時計塔高校の怪人~探偵ちゃんと極悪性格に定評がある、超絶美少年・優君

イチカ

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第十三章

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「な、なんだ?」
 その問いの回答を携えているのか、三年一組の前の扉が勢いよく開き、制服姿の警官達がなだれ込んでくる。
「で、出た、怪人だ! 正体不明の不審者が警官二名に火を吐いた」
 警官の一人が子細を説明する前に、優はユニフォームの人物の前に、盾になるために飛び出した。
「ぎゃああっー!」
 また悲鳴が上がる。かなり近い。気のせいか教室も酷く熱を帯びだした。
 そして、すぐに、現れた。
 暗闇の洞窟のような廊下から、ゆらゆらと亡霊のような足取りで、そいつは現れた。
 顔を包帯で覆った『橋爪』と名が入った野球部ユニフォームの人物。
 怪人・火廻り。
「……裏切りもの」
 周りの空気を熱気で歪ませながら、一歩一歩、教室へと入ってくる。
「待っていました」
 ユニフォーム姿の人物が振り返る。三浦のそれを着用した……三田村古乃美だ。
「……うう」流石に驚いたのだろう、怪人物の包帯から覗く目が大きくなる。
「残念でした、本物の三浦先輩はまだ病院です、私はあなたと同じ手を使っただけです」
 立ちつくす包帯男に、古乃美はびしっと指を向ける。
「怪人・火廻り、いえ……」彼女は次の台詞に力を込めようと、すうう、と大きく息を吸った。
「熊谷剛さん!」
「な」優は目を大きく開いた。古乃美からそこまでは聞いていなかった。包帯男の正体が用務員の熊谷だとまでは、彼女も教えてくれなかった。
「捕まえろ!」
 我に返ったのか、周辺の警官達が熊谷に殺到する。
「ぶふーふー」と口から炎が放射され、「うわわ」と警官達の足が止まる。
 ごきゅごきゅ、とその間に一升ビンを満たす濁った液体を、熊谷は飲み込んだ。
 ――あれがガソリンか……。
 優は油断無く熊谷を睨みながら、古乃美を数歩後退させた。
「私が」その古乃美は、優の背中に両掌をつきながら説明を始める。
「私が疑問に思ったのは、あなたが里見を殺したことです、三浦先輩に憧れていただけで、それほど関わっていなかった里見、しかしあなたは里見を須藤摩耶(すどう まや)先輩と間違えた、須藤先輩の代わりに殺したんです、……それは早川里見を知らなかったから、須藤先輩も知らなかったから、本物の橋爪先輩ならこの間違いはありえない」
 早川は須藤先輩と誤認された殺されたのか……優は改めて彼女が哀れになる。  
「しかし、あなたは三浦先輩と橋爪先輩の秘密を知っていた……でもっ、それは本当に二人『だけ』の秘密だけだったんでしょうか? 違います、この話には裏方がいます、二人を夜の学校へ入れた人、鍵を外してくれた人、あなたですっ、熊谷さん!」 
「はははははははははは」突然熊谷は笑い出した。
「そうだ、オレだ、オレが橋爪くんに火の素晴らしさを教えたんだ!」
 もう熊谷は顔を隠してはいなかった。自らの手で包帯をはぎ取り、殺意に歪む顔をさらけ出す。
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