お供え物は、プロテイン

Emi 松原

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帰宅する人形

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                                  帰宅する人形
                                        
「ひぃぃ!! お、お母さん! お母さん! また……」
 清水 かりん。高校二年生の声が、とある高級住宅街のなかにある、一軒家に響き渡った。
 かりんのいる玄関の元に、母である清水 好子が、階段から慌てて降りてくる。
「どうして!? 今度は、人形供養で有名なお寺に頼んだのに!! どうして戻ってくるの!?」
 かりんが、母にしがみつき、泣き叫ぶ。
 かりんも、母の好子も、住んでいる場所にしっくりと来る、有名ブランドに身をつつみ、玄関も丁寧に整えられ、高い小物が綺麗に並んでいる。その中で、異質な空気を出しているのが、一体の和服を着た薄汚れた人形である。
 和服を着ているが、完全な日本人形ではない。かなり昔の物であるが、顔が、少し洋風も入っている、いわゆる、有名な着せ替え人形の先駆けのような顔である。ただ、当時の技術が今ほどでなかったせいか、目の大きさに対するバランス等が少し怖い印象を与えている。着物を変えることもできる為、一緒にお寺に持っていったはずの、着せ替え用の汚れた着物も、玄関に散乱していた。
「なんで……? 確かに、何度も捨ててるのに。供養の場にだって、何度も持っていったのに」
「かりん、落ち着いて。今回のお寺は、有名な割に、少し安かったわ。それがいけなかったのかも知れない。お父さんと相談して、もっと良いお寺を探してみるわ」
「う……ん」

 その日の夜。

 かりんは、スマホのメッセージを使って、友達との会話を楽しんでいた。時間は進み、いつの間にか、時計の針は、てっぺんを越えている。かりんは、スマホを持ったまま、うとうととしていた。

《遊ぼうよ……かりん、遊ぼうよ》

 不意に聞こえた小さな声に、かりんはビクリとして飛び起きると、声の聞こえた、ドアの方を見た。
「やめて……!! お願い、もうやめて……!!」
《遊ぼうよ……。遊んでよ……。今日は、青い着物が良いな……》
「いや!! 遊びたくない!! お願い、来ないで!!」
 かりんの部屋の扉が、ギギ、と音を立てて、ゆっくりと開く。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
 大きな声で叫んだかりんは、そのまま、気絶して、朝を迎えたのだった。

※※※

「もう、嫌だ……」
「かりん……」
 学校の休憩時間、かりんは、親友の美紀に向かって、泣きそうな顔をして呟いた。
 あの人形は、元々は、母のものだった。祖母が、母の子供の頃に、プレゼントしたらしいのだ。かりんは、ほんの小さな頃は、あの人形が大好きだった。毎日声をかけて遊んでいたし、一緒に寝ていた程なのだ。
 だが、いつからだろう。あの人形に、嫌悪感にも似た感情を抱くようになったのは。
 だから、最初はゴミ袋に入れて、捨てた。それなのに、その日の夜、玄関に、あの人形は戻ってきていた。
 父か母が、間違って持って帰ったのか。そう思ったかりんは、次に、少し離れたゴミ捨て場に、あの人形を捨てた。それでも、あの人形は、戻ってきた。
 パニックになったかりんは、あの人形を、川に投げ込んだ。そして、夜。玄関には、ずぶ濡れになった、あの人形が座っていた。
 そんなかりんと、人形の様子を見かねて、父と母は、人形を供養すれば良いのではないかと考えた。そこから、人形供養に出したり、お寺に預けたりしているのに、あの人形は、戻ってくるのだ。
 かりんは、ノイローゼにも近い状態になっていた。
「ねぇ、かりん。お兄ちゃんに聞いたんだけれどね。《キカイ》って呼ばれてるグループがあるらしいの。お兄ちゃんの大学に、メンバーの一人がいるんだけど」
「《キカイ》……?」
 かりんは、顔をあげて、美紀を見る。美紀は、かりんを見つめていた。本気で心配してくれているのが、伝わってくる。
「そのグループはね。なんだか、変な人達ばかりなんだけれど、そういう心霊現象的なものを、解決してくれることでも有名なんだって。頼めるかどうか分からないって言っていたけれど、お兄ちゃんに、依頼できるように頼んでみる?」
 美紀の言葉に、かりんは、激しく頷いた。誰でも良い。なんでも良い。この状況を助けてくれるのであれば。
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