33 / 39
オカルトサークルの降霊術 古本編
1-1
しおりを挟むカルトサークルの降霊術 古本編
「なるほど……。タンパク質をはじめとする栄養素をしっかりととって、筋肉を落とさないように体脂肪を落とす、健康を維持してダイエットする為には、やっぱり楽しようと思っちゃ駄目なのね……」
「音羽さん!? 突然どうしたの!?」
真剣に何かを読みながらブツブツ言っている音羽に、陽一が驚いて言った。
「虎ちゃんに毒された?」
安明も、少し驚いたような顔を音羽に向ける。
そんな二人の姿を見て、松子がケラケラと笑った。
《違うわよ。虎之助がバイトをしているジムの系列店に、ジムに通うより少しハードルが低い、運動フィットネスクラブがあるんですって。虎之助のバイト先の隣の店舗らしいんだけれど。そこの受付のアルバイトの子が諸事情で急に辞めちゃって。短時間で良いから、ってことで、虎之助を通じて音羽にアルバイトの誘いがきたの》
「な、なるほど、驚いたよ……。音羽さんまで筋トレの虜になったのかと……」
陽一の言葉に、音羽が声を上げて笑う。
「サークルに支障がでないように、私は短時間のアルバイトだけれど、ある程度の知識は持っておいたほうが良いと思って。こっちのフィットネスは、スタジオも完備されていて、エアロビやヨガなんかも行われてるの。通っている方も女性の方の割合の方が大きいし、気軽に通えるのが特徴だから、空いた時間に私も運動してみようかなって」
「職員割引が使えるからな。プロテインも、メーカーは同じだが種類が違うぞ。最初は、短期間なら俺が行こうかと言ったんだが、俺ほどのマッチョは敷居を高くするから駄目だと言われてしまった」
少し悲しそうにプロテインを取り出している虎之助に、音羽が笑いかける。
「でも、お陰でダイエットに関する見方が変わったよ。つい、これをするだけっていう楽そうなダイエットに飛びついちゃうから」
「あの二人、あの一件以来、ますます仲良くなったね。虎ちゃんも大事な人っていう自覚があるみたいだし。それが、恋愛なのかは分からないけれど」
陽一が安明に言うと、安明も頷いた。
「恋愛とは違う次元なんだろうね、虎ちゃんの大切っていう概念は。そういえばさ、ヨーくん、親父さんから孤児院について何か聞いた?」
「えっ? 特に何も聞いていないけれど。何かあった?」
安明の言葉に、陽一は首をかしげると、安明に先を促す。
「あそこってさ、元々情操教育の一環として、ウサギとか飼ってるでしょ? ここ数年は、設備も整ってきて、鶏とかミニブタとか、ヤギとか……ちょっとした牧場みたいになってたじゃない」
「うん。ふれあいを大事にしているよね。世話も交代でやっていたり」
「そこのウサギや鶏が、死んでいるところが見つかったらしいんだけれど。どうやら、殺されたようなんだよね」
「それって……」
陽一が声を落として、虎之助を見た。虎之助は筋トレ雑誌に夢中で、こちらの話は聞いていないようだ。
音羽と松子はしっかりと聞いていたようで、無言で頷いた。
「どこの場所でもそうかもしれないけれど、外で動物を飼っていたらそういう危険は常につきまとう。でも、なんだかその話をしたときの親父が、考え込んでいるようだったから気になって」
「虎之助くんが、初めて《拳》を使った時のことを話してくれたけれど、その殺された動物さん達も魔物になってしまうの?」
音羽の言葉に、安明も陽一も難しい顔をする。
「なんとも言えないね。子供達は悲しんで供養したみたいだし」
「何事もなければ良いんだけれどね……。こういう一見何も俺たちと関係のないことが、何かの前触れだったりするし……」
安明、陽一、音羽に松子は顔を見合わせると、念のため、気をつけていようと静かに頷いた。
※※※
「聞いたよ、秀樹くん。あの《キカイ》にお世話になっちゃったみたいだね」
居酒屋の個室で、一人の男が、秀樹に向けて笑顔で言った。
手には酒を持ち、その顔はとても楽しそうだ。
「先代……」
秀樹が、苦しそうな顔で下を向く。秀樹にとって、あの出来事は苦い経験となっていた。降霊術に成功したと思ったのに、低級霊に魅入られたのだから。
「気にすることはない。降霊術は成功する例の方が少ない。それに、前回は色々と妥協された簡単な方法を使ったのだろう?」
柔らかく笑い、先代と呼ばれた男は、秀樹にも酒を勧める。その顔は優しく微笑んでいて、誰からも好かれるような風貌をしていた。
「それで、先代。今日は一体……?」
秀樹が酒を口に運びながら、男に聞く。男は、楽しそうに笑ったままだ。
「先代と呼ばれると、なんだか嬉しいものだな。実はな、秀樹くんはあの降霊術を失敗したと思っているかもしれないが、歴代の部長……先代達は、高く評価されているのだ。例え低級霊であったとしても、意思疎通をとることに成功し、目視までできたのだから。他のメンバーは魅入られすぎて、記憶をなくしてしまったようだけれどね」
男の言葉に、秀樹が驚いたように、酒を飲む手を止める。
「そこでね、俺たち歴代のトップは考えたんだ。秀樹くん、君と俺達先代が手を組めば、俺達全員の長年求めていたものが、手に入るのではないかと」
「先代達が……?」
「あぁ。目に見えないものが支配するこの世界を支配し、変えるには、目に見えないものの力を借りる。オカルトサークルの上層部がずっと悲願してきたことだ。それがついに叶うんだ」
「でも、もう宝石箱は壊されました。媒体が……」
秀樹の言葉に、男はニヤリと笑ってスマホの画面を見せた。
「こ、これは……」
「俺も先代も、普段は普通の社会人だからな。オークションで見事落とせたよ」
秀樹の目が、キラキラと輝く。まるで子供が宝物を見つけたように楽しそうだ。
「じゃあ、これからすることは分かっているよね?」
「はい!!」
秀樹は元気よく頷くと、またお酒を口に運んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
黄泉津役所
浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。
だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。
一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。
ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。
一体何をさせられるのか……
【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌
双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。
最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。
明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を
花籠しずく
キャラ文芸
――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。
月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。
帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。
「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」
これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。
※R-15っぽいゆるい性描写があります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる