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05 遅刻ダメ、絶対。

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「もうほらぁっ、兄ちゃんのせいで遅刻ギリギリの時間になっちゃったじゃんか! せっかく余裕もって来たっていうのにさ」
「ごめんごめんって。でも、最後はふぅもノリノリで俺のちんぽ美味しそうにぱっくんしてたじゃ」
「わあああっここもう玄関外だってばこのバカ兄貴ぃぃ!!」
「ふがっ、ふぉんなふぉといっふぇも、ふぉふぉのあふぁーふぉふぁべうふいふぁらもうふぉっふひばふぇれふふぉおもうふぇふぉ…」
「何言ってるかまったくわかんないけどっとにかく黙って兄ちゃん!!」

時刻は八時十分。
前日の夜の十時に就寝に就き、朝の五時三十分には目覚めテキパキ行動し時間を計算しながらアパートにほぼ毎日のように通っている二葉であったが、結局それぞれが会社と中学校に赴くために部屋を後にするのは、大体が八時を過ぎたこの時間。
出勤時間が九時の一詩はまだしも、
朝のホームルームが八時三十分の二葉には中々どうしてギリギリな時間帯である。
けれど、ぷりぷりと怒り文句を垂れる二葉にも、
こうして予定していたはずの時間がズレ込んでしまう原因は充分にあるわけで。

『ふがっ、そんなこと言っても、ここのアパートの壁薄いからもうとっくにバレてると思うぞ…』
さらに言うと、このMaison de・KOREMOTOは洒落た名前に対しかなりのボロアパートで壁が薄いため、
おそらく自分たち兄弟の『禁断の行為』は06号室、
隣の住人には聞こえている確率はかなり高いと兄の一詩は踏んでいる。
ただ特にその隣人からこれまで何かを咎められたことはないのもあってか、
呑気な兄は今日も今日とて朝からご機嫌で一回りも下の実弟に、変わらず禁断の行為を仕掛けるのだった。

ぽこぽこと顔を真っ赤にさせながらこちらを下から睨んでいる二葉の可愛さに、
にへらっとだらしない笑みを浮かべる一詩。
押さえられていた己の口もとの二葉の両手を、ぎゅっと上から優しく重ねるように握りつつ外し。

「ぷはっ…怒ったふぅもめちゃかわだけど、それよりもさ」
「めっめちゃかわって…っ、い、いやそれよりもっておいっ…!?」
「まぁまぁ。それよりも明日土曜だし、ふぅはどうするんだ? 今週も泊ってく?」
「! へへっそれはもちろん! 母ちゃんもそのつもりで話進めてくれたぞ」
「さっすが俺たちのお袋っ、話が早くて助かるわぁ。んじゃ二葉、今夜は…」

そう玄関前、口を開いたところで、

「――あ、」
「え? あっと、成宮さんじゃないっすか。おはよーございまっす」
「おはようございます、菊池さん。二葉くんもおはよう」
「はいっおはようございます成宮さんっ」

後ろから同じMaison de・KOREMOTOの08号室の住人である青年、
成宮風汰(なるみやふうた)が明るく声をかけてきたため、そちらに同時に振り向く一詩と二葉。

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