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発見
しおりを挟む気配を感じたらしい。
それは過たず、どしゃと誰かがまた倒れ、ジュリエッタに拘束される。
「あと二回ぃ」
アイオーンは吐息し、橙夜の背骨は痺れる。
……このまま進んでいいのか? あるいは撤退も視野に入れるべきじゃ。
仲間を思う。
彼の我が儘に付き合ってくれた大切な人達。もし捕まったらどんな目に遭うか分からない。特に殆どが女の子だ。失敗して囚われた時、彼女らは口に出来ないような過酷な運命に弄ばれるだろう。
「まってぇ」アイオーンがこで皆を止める。珍しく緊張しているようだ。
「あれぇ」
彼女が指し示す先に二人の衛兵が立っている。他の見回り兵と違って鎧を着て槍を構えていた。
「あの下は食料庫だったけど……」怪訝そうなジュリエッタに、
「今は違うんだ」と橙夜は答える。
確信めいた何かがあった。バロードは近い。
……だけど……。
ここでスリープを使ってしまうと、アイオーンはその位階にある魔法を一度しか使えない。
目を強くつぶり、橙夜は決断した。
「アイオーン、ジュリエッタ、澄香さん、ありがとう。でも君達はここから帰ってくれ。この先は僕が決着をつける」
誰も動かなかった。
「はあ……本当にバカ」ジュリエッタはこめかみを押さえる。
「それであたし等を庇ってくれているつもりなんだろうけど、無意味だから」
「そうよ、橙夜君だけを行かせないわ」
「大丈夫ぅ、ダメだったらぁ、みんなでぇエルフの里にぃ、逃げましょう」
三人の少女は三様に拒否した。
「でも」
「うるさぁい」アイオーンはもう精神集中と魔法の詠唱に入っていた。
がしゃり、と鎧の音を立て、槍の衛兵二人が眠る。
橙夜は肝を冷やす。今の音は大丈夫だったのか?
だが屋敷の変化はなく、彼は安堵した。
その間に二人はジュリエッタ達に手際よく縛り上げられている。
ジュリエッタは地下へ続く階段を覗いていた。
「OK、もう見張りはいないわ」
一行が石の階段を下りると、鉄の扉に行き当たった。
「こんなのあたしがいたこれは無かったのに」
ジュリエッタが目を丸くしている間に、どこから得た術なのか再び簡単にアイオーンが針金一本で解錠する。
橙夜はそっと鉄扉を開き、中を確認する。
一人の男が大きな鉄鍋に向かっていた。どんな男か分からない。何せ顔には革のマスク、手には皮の手袋、体はやはり革の前掛けで覆っていた。
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