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すでに男達の輪には加わることなく、髪留めを外した長い髪をけだるそうに掻き上げながら、京香が健作の方にゆらゆらと近づいてきた。
旧専務に留まらず、七草にまで体を使って取り入っていたであろう京香。
(すべては俺や会社のため……。あいつにはもはや合わせる顔がない)
そんな健作の思いを知らぬように、
「長い時間不自由な思いをさせてしまってすいません。すぐに拘束、外しますね」
そう言って間近でじっと、眼鏡の中の瞳が健作を見つめる。
(瞳孔が開ききってるじゃないか!)
あらかじめ精神刺激薬を飲んだ上、二度も口移しであの小瓶の液を口に含んだ京香。
妙にクリアな白目をぎらつかせて、崩れた笑みを浮かべ、震える手でスーツのポケットから取り出した鋏で結束バンドを切り始めた。
腕のバンドが切られ、手が自由になる。
「貸せ。あとは自分で切る」
取り上げた鋏で脚のバンドを切り始める健作を眺めながら、京香がポツリと呟く。
「部長、ずっとお慕いしておりました」
そして、作業を終え立ち上がろうとした健作を留めるように、彼女は覆い被さった。
「馬鹿野郎、何する?」
健作はなるべく優しく、静かにそう言った。
「部長が、部長が、……欲しい!」
湧き上がる情念を、いやが上にも感じさせる、低い声音だった。
「部長が離婚されたと聞いた時から、もうわたしどうしていいのか……。でも、ダメですよね、さすがに。こんなことをしでかした上に、専務とも、あの七草先輩とも、それに色薬を調達するために、知り合いの漢方のお医者さんとも……」
「ば、馬鹿。もういい! それ以上言うな」
健作は震える京香の肩をしっかりと抱きしめた。
先方の担当者の要望だからと、半年先まで埋まってると評判のフレンチの予約を、どんな手を使うのか当日さらりと取ってくる女。社内の各部署から強引だとよく愚痴を聞かされはするが、健作の日頃の教え通り、何事にも諦めずに食らいつき、それ相応の結果を残してきた女。
(今回のことだって……)
「あいつらばっかりいい思いしやがって。俺は置いてきぼりか?」
涙声を悟られぬよう努めて明るく言った。少々無理があるが、健作の本心だった。
「すみません部長。少しも気づかずに。もっともですよね」
京香がずれた眼鏡を外して傍らに置き、トランクスを引き下ろし、躊躇なく健作のペニスに舌を這わせ始めた。
……社蓄。おそらく健作の一番嫌いな言葉。だがしかし、よくいったものだ。
(京香をこんなにも恐ろしい社蓄に、俺がしてしまったんだ)
そんな思いとは裏腹に何時になく漲った健作のペニスを、ねっとりと包み込む京香の口腔。亀頭の周りを舌がクルクルと這い、時折その漲りに刺激的な歯を立て、そしてまたねっとりと絡みつく。
(こ、こんなのは生まれて初めてだ)
「このまま、思う存分、わたしの口に、吐きらしてくらさいね」
京香が咥えながら健気に言う。
「馬鹿、まだだ」
甘美で情熱的な刺激に耐えながら、男達の方を窺うと、万事察しのいい城田が、健作に向かって親指を立て、残りの皆を連れ隣の寝室に移動していく。
皆が消えたのを見計らい、満を持して健作は京香を床に押し倒した。
彼女の上着を脱がし、ワイシャツを剥ぐ。
弾けたボタンが壁に当たり乾いた音を立てた。
タイトスカートの中に手を入れて、ストッキングを力任せに引きちぎる。
ずっと常軌を逸した行為を見せつけられ、昂ぶっている自分にようやく気づいたものの、それはそれでいいと、健作は思った。
「部長、お伝えしてないことがまだ……」
「何だ?」
「専務への色仕掛けの技を磨くために、人気風俗店に入店して、百本以上のチ×ポを抜いてまいりましたっ。ですから、ですから、わたしなど……」
「いいさ! お前が身を切って得たスキルを、これからは俺に存分に使えばいい。したいされたいで、お互いウインウインの関係じゃないか。それに、一生大事にすることも、しっかりコミットできるから」
「やだ、部長、また横文字……はうんっ」
口をキスで塞ぐと、京香の控えめな舌先が先に進むべきかどうか、おどおどと逡巡している。
(馬鹿野郎、こういう時は情熱的なキスで応えるもんだ!)
健作は舌を京香の喉奥に達するほどの勢いで突き入れた。そしてすぐさま、その意を汲んだ彼女の舌が小気味よく絡み始める。
(そうだ! それでいい)
タイトスカートを目一杯ずり上げ、露わになった扇情的で肉づきのいい太ももを摑んで、挿入する。
(ああ、なんて暖かいんだ!)
健作の腰に、京香の手が回る。
「ああ部長が……入ってる。夢みたい、です」
「俺だって、夢みたいだぞ」
「部長ったらもう、……またまた」
京香が今日初めて、屈託のない笑みを浮かべた。
豊かな胸に顔を寄せる健作の頭を、優しく慈愛に満ちた京香の両掌が包み込む。
「部長、ああ部長! みんなの希望の星……」
胸の谷にさらに顔をうずめると、鼻先に何かが当たった。
取り出すと、小さなUSBメモリーだ。
「何だこれは?」
「あ、これは七草先輩のパソコンから拝借した今回の専務派への不正献金の証拠です。ああ見えて彼、用心深いひとだから、いつ寝返ってもいいように証拠を集めてたみたい。なのに先輩のパソコンのパスワード、わたしの名前だったものだから、笑っちゃいました。これで専務派は一掃できます。……来週から忙しくなりますよ、部長」
行為を中断してそんなやりとりを交わしていたら、隣の寝室からことさら大きな喘ぎ声が響き始めた。
「ああっ、シュアン! ハオ・シュアン! はああっ」
最高! 超最高! シャオリンが、歓喜の声を上げているのだった。
「あいつら、いつの間にか国際親善してやがる」
「いいじゃありませんか。では、わたしたちも負けずに……」
(全く、負けず嫌いな女だ)
健作は、あたたかい慈愛の中にある漲りにさらに想いを込めて、ゆっくりと腰を動かし始めた。
(了)
旧専務に留まらず、七草にまで体を使って取り入っていたであろう京香。
(すべては俺や会社のため……。あいつにはもはや合わせる顔がない)
そんな健作の思いを知らぬように、
「長い時間不自由な思いをさせてしまってすいません。すぐに拘束、外しますね」
そう言って間近でじっと、眼鏡の中の瞳が健作を見つめる。
(瞳孔が開ききってるじゃないか!)
あらかじめ精神刺激薬を飲んだ上、二度も口移しであの小瓶の液を口に含んだ京香。
妙にクリアな白目をぎらつかせて、崩れた笑みを浮かべ、震える手でスーツのポケットから取り出した鋏で結束バンドを切り始めた。
腕のバンドが切られ、手が自由になる。
「貸せ。あとは自分で切る」
取り上げた鋏で脚のバンドを切り始める健作を眺めながら、京香がポツリと呟く。
「部長、ずっとお慕いしておりました」
そして、作業を終え立ち上がろうとした健作を留めるように、彼女は覆い被さった。
「馬鹿野郎、何する?」
健作はなるべく優しく、静かにそう言った。
「部長が、部長が、……欲しい!」
湧き上がる情念を、いやが上にも感じさせる、低い声音だった。
「部長が離婚されたと聞いた時から、もうわたしどうしていいのか……。でも、ダメですよね、さすがに。こんなことをしでかした上に、専務とも、あの七草先輩とも、それに色薬を調達するために、知り合いの漢方のお医者さんとも……」
「ば、馬鹿。もういい! それ以上言うな」
健作は震える京香の肩をしっかりと抱きしめた。
先方の担当者の要望だからと、半年先まで埋まってると評判のフレンチの予約を、どんな手を使うのか当日さらりと取ってくる女。社内の各部署から強引だとよく愚痴を聞かされはするが、健作の日頃の教え通り、何事にも諦めずに食らいつき、それ相応の結果を残してきた女。
(今回のことだって……)
「あいつらばっかりいい思いしやがって。俺は置いてきぼりか?」
涙声を悟られぬよう努めて明るく言った。少々無理があるが、健作の本心だった。
「すみません部長。少しも気づかずに。もっともですよね」
京香がずれた眼鏡を外して傍らに置き、トランクスを引き下ろし、躊躇なく健作のペニスに舌を這わせ始めた。
……社蓄。おそらく健作の一番嫌いな言葉。だがしかし、よくいったものだ。
(京香をこんなにも恐ろしい社蓄に、俺がしてしまったんだ)
そんな思いとは裏腹に何時になく漲った健作のペニスを、ねっとりと包み込む京香の口腔。亀頭の周りを舌がクルクルと這い、時折その漲りに刺激的な歯を立て、そしてまたねっとりと絡みつく。
(こ、こんなのは生まれて初めてだ)
「このまま、思う存分、わたしの口に、吐きらしてくらさいね」
京香が咥えながら健気に言う。
「馬鹿、まだだ」
甘美で情熱的な刺激に耐えながら、男達の方を窺うと、万事察しのいい城田が、健作に向かって親指を立て、残りの皆を連れ隣の寝室に移動していく。
皆が消えたのを見計らい、満を持して健作は京香を床に押し倒した。
彼女の上着を脱がし、ワイシャツを剥ぐ。
弾けたボタンが壁に当たり乾いた音を立てた。
タイトスカートの中に手を入れて、ストッキングを力任せに引きちぎる。
ずっと常軌を逸した行為を見せつけられ、昂ぶっている自分にようやく気づいたものの、それはそれでいいと、健作は思った。
「部長、お伝えしてないことがまだ……」
「何だ?」
「専務への色仕掛けの技を磨くために、人気風俗店に入店して、百本以上のチ×ポを抜いてまいりましたっ。ですから、ですから、わたしなど……」
「いいさ! お前が身を切って得たスキルを、これからは俺に存分に使えばいい。したいされたいで、お互いウインウインの関係じゃないか。それに、一生大事にすることも、しっかりコミットできるから」
「やだ、部長、また横文字……はうんっ」
口をキスで塞ぐと、京香の控えめな舌先が先に進むべきかどうか、おどおどと逡巡している。
(馬鹿野郎、こういう時は情熱的なキスで応えるもんだ!)
健作は舌を京香の喉奥に達するほどの勢いで突き入れた。そしてすぐさま、その意を汲んだ彼女の舌が小気味よく絡み始める。
(そうだ! それでいい)
タイトスカートを目一杯ずり上げ、露わになった扇情的で肉づきのいい太ももを摑んで、挿入する。
(ああ、なんて暖かいんだ!)
健作の腰に、京香の手が回る。
「ああ部長が……入ってる。夢みたい、です」
「俺だって、夢みたいだぞ」
「部長ったらもう、……またまた」
京香が今日初めて、屈託のない笑みを浮かべた。
豊かな胸に顔を寄せる健作の頭を、優しく慈愛に満ちた京香の両掌が包み込む。
「部長、ああ部長! みんなの希望の星……」
胸の谷にさらに顔をうずめると、鼻先に何かが当たった。
取り出すと、小さなUSBメモリーだ。
「何だこれは?」
「あ、これは七草先輩のパソコンから拝借した今回の専務派への不正献金の証拠です。ああ見えて彼、用心深いひとだから、いつ寝返ってもいいように証拠を集めてたみたい。なのに先輩のパソコンのパスワード、わたしの名前だったものだから、笑っちゃいました。これで専務派は一掃できます。……来週から忙しくなりますよ、部長」
行為を中断してそんなやりとりを交わしていたら、隣の寝室からことさら大きな喘ぎ声が響き始めた。
「ああっ、シュアン! ハオ・シュアン! はああっ」
最高! 超最高! シャオリンが、歓喜の声を上げているのだった。
「あいつら、いつの間にか国際親善してやがる」
「いいじゃありませんか。では、わたしたちも負けずに……」
(全く、負けず嫌いな女だ)
健作は、あたたかい慈愛の中にある漲りにさらに想いを込めて、ゆっくりと腰を動かし始めた。
(了)
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