在大学三年生。全員別々の大学へ通っている。
《キカイ》とは、彼らが自ら名乗っているものではない。ただ、寺に来る依頼、神社に来る依頼、その依頼を解決したと口コミで聞いて頼ってくる人によって、彼らは、その方面で有名となった。
陽一と安明の両親が、その手の依頼を、三人に任せていたのにも原因があるのだが。
そして、彼らは、「奇怪な人物達」、通称《キカイ》と周りから呼ばれるようになったのである。
「で、新作のプロテインがなんだって?」
「虎ちゃん!? 何の話!?」
プロテインの粉を出すために、自分のリュックを漁りはじめた虎之助に、陽一が突っ込む。虎之助は気にせず、プロテインを選んでいるようだ。
「とらちゃん、もっかい最初から説明するけど。最近、雨の日に、とある山道の特定の場所で、女の人の目撃談が相次いでるの。駅からの一本道を、住宅街に向けて歩いていて、話しかけても普通に返してくる。明るい感じで、それこそ幽霊とかには見えないのに、住宅街が近づくと、何故か突然消えてしまうんだってさ」
「なるほど、雨が好きなんだな」
「いや、違うと思うけど……」
小さな声で陽一が突っ込んだが、安明は、気にせず続ける。
「その女の人は、話した相手に必ず、茶色いTシャツにジーパンの男性を知らないか訪ねている。はぐれたって言っているらしいな。まぁ、この話を聞く限り全く害はないんだけど、よほどハッキリと見えたらしくて、うちの寺に相談に来る人が、後を絶たなくなってきたんだよ」
「それってさぁ、その男の人を探してるってことだよね……もし、その男の人と知り合いだったら……。うわぁ! 考えたくもない!!」
「なんでよ、別に恨んで探してるとは限らないじゃない。でもねぇ、色々ネットとかで調べてはみたんだけれど、その辺で行方不明になった人や、それこそ住宅地での事件事故も見つからなかったんだよね」
「へぇ……それが最近突然……なんでだろうね」
「歩きたい場所を歩く! それで良いんだ!!」
そう言って、虎之助は、いつの間にか作ったらしいプロテインを一気飲みし始めた。
「……虎ちゃんみたいな考え方の人ばっかりだったら、世界は平和かもしれないね」
「確かにな」
陽一と安明が、顔を見合わせて苦笑する。
「とにかく、親父が出るほどのものでもないからって、また押しつけられたんだ。情報がこれしかないから、雨が降った日を狙って、一度行ってみるしかないかもなぁ」
「えー、やだよ! やっすん一人で行ってよー。三人っていう大人数で行って、出てくるとも限らないじゃんかー」
「へぇー、俺を危険かもしれない場所に、一人で行かせるんだ?」
「もぉ!! そういう嫌味な言い方やめてよ!!」
二人が言い争いをしている横で、虎之助が、首をかしげた。
「要は、山に足の筋肉を鍛えに行くんだな?」
「違うけど、雨の日に山に行くからね」
虎之助の言葉に、安明が、さらりと返す。陽一が、ため息をついたのだった。
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