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オカルトサークルの降霊術 宝石箱編
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しおりを挟む「《彼女》に言われたんだ。《彼女》の存在を守り、強固なものにするには、今以上の力が必要だと。そして同時に、驚異となるかもしれない存在を消さなければならないと。虎之助くん、君のことだよ。《彼女》は言ったんだ。君の力が欲しいと。でも驚異となることも考慮に入れろと」
そう言うと、秀樹は音羽を見る。いつもと全く違うその様子に、音羽は言葉にできない恐怖で動けなくなり、咄嗟に松子を抱きしめ、下を向いた。
「貴様、松子と音羽に強い殺気を向けることは許さんぞ」
聞いたことのない、低く威圧のある虎之助の声に、音羽は驚いて顔をあげた。
目の前には虎之助が立っていて、秀樹を睨み付けているであろうことが分かる。
音羽の左右には、安明と陽一が立ち、音羽と松子を守る布陣を作っていた。
「さすが、《彼女》に認められただけはあるね。これだけ隠しているのに、そんなことが分かるなんて。《彼女》が言ったんだ。君を従わせるには、大切な者を人質に、と。君の大学内で君が大事にしているのは、その後ろにいる音羽くんと人形だしね」
「人質……??」
音羽には、秀樹が言っている意味が分からなかった。
《彼女》とは誰なのか。虎之助の力が欲しい、脅威にもなる、その意味はなんとなく分かる。だが、肝心の《彼女》の意味が分からない。
《音羽、大丈夫よ。私がいるわ》
混乱する音羽に、松子が声をかける。音羽は松子の声が聞こえないのに、最近は雰囲気で感情が伝わるようにまでなっていた。松子の体が暖かい気がして、音羽は落ち着くために深呼吸する。
「さて、《キカイ》が揃っているとは驚きだが、実力は本物のようだな。《彼女》の脅威にならないようにしなければ」
秀樹がそう言うと、メンバーが動いた。隠していたのであろう、武器を持ちだす。バッドからゴルフクラブの鈍器になるもの、ナイフを持っている者までいた。
「分かってる? それ、犯罪だって」
安明が、優しい仏スマイルで聞く。まるで、何かに失敗した子供を優しく見守るように、全く動じず相手をさとそうとする余裕がある。それなのに、まとう空気と圧は強く、この一帯を支配しているようにも感じた。
「証拠も撮るからねー」
陽一がそういった瞬間、暗かったはずの辺り一面が、炎の光に包まれた。その隙を逃さず、陽一はスマホのシャッターを押す。結界術と同じように、炎の術を使ったのだ。陽一がこの術を使うことは滅多にない。幻術は表に出すべきではないと思っているからこそだが、本当に必要な時には使う。虎之助の《拳》と同じだ。
音羽は、そんな三人を見て、怖いはずなのに、落ち着いていくのが分かった。《キカイ》の三人の、本気を垣間見た気がする。
「関係ないよ。《彼女》が絶対だ。行け!」
秀樹の言葉に操られるように、オカルトサークルのメンバーが、虚ろな目で音羽を見た。そして、武器を持って走り出す。
「己の弱さを知り、向き合わぬと、筋トレは成功しないのだ!! マッスル!!」
虎之助が、大きな声を出すと共に、大きく息を吸い込み、マッスルのかけ声とともに武器を持つオカルトサークルのメンバーがいる方向に向け、力強い正拳突きをした。
その《拳》が放たれた瞬間、世界が止まるくらいの風が吹きつける。
オカルトサークルのメンバーから、「何か」が吹き飛ばされたのだ。
「あ、れ……?」
目に光が戻ったメンバーは、今の状況を把握していないのか、ポカンとしている。
「少し寝ていてね。良かったね、犯罪者になる前で」
いつの間にかオカルトサークルのメンバーに距離を詰めていた安明が、そのうちの一人に軽く手刀を入れる。陽一も、別のメンバーに同じことをして、全員を気絶させていった。
残りは、秀樹のみだ。
「くそっ!! 役に立たない奴らめ!! ……《彼女》を守らなければ!!」
そう言って、振り返って走り出す。
《追いかけたら、正体が分かるわ》
松子の言葉に、安明が頷く。
「音羽さんは……」
「行きます。私が一人になった方が、不利になる気がして」
心配そうな陽一に、音羽が力強く頷き、もうすでに動き出していた虎之助を筆頭に全員で秀樹を追いかけた。
※※※
「ロベリア様、申し訳ありません」
《仕方ないわ。あの子達は、その程度なのよ。でも、あなたは違うでしょう?》
「勿論でございます」
あのとき降霊術を行った場所に置いてある宝石箱の上には、うっすらと中世ヨーロッパ風のドレスを着た女性が立っていた。その側に、秀樹が跪く。
「マッスル!!」
虎之助のかけ声と共に、部室の扉が外から吹き飛んだ。
「虎ちゃん!? 鍵が閉まっているか確認くらいして!?」
陽一の突っ込みなどお構いなしに、ズカズカと虎之助が入ってきて、その後ろに三人と松子が続く。
「えっ……。私にも、見える……? どうして?」
女の人が見えた音羽は、混乱したように言った。音羽は今まで、虎之助達と一緒にいても、目で何かが見えることはなかったのだから。
「色々な媒体があるから、見えやすくなっているようだね。元々音羽さんは感受性が強いから、不思議じゃないよ」
安明が、周りに散らばった動物の置物を見ながら吐き捨てるように言う。何を呼んでしまうか分からない、このような危険な行為が許せないのだ。
「《彼女》こそ神に近い存在。君たちも、《彼女》の一部になるんだ」
秀樹が笑いながら手に持っていたのは、包丁。目の焦点は合っていない。
「音羽さんは下がっていて、松子ちゃんをお願いね。松子ちゃんも、音羽さんをお願い」
陽一はそう言い、音羽と松子の周りに結界術を使う。これで、あの女性の影響は受けないはずだ。
「君たちの力が、《彼女》には必要なんだ。君たちになら、分かるだろう?」
「あぁ、凄くよく分かるよ。低級霊が、力を得る簡単な方法だもんね」
「なっ!? 貴様、《彼女》を愚弄するのか!?」
安明の言葉に秀樹が叫んだが、安明は仏スマイルのままだ。
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