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第十章
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古乃美の父三田村太一郎はエリート官僚だ
彼は警察にも人脈があり、三田村古乃美と葛城優が、容易く三浦省吾の収容されている病院へ入れ、彼に面会できる手はずが整ったのは、三田村太一郎の見えない力だった。
当然、あまり現場警官には歓迎されなかった。彼等とすれば高校生の少年少女など捜査の邪魔であり、探偵の真似事は越権行為なのだ。
だが、決意した古乃美は強かった。非友好的な視線をはじき返して、ずんずんと三浦の病室へと歩く。
『三浦省吾(みうら しょうご)』とプレートがかかった一人用の病室を前にしても臆することもなく、ノックして返事の前にもう扉を開けていた。
「な、なんだ……お前ら?」
「三浦先輩……私は一年二組の三田村古乃美です、こちらは葛城優君、私たちは今回の事件を、怪人・火廻りを捕まえるために来ました」
「はあ?」三浦は目を白黒させ、聞き返す。
「事件を解決するために、お話を聞きに来ました」
こんな時、古乃美はもの凄い行動力を発揮する。三浦の了承を得る前に、壁に立てかけてあるパイプ椅子を取り、三浦のベッドの横に座った。
「……ま、まあいいか」三浦が頷いたのは、明らかに古乃美の迫力に負けたからだ。
「まず、あの怪人……先輩に火を放った人物ですが、三浦先輩は橋爪先輩だ、と断定しました、何故ですか?」
「ああ、それか……花火だよ……ええと、俺と橋爪は夏休みの練習後、必ず学校の屋上で花火をやったんだ、二人だけで……これは須藤も知らない……俺たちだけの秘密だ、あいつはそれを知っていた、だから橋爪だ」
「あの人殺しは橋爪だ」吐き捨てるように三浦はもう一度断じた。
「花火……詳しく教えて下さい」
「うん? そんなこと意味あるのか? まあいいさ、ほら、この街夏に花火大会やるだろ? 俺と橋爪……まだあいつがマトモだったときにそれを見にいこうとしたんだ、だけどスゲー人混みで、とても居られなかった、そん時あいつが学校の屋上に思い付いたんだ、で、行ってみるとこれがドンピシャで、花火大会の隠れ名所だった、その後くらいから、何となく屋上で二人で花火をすることになったんだ、まあ、コンビニで売っている程度の奴だが、俺たちも色々ストレスがあって、夜の屋上で発散してたんだな、誰々先輩は嫌いだ、とかコーチのクソ野郎、とか叫びながら」
三浦の瞳に違う色がたゆたう。過去の自分たちを見ているのだろう。
「でも」古乃美は唇の横に人差し指を添えて、考えている。
「学校はその時間閉まっていますよね? 屋上も」
「ああ、それは用務員の熊谷さんに話しを通したんだ、いい人だよ、いつからか花火も用意していてくれるようになった」
「なるほど……で、須藤先輩のことですが」
ぐぐっと三浦が白い歯を剥き出して唇を噛む。まだその話題は地雷のようだ。が、古乃美は臆さない。
「須藤先輩は橋爪先輩の失踪は自分のせい、と言っていましたけど、それについてですが」
三浦はふて腐れたように顔をそむけるが、古乃美は待つことにより催促する。
「わかったよ……ああ、そうかもな……実は、今まで黙っていたことがあるんだ、その、ケーサツにも」
三浦は唇を歪め、綺麗に狩っている頭部に手を置いた。
「橋爪があんなだし、言わなければ行けないなー、とは思った、だから教えてやる、アイツが消える前、俺とアイツで殴り合いの喧嘩したんだ、須藤についてな」
優は息を飲む。それは確かに新情報だ。
「放課後の学校で、んで俺がノックアウトした、まあ喧嘩は俺の方が強かったんだ、アイツは白目を剥いてぶっ倒れたから俺は怖くなって人を呼びに言った、だけど戻ってきたらアイツはいなくなっていた、鞄や持ち物も一緒に、きっと気が付いたけど恥ずかしくて帰ったんだ、と思った……その後消えちまった」
彼は警察にも人脈があり、三田村古乃美と葛城優が、容易く三浦省吾の収容されている病院へ入れ、彼に面会できる手はずが整ったのは、三田村太一郎の見えない力だった。
当然、あまり現場警官には歓迎されなかった。彼等とすれば高校生の少年少女など捜査の邪魔であり、探偵の真似事は越権行為なのだ。
だが、決意した古乃美は強かった。非友好的な視線をはじき返して、ずんずんと三浦の病室へと歩く。
『三浦省吾(みうら しょうご)』とプレートがかかった一人用の病室を前にしても臆することもなく、ノックして返事の前にもう扉を開けていた。
「な、なんだ……お前ら?」
「三浦先輩……私は一年二組の三田村古乃美です、こちらは葛城優君、私たちは今回の事件を、怪人・火廻りを捕まえるために来ました」
「はあ?」三浦は目を白黒させ、聞き返す。
「事件を解決するために、お話を聞きに来ました」
こんな時、古乃美はもの凄い行動力を発揮する。三浦の了承を得る前に、壁に立てかけてあるパイプ椅子を取り、三浦のベッドの横に座った。
「……ま、まあいいか」三浦が頷いたのは、明らかに古乃美の迫力に負けたからだ。
「まず、あの怪人……先輩に火を放った人物ですが、三浦先輩は橋爪先輩だ、と断定しました、何故ですか?」
「ああ、それか……花火だよ……ええと、俺と橋爪は夏休みの練習後、必ず学校の屋上で花火をやったんだ、二人だけで……これは須藤も知らない……俺たちだけの秘密だ、あいつはそれを知っていた、だから橋爪だ」
「あの人殺しは橋爪だ」吐き捨てるように三浦はもう一度断じた。
「花火……詳しく教えて下さい」
「うん? そんなこと意味あるのか? まあいいさ、ほら、この街夏に花火大会やるだろ? 俺と橋爪……まだあいつがマトモだったときにそれを見にいこうとしたんだ、だけどスゲー人混みで、とても居られなかった、そん時あいつが学校の屋上に思い付いたんだ、で、行ってみるとこれがドンピシャで、花火大会の隠れ名所だった、その後くらいから、何となく屋上で二人で花火をすることになったんだ、まあ、コンビニで売っている程度の奴だが、俺たちも色々ストレスがあって、夜の屋上で発散してたんだな、誰々先輩は嫌いだ、とかコーチのクソ野郎、とか叫びながら」
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「でも」古乃美は唇の横に人差し指を添えて、考えている。
「学校はその時間閉まっていますよね? 屋上も」
「ああ、それは用務員の熊谷さんに話しを通したんだ、いい人だよ、いつからか花火も用意していてくれるようになった」
「なるほど……で、須藤先輩のことですが」
ぐぐっと三浦が白い歯を剥き出して唇を噛む。まだその話題は地雷のようだ。が、古乃美は臆さない。
「須藤先輩は橋爪先輩の失踪は自分のせい、と言っていましたけど、それについてですが」
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