【ライト官能】新しい義母さんに誘惑されて困ってます〜妖女たちに魅入られた僕の3,290日〜

向坂倫

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第二章 夢の生活

6 突然過ぎるオナサポ

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 夕食を済ませてきょう二回目のお風呂から上がると、リビングのソファに沙夜さんがあぐらをかいて、封筒の整理をしていた。

 うしろの掃き出し窓が全開していて、庭の暗がりを背景に、隣の公園から張り出した桜の木から、花びらが雪のように降り注いでいる。

 僕に気づいて沙夜さんは、あの時のカシミアセーター姿でVネックからほんのりと谷間を覗かせ微笑んだ。

 この家で美女と夜桜だなんて、二週間前には想像もできなかった夢のような風景だ。

「ここって素敵よね。気がついた? お庭にある屋外灯の向きを少し変えてみたのよ。桜に光が当たって幻想的でしょ」

 沙夜さんは幾分ドヤ顔で微笑みながら、生足の膝頭にくっついた桜の花びらをそっとつまんで、ローテーブルの上に載せた。

「セーター、伸びちゃったね」

「いいわよ。部屋着に下ろすから、というかもう下ろした」

「なんか、裸Yシャツみたいでエロいよ」

「ばか。ちゃんとショートパンツ穿いてるもん」

 そして僕たちはキスを交わした。離れがたい、って感じのちょっと長めのキス。

「ねえ、なにしてんの?」

「ああ、これ。あの時届いた写真見てたのよ」

 ――廊下でのセックスの真っ最中に届いた荷物の中身は、祖母の昔の写真だった。
 差し出し元は静岡で、はがきサイズくらいの白黒写真が撮影月別に封筒に小分けされていて、およそ五年分。けっこうな量だった。写真の他には『家長の死去に伴い』だとか『遺品の分配』だとか、その家の家政婦長を名乗る女性の達筆な縦書きの手紙と、祖母の葬儀の時に配った粗品に同封されていた礼状が、添えられてあった。

 写真はというと、そのほとんどが、若き日の祖母のプライベートなグラビア写真という感じで、中には赤ん坊だった親父を抱いたものも数枚あった。ちょっと他人さまには見せられない、いわゆるご開帳って感じの昭和エロ写真みたいなのもふんだんに混じっていて、きれいだしエロいしで、思わず股間が膨らんでしまい、たいそう複雑な気持ちになった。

「先生宛のこんなプライベートな物、留守中に開封しちゃったでしょ。ちょっと焦るわ」

「親父今頃、なにしてるのかな?」

「今、先生はザグレブかな。クロアチアよ。大酒飲みの国」

 沙夜さんは定期的に親父と連絡を取り合ってるらしかった。僕といろいろある中でも、沙夜さんと親父は、親密に繋がっている。 

「親父出生の秘密、か。僕がうっかり開けちゃったことにするから大丈夫だよ。この亡くなった僕のお祖父ちゃんかもしれないひと、ばあちゃんのお葬式にきてたんだね。……それにしてもすごいな、ばあちゃんのミニスカ。脚なげー」

「少し気になって、いろいろある写真の中から、時系列に沿って並べてみたんだけど、ちょっとこれ見てくれる?」

 ローテーブルの上に沙夜さんが並べた、五枚の写真を僕は眺めた。

「まずは、一枚目。うら若き清楚な女学生ね」

 公園かな。うしろに噴水が見える。ポーズを求められたのか、はにかんだ笑みで、木の幹に片手を添えている。地味な子って印象だけど、紛れもなくばあちゃんだ。

「そして二枚目。みんなのアイドルよね」

 どこかの倉庫前。薄汚れた軽自動車の荷台に、作業服姿の若い男たちがひしめくように乗っている。その中心でにこやかに微笑む若き日のばあちゃん。
「サロペット着てるね。この時代だからオーバーオールか。髪に花までつけて、かわいいわよね。で、そのつぎ……」

 昼間の温泉? 木の湯船に浸かって艶めかしい視線で振り返るセミヌードの女性。ああ、やられちゃったんだって一目でわかる目つき。日の光に輝く湯に洗われた、しなやかな体と、背中の脇から覗く形のいい横乳に、孫ながら見とれてしまう。

「お肌つやつや。ばあちゃん女優みたいにきれい」

「その次。これはオフィスでパーティーってところかしら?」

 バストがこぼれ落ちそうな、サテンのドレスに身を包んだ若き日のばあちゃんが、飲みさしのグラスが無造作に置かれたモダンなデスクの上で、ふざけてセクシーポーズをキメている。

「そして最後の一枚。裏書きには『お別れの日。孝蔵と』と書かれてる」

 大きな駅か空港で、屋根つきのベビーカーとともに、アフロヘアに大きなサングラス、パンタロンに厚底のサンダルという、母親らしくないキレキレなスタイルで、豪快に笑う若き日のばあちゃん。赤ん坊に親父の面影がしっかりと感じ取れて笑ってしまう。

「……どう思った?」と沙夜さんが神妙な顔で聞いてくる。

「うん。無垢な少女が、温泉で犯られちゃって、孕まされて?」

「ばか! 自分のおばあさまになんてこと言うの!」

 僕を叱りつけたあと、沙夜さんは遠くを眺めるような顔つきで続けた。

「わたしの見解はこうよ。……高校卒業間近の純真な少女が、夢見がちな青年と知り合った。両親の反対に合いながらも、青年の夢に共感した少女は、青年の会社設立に協力。いつしかふたりは男女の関係となる。幸い会社の経営は軌道に乗りやがて急成長。いつしか大人の女に成長した少女は、男の子を身籠もる。幸せな日々。だがその幸せは長くは続かなかった。青年に新しい女ができた。それも大手ゼネコン創業一族のご令嬢。そこに第一次オイルショックの到来。経営難に陥った青年の会社は、そのゼネコンの傘下に入りなんとか持ち堪えた。そして青年はその令嬢と結婚。お母さまは潔く身を引き、息子とともに旅だった」

 なにやら妄想たっぷりの作り話で繋がった、沙夜さんなりのばあちゃんの過去? 
「妄想じゃないわよ。調べたらすぐ察しがついた。ほら、この軽トラにある社名と、あと、このオフィスのお母さまのうしろにあるガラスの衝立のロゴマーク。見覚えあるでしょ」

 これって、有名なオフィス家具の会社? うちの学校の机がここのだから、すぐにわかった。

「ネット上にあるこの会社の社史や、この写真についてきた家政婦長とやらの、回りくどい文面、そして、もうこれきりにしてください、って意味で返してきた、お母さまのお葬式の礼状。総合して推測するに、そんなとこかな、って感じ。わたしは研究者だから、ほんとうはそんな曖昧に終わらせずに、きっちり検証したい気持ちはあるけど。まあ、先生もきっと、このままでいいって、おっしゃるわ」

「それが事実なら、写真のばあちゃん、なんで笑ってんの? 悔しくないのかな」

「それがあなたのおばあさまってことでしょ。……素敵だとわたしは思う。会社を盛りたてて大きくして、役目を終えて、風のように去る。……あげまんの極みだわ」

「あげまん、か。幸運を呼ぶ女。なんか腑に落ちる。ばあちゃん入院してた病室って、うちではとても払えそうにない応接セットやキッチンまでついてる豪華個室だったし、お葬式の時に受付に座ってたひと、商工会の会長さんだって、誰かが言ってた」

「わたしなんて、遺産を食いつぶしながら、ただ生きてるだけ。太宰治の『斜陽』、読んだでしょ。わたしは貴族じゃもちろんないけど、あの小説の主人公とおんなじ。みんな逝ってしまっててひとりになっちゃった」

 ひとりじゃないでしょ。沙夜さん。

 言葉にする代わりに、僕は沙夜さんの手を握りしめた。

「あーあ、このまま枯れたくないし、できればわたしも、種蒔くひとになりたいな」

 ……いっぱい種、蒔いてると思うけどな。

「風が出てきたから。窓、閉めるね」

 僕がそう言うと、沙夜さんは庭に降りそそぐ桜の花びらを、名残惜しそうに眺めた。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 翌週から、僕は美術予備校に通うことになった。

 日曜の朝、予備校講師をしている沙夜さんの後輩から連絡があり、そう決まった。とりあえず夏までの特別カリキュラムを組んでもらったから、きょうは予備校見学して帰りに画材一式を購入してこい、と沙夜さんから命令を受けた。

「火から金曜は放課後三時間、日曜は昼の六時間、みっちり実習を受けなさい。出遅れてるんだから、しっかりやるのよ!」

 翌月曜日の放課後、沙夜さんは学校に現れた。僕の受験計画の報告と母親としての挨拶とのことだが、急遽どう連絡を取り合ったのか、担任と美術担当教師が会議室にて僕同席で出迎えた。

 突然のセクシーな来訪者に全校生徒が騒ぐ窓々に向かって、どこかの王室のひとみたいに、沙夜さんは優雅に手を振りながら学校をあとにしたが、本人曰く、地味目のオーダーメイドスーツは、あまりにも体にフィットしていて、Gカップバストに目を奪われた生徒の中には、その場で自慰行為におよんだ者数名、とあとから漏れ聞いた。

 そしてその月曜の日暮れ過ぎ、斉藤と吉田が、放課後の興奮冷めやらぬという調子で、揃って家にやってきた。

「ちーっす。これがリカーサイトウ特製のジャンボグルメハンバーグチーズのせ、徳用パックでーす」

 沙夜さんはヘアクリップで髪をカジュアルにアップして、いつものミリタリージャケットをオープンで着用。中にぴったり目の黒のラメ入りのTシャツとロングの軽めな柄物フレアスカートという、おしゃれ主婦の家コーデという格好で出迎えた。

「ああら、サイトウのハンバーグ、わたし大好き!」

「ご愛顧ありがとうございます。国産食材使用一筋で頑張ってまーす」

 手土産持参の斉藤の影に隠れて、隠れ熟女好きの吉田がどぎまぎしている。それもそのはず、吉田は美魔女モデル目当てに、主婦向けのファッション誌を時折購入するようなやつだから、きっと今晩の沙夜さんの服装は、吉田的にはドストライクに違いないのだ。

 だがしかし、熟女好きに限らず、香水のいい匂いがするミリタリージャケットから伸びた、か細い首や、ラフに腕まくりした先に現れる、血管の浮いた女の腕みたいな、そんなツンデレ感に心奪われない男子なんてまあいない。

「斉藤くんありがとう。助かるわ。吉田くん、例の物、持ってきてくれた?」

「ファッション系のエッセイ何冊かと、言ってたココ・シャネルの伝記も入ってます」

 と、紙袋を沙夜さんに手渡している。

 放課後の会議室前で先生がくるのを待つあいだ、一緒についてきたこいつらとしばらく話しているのは知っていたが、こんなことを話してたんだな。

 ふたりが廊下に上がったところで、沙夜さんはそれぞれにハグを交わした。石のように固まった吉田を抱きしめて、僕に妖しげな視線を送ってくる。

 祖母に触発されたのか、親父の帰りを待たず、突然ざくざく不穏な種を蒔き始めた沙夜さん。リミッターは依然外れたままのようだ。

 斉藤持参のハンバーグをおかずに四人で夕食を楽しんだ。沙夜さん作の味噌汁をベースに僕が耳打ちして仕上げた、じゃがいもと玉ねぎの味噌汁を、ふたりとも気に入り、沙夜さんの賢母ぶりを褒め称えた。

「沸いたぁ。沙夜ちゃんのおっぱい柔らけー」

 沙夜さんをリビングに残して部屋に入るなり、斉藤が僕に蟹ばさみしながら、ベッドの上で呻いている。

「パワーもらったって感じ? 俺もう、なんだってできそう!」

 吉田が性的耐性の進化に希望を見いだし、悶絶しかかっている。

「沙夜ちゃんって呼んで!」などと親密さを大盤振る舞いしながら、高額図書カードにキスマークまでつけてふたりに渡していた沙夜さん。

「男子校生たちに熱い性欲の目を向けられて、テンション上がっちゃってんだよ、きっと」と、まんざら外れてもいないいいわけで取り繕う僕。

「あ、そうそう、これ、この前言ってた親父にもらったDVD。吉田とシェアして」

「おお、ありがと! 開封してなかったら、殴ってやろうと思ってたけど、ちゃんと観てんじゃん。……でも、貧乳系と熟女系、巨乳ものがないねえ。親父さん、沙夜ちゃんに気を遣ったんかねえ」 

 自分の妻を息子に差し出すようなミッション(たぶん)を与えておきながら、そんなとこに気遣うとは、なんとも親父らしい。

「これちょっと観てみようぜ」と勝手にプレーヤーを操作して、再生し始めるふたり。

「ボリューム上げんなよ。母さんに気づかれちゃうから」

「母さんか。吉田聞いた? 桜木はいいなあ。まあ、きょうはおまえの一万分の一くらいはいい思いさせてもらったから許す。……おお、こいつエロいかも……」

 そんなこんなで、恒例のアダルトDVDタイムが始まった。特にきょうはネタが多く、ふたりとも待ちきれないって感じで興奮している。こんなとこ沙夜さんに見つかったら、叱られる、というか、さらにテンションが上がってマズい事態を生む可能性が……。

 僕は沙夜さんの様子を窺うため、部屋のドアに近づき少し開けてリビングの方を覗いた。

 ひゃっ! 

 沙夜さんがドア脇の壁にもたれて、目前で微笑んでいた。

(なにしてんだよ!)

 ぎょっとして目で語りかけると、沙夜さんは持っていたクロッキー帳を開いた。

『みんなの前でお母さんって呼んでくれてありがと』

 手書きで書かれたページをADのフリップみたいにこちらに向けた。

(わかったって!)

 と目で返すと、壁にもたれたまま、答えるようにまためくる。

『お礼に、いいこと提案してあげる』

(なに?)と目で聞くと、

『男子校生を代表して、わたしで抜きなさい』と、まためくる。

『今、ここで!』

『サポートしてあげるから。頑張って!』

『スリルを楽しめ!』

 フリップはどんどんめくられる。おい、このクロッキー帳って、きのう僕が買ってきた画材を勝手に……。もう、無駄遣いしやがって。

 とはいえ、ひっそり廊下でサインペン片手にクロッキー帳に向かい、子細に計画を巡らせる沙夜さんの姿を想像すると、ほのぼのと笑みがこぼれる。相当毒されてるなオレ。

「桜木、なにしてんの?」と、部屋の奥から斉藤の声。本棚で仕切られていて、むこうからここが見えないのが幸いだ。

「母さんこないか、見張ってる」

「前は扉全開して平気で観てたもんな。おっぱい柔らかくって最高だけど、めんどくさい? ジレンマだねえ。……おおっ、いきなりすげえピストン! 吉田こんなん好きだろ?」

 やりとりをしているうちに、沙夜さんはスエットパンツの上から、ペニスをまさぐり始めている。壁にもたれたまま、細い指だけが、股間を這っている。

(サポートしてあげるって、オナサポってこと? そういうことね)

 僕が沙夜さんの意をくんでペニスをそっと取り出してしごき始めると、壁にもたれたままの沙夜さんが微笑みながら、うんうんとうなずいた。

 右手でしごきながら、左手の中指の先で沙夜さんの唇を撫でると、すぐさま指は咥え込まれた。

 指の腹を、小魚のように舌がはぜる。手のひらに吹きかけられる熱い吐息。ああ、エロい。

 沙夜さんは、ミリタリージャケットの前を開いて、誘うように尖ったバストを前に突き出した。

 バストの先に乳首の突起が浮き出している。ノーブラ? これであいつらにハグしてたのか? どうりであいつらを魅了したわけだ。

 僕はバストをゆっくり味わうように揉んだ。ザラザラのラメ入りTシャツ越しの背徳感。ふんわりソフトな弾力が心地いい。

 Tシャツ地に浮き出た突起を刺激すると、沙夜さんは、膝をガクつかせながら、フレアスカートの前をたくし上げ、自ら指を使い始めた。

 たくし上げたスカートから伸びた、すらりと長い生脚のふとももが小刻みに痙攣し、縮こまった足先が床を滑る。

(えっちな母さん。イクのは僕が先だよ)

 しごく手を速めながら、目で合図を送ると、沙夜さんは突然すっと前に移動して、僕の肩越しに部屋の中の様子をチェックしてから、ペニスの前にひざまずき、またフリップをパラパラめくった。

『若くて熱いほとばしりを期待しています』

『今回は見るのに専念したいわ!』

 そうだよね。土曜日はしっかり見れなかったって言ってたね。

 僕が体を反らせて、しごくペニスを前に突き出すと、沙夜さんは豊かなバストを両手で持ち上げて、亀頭の先を回すようにTシャツ地でこすり始めた。

 この前ドレスに不用意についたナメクジの這い痕みたいなカウパーの光る筋が、ラメに混じるように、Tシャツの胸に幾筋も曳かれる。

 沙夜さんは柔らかくただ微笑み、それを見過ごしながら、かぎ爪型にした指でTシャツのネックを引き、フィニッシュ前の大サービスと言わんばかりに、深い谷間に僕をいざなった。

(母さんの胸の谷間、やっぱ最高!)

 僕は沙夜さんの茶色い瞳を見つめながら、しごくペニスを谷間に埋める。

 ああ、気持ちいい。自分で射精コントロールしながら、余裕を持って沙夜さんのすべすべさらさら肌を堪能できる。

「ダメダメダメダメ、イッチャウ、イッチャウ……」 

 部屋の中のビデオから、クライマックスらしいあえぎ声が聞こえてくる。これ以上長くはマズい。僕もそろそろクライマックスにするか。

 谷間から亀頭を抜く。沙夜さんはジャケットを脱ぎTシャツを整え、ひざまずき直した。

 眉間に皺をよせながらも薄笑いという、切なうれしい顔をして、しごくペニスの鈴口あたりをじっと見つめている。

 期待に満ちた細い指先が、僕のもものつけ根あたりをゆっくりと動く。

 しごくスピードをさらに速めると、沙夜さんは少し体をこわばらせて、自分のみぞおちをそっと指さした。

(了解! そ、そこに出せばいいんだね?)

 沙夜さんは鈴口と僕の顔を交互に見ながら何度もうなずく。

(出そう! 出る! 出ちゃう! ああ)

 そして……。

 どぴゅ、どぴゅっ!

 発射されたザーメンは、みぞおちから首筋を駆け上がり、形のいい沙夜さんの顎で大きく弾け、黒いラメ入りのTシャツに滴った。

 精液の粒をまつげにのっけて、あ、り、が、と、と口をつくる沙夜さん。用意周到に、傍らから濡れタオルを引き寄せる。

 そしてドアは静かに閉まった。

 やっぱ、沙夜さんって……。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 そのあと、一時間ほどビデオを楽しんだふたりは、リビングに飾ってある沙夜さんのマーメイド写真をスマホで撮影し、満足そうに帰っていった。
 見送る沙夜さんのTシャツが替わっているのを、ふたりが気づいた様子はなかった。

「ねえってば。ちゃんと出るとこ見れた?」

 沙夜さんの膝まくらで、ソファに寝そべりながら僕は聞いた。

「こんどは頑張って目を開けてたから、しっかり見れたわよ。ちょっと感動!」

「スリルはあったけど、あん時じゃなくて、今でもよかったんじゃね?」

「そうだけど。あの局面では、男子校生のほとばしり、ってとこがわたしの中では重要テーマだったのよ。えっちなビデオ観ながら興奮してる若者たちの殺気だった空気っていうのかな?」

「やっぱ、母さんってヘンタイだね。もしかしてきょう学校でみんなに窓から見つめられて、興奮したとか?」

「ばか。……うん、ちょっとした、かな。ていうか、濡れた。うちの大学、女子が多いし、あんな男だけの世界って初めてだったから、なおさら」

 そう言いながら、もう僕の股間をまさぐっている沙夜さん。

「ねえぇ、玄くんどうするの? 光くんの予備校もあるし、できれば先生が帰ってくる前がいいから、土曜日のお昼間とかどう? ここに呼びなさいよぉ」とちょっと甘え声。

「そんなに会いたい? でもなあ、なんか危なげなんだよなぁ、母さんって」

「ずいぶんじゃない? 唯ちゃんの彼氏さんだよ。そんな軽はずみなことしませんから」

「ほんとに大丈夫?」

「たぶんね」

「もう、なに? イラつくなあ! 親父の留守中、僕は母さんを見守る義務があるって、まあ、そんなこと思ってるんだけど。……僕にはそんな資格はない?」

 膝まくらから起き上がろうとした僕を、沙夜さんは押しとどめ、じっと僕の顔を覗き込んで言った。

「めんどくさいやつだな。心配すんな。わたしは先生と光くん以外の男に、まったく興味なんてないんだから。それに、……大好きだよ。光くんのそんなとこ」

 ……なんかいい雰囲気。ここはキスかな、離れがたい感じで……。

 ガクン! 沙夜さんが出し抜けに膝をずらしてすっくと立ち上がった。

「いてえ、なんだよ突然?」

「忘れるところだったわ」と、ローテーブルの上のスマホを投げてよこす。

「キー解除して、こっちにちょうだい?」

 ああ、土曜日撮った写真か。そう思いながら、開いて渡すと、サクサクっと操作して戻ってきた。

 貴重な写真、消されちゃったな。と、待ち受け画面を見て凍りついた!

「なっ! なにこの待ち受け?」

「チ×ポの先こんちわー、てね。わたしも楽しそうにVサイン。光くん、あんたこれからその待ち受けで生きていくのよ」

「もぉう、冗談はよしてよ! 沙夜さん頭おかしくなっちゃった? こんなの、その辺に置いとくこともできないじゃない!」

「そうよ! 一瞬でも誰かに見られたら、それでおしまい。秘密を持つって、そういうものよ。親父には内緒にするからぁ、なんて軽々しく言わないの。わかった? それから、お母さんでしょ!」

「……ごめんなさい。心に刻みます、お母さん」

 現在時刻二十三時四十七分。Vサインの沙夜さんの頭にかかったスマホの時刻表示を、僕はただ、じっと見つめた。

 奇天烈なはずなのにしごく正論に思える。沙夜さんじゃなく、死んだ祖母に叱られた、みたいな気になった。  

「あとね、わたしたちのミッションは、ただならぬ親密な空気を、先生の前で醸し出すだけなんだから。……先生が帰ってきても、わたしたちのこと、絶対に口にしちゃダメだからね。疑われて問い詰められても、嘘をつき通すこと」

 密かな声で僕にそう語った沙夜さんは、秘密を持つ女の顔をして、僕を力強く抱きしめた。
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