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オカルトサークルの降霊術 古本編
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「結局、ここしばらく何も収穫なしだったね。気にしすぎだったとも思えないしなぁ」
陽一がため息をつきながら言った。
「親父も仕事でここ最近帰ってなくてさ。聞こうにも聞けなかったんだよね」
安明はそう言うと、陽一と顔を見合わせて虎之助を見た。
虎之助は、じっと空を眺めていて、その隣で音羽も一緒に空を見ている。
《虎之助も、ずっとあんな感じよ。音羽がいてくれるから、安心はしているのだけれど》
「虎ちゃん、怖いの?」
安明の言葉に、虎之助が安明と陽一を見た。
「怖いな。あの空は」
「どんな空?」
「何か分からないが、押しつぶされそうになるのだ。自分一人だけの力では到底敵わない何かに」
虎之助の言葉に、安明は何も返せず、黙って頷く。
「僕たちがいても、怖い?」
陽一の言葉に、虎之助は少し考え込むと、静かに頷いた。
「やっすんとヨーくんがいれば、大抵のことは怖くなくなる。それなのに、あの空の時だけは怖いのだ」
陽一は少し驚いた様子を見せたが、何も言わず、黙って頷く。
「今日は、虎之助くんもバイトがお休みよね? 松子ちゃんと一緒に、うちでご飯食べて帰る? 少し勉強したら、適当にやってた自炊の仕方まで変わっちゃって。タンパク質メインで作ってるんだよ」
「む? 食にこだわるのは良いことだ。俺が作るのはゆで卵くらいだからな」
虎之助の表情が少し柔らかくなったのを見て、安明と陽一は安心した。
音羽の明るい声は、空気を変える。自分たちにはなかなかできないことだ。
《なんだか、今日はとても暗くなるのが早い気がするわ。私も、なんだか嫌なものを感じる》
松子の言葉に、安明と陽一は上を向いた。音羽もつられて、上を見る。
「えっ……!?」
音羽は驚いて、恐怖のあまり咄嗟に松子を抱き上げて抱きしめた。
空が、さっきまでの姿と変わっていた。
空が、黒いのだ。夜になったわけではない。少し離れた町の空は、まだ明るくいつものように青く輝いている。
黒い雲が覆っている訳でもない。さっきまで、空には雲一つない晴天だったのだから。
それなのに、この一帯だけ、空が黒くなっている。
その黒さは、ある場所に向けて、どんどん濃くなっていく。
「うちの大学……?」
音羽が消え入りそうな声でつぶやいた。
音羽の腕の中で、松子も怯えて震えている。
「何か色々とよくないものが、虎ちゃんと音羽さんの大学に向けて飛んでいっているようだね。それも相当な量が。だから、俺たちには空があんな色に見えるんだ」
「じゃあ、他の人は……?」
「ほとんどの人が、異変を感じていないと思うよ。敏感な人は、多分嫌な感じがすると思うけれど、わざわざあの場所に向かうことはないと思う」
震えたまま聞いた音羽に、安明が答えると、虎之助を見た。
「俺は、この町が好きだ。やっすんとヨーくんと出会え、過ごしてきた、大事な場所だ。大学も好きだ。誰も俺を排除しようとすることもなく、日々学ばせて貰っている。音羽と松子と楽しく過ごせる場だ。そんな場所を、汚すことは許されぬ」
虎之助は、そのままリュックを背負う。
「音羽は松子と一緒に……」
「わ、私も行く!!」
《私だって!!》
音羽と松子の声が重なり、虎之助は一瞬驚いた顔をした。
「私は何もできないし、前みたいに足手まといになっちゃうかもしれないけれど、松子ちゃんと一緒に、側にいるよ」
《そうよ。虎之助の側にいるのは、安明と陽一だけじゃないのよ》
音羽と松子の言葉に、安明と陽一も頷く。
「置いておく方が危険だと思うよ。何が起こっているか、全く分からないんだから」
そう言いながら、安明も準備を始めている。
「やっすんの言うとおり、常に準備をして持ち歩いていて良かった……」
そう言いながら、陽一は自分の横かけバックを肩から下げた。
「虎ちゃん、みんな一緒にいるから」
安明の言葉に、虎之助は頷くと、黒い空の中心部……大学へと向かったのだった。
※※※
「ふふっ、今回の媒体は、やはり本物だったのね。オークションの出品者が、界隈で有名な方だったもの」
「流石です、初代様」
初代様と呼ばれる女は、どこから持ち込んだのか、ソファに腰掛け、ゆったりと外を眺めている。
部屋の真ん中には、一冊の古びた本が置かれ、その周りに様々な線が書き込まれている。その上には……。
動物たちの、死骸が転がっていた。中には、まだ生きている動物もいるようだが、全て横たわり、辺りを血でぬらしていた。
「ここからまた始まるのよ。まずはこの町を。そして世界を。私たちが、頂点に立つ存在になるの。目に見えぬもので、支配していくのよ。その先に必ず、誰もが幸せになれる世界があるのだから」
女性の言葉に、部屋にいた全員が跪いた。
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