32 / 39
オカルトサークルの降霊術 宝石箱編
1-6
しおりを挟む「だってそうですもんね? 外見を綺麗に見せても、所詮は欲に溺れた獣ですもんね」
「なっ……!! 《彼女》になんてことを……!!」
「あなた、本当に分からないんですか? しっかり見てください。彼女の中を。認めたくありませんが、オカルトサークルのその方面の知識量は本物でしょう?」
安明がさとすように、それなのにどこか挑発する不思議な言い方で、秀樹を見る。
「扉の外で聞こえましたけれど、ロベリアって、花の名前ですよね。花言葉は、「悪意」「謙遜」。これって、どういう意味でしょうね?」
安明が、仏スマイルをやめて、ニッコリと笑った。
「貴様らは、何を……!! 貴様らなら分かるはずだ、この方が、どれだけ偉大な……」
そう言いながらも、秀樹の言葉の歯切れが悪くなっていく。
秀樹は、オカルトサークルの部長になり得た人物だ。《キカイ》が本物だということは、十分分かっている。でも、自分の見ているものは……。
「ひぃっ……!?」
ロベリアに目を向けた秀樹が、悲鳴を上げた。
さっきまで、いや、今の今まで、《彼女》は神のような存在だと信じていたし、誰よりも美しい女性に見えていた。それなのに、今見えている《彼女》は、よだれを垂らし、欲にまみれた目をした、毛むくじゃらの、まさに獣だ。
「どういう、ことだ……。降霊術は成功したはず!! お前ら、《彼女》に何をした!!」
「何もしていませんよ。あなたが、正気を取り戻そうとしているだけです。降霊術で最も気をつけないといけないことくらい、俺たちより知っているでしょう?」
安明の言葉に、秀樹は目を見開く。
「オカルトサークルの人ってさ、知識がある分やらかしてくれるよね。楽しむレベルにしていたら、何も問題はないし、むしろ凄い人たちなのに」
小さく陽一がつぶやいたが、その声は秀樹に聞こえていない。
「俺の降霊術に、低級霊が引き寄せられた……?? それとも、宝石箱に低級霊が憑いていた……??」
秀樹が絞り出すように言った言葉に、安明がまたニッコリと笑った。
そう。降霊術で最も気をつけなければならないこと。それは、「別の悪意を持ったもの」を降霊してしまうことだ。
いつの時代も、降霊術というものは名を変えて流行る。それは、こっくりさんだったり、キューピットさんだったり。
では本当に、呼んだものが降りてくるのだろうか?
降霊術という行為は、何かに降りてきて欲しいという意思表示になる。それに反応した獣や魔物、低級霊が降りてくる可能性が高いというのは、基本的な知識だ。
それに加えて、今回は曰く付きの宝石箱を媒体に使った。曰く付きとは、必ず何か理由があるからこその曰く付きなのだ。それに憑いているものが、噂されるものとは限らない。
「そんな、嘘だ。嘘だ。ロベリア様……」
もう一度ロベリアを見た秀樹が、膝から崩れ落ちた。
秀樹の目には、もう美しいロベリアは見えない。見えるのは、おぞましい獣だけ。
「筋肉は、一度傷ついて大きく強くなる」
虎之助が、いつの間にか作っていたプロテインを、崩れ落ちて座り込んでいる秀樹の前に置いた。そして、ロベリアを見る。
「貴様にも何か理由はあるのだろう。だが、俺は俺の大切なものに手を出すことは、何があっても許さぬ。さぁ、選べ。ここを去りこいつを解放するか、俺の《拳》を受けるか」
虎之助の言葉に、ロベリアはかん高い笑い声を上げた。
《人間ごときが、我に指図するか!!》
そう言うと、ロベリアは虎之助に襲いかかろうと動く。
「終わったな」
「……終わりだね」
「マッーーーースッル!!!!」
安明と陽一、そして虎之助の言葉が口から出たのは同時だった。
虎之助はロベリアに、いや、宝石箱に向けて一直線に正拳突きをし、宝石箱は砕け散った。ロベリアは叫ぶ間もなく、消え去ったのだった。
※※※
《良かったの? あの人達、警察に突き出さなくて》
いつもの庭。いつもの場所で、少し不満そうに松子が言った。
「低級霊に魅入られて人を襲おうとしたなんて、誰も信じないよ。あの部長以外のメンバーは何も覚えていないようだったし」
「少しでも、反省してくれたら良いのに」
安明の言葉に、音羽が小さくつぶやいて返した。
「これで懲りてくれたら良いんだけれどね……」
陽一がため息をつき、音羽が頷いて返す。
そんな中で、「マッスル! マッスル!」のかけ声が響き渡っていた。
三人と松子は、少し呆れたように、でも嬉しそうな笑みがこぼれた。
虎之助がこの調子なら、きっと《今は》何事もなく平和な日々が過ごせるだろう、と。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
黄泉津役所
浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。
だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。
一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。
ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。
一体何をさせられるのか……
【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌
双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。
最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。
明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を
花籠しずく
キャラ文芸
――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。
月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。
帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。
「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」
これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。
※R-15っぽいゆるい性描写があります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる