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足りなさその21、 ――…あれ……これ、なんだろう…?
しおりを挟む「――それじゃあやまっち、昨日はオレの誕生日祝ってくれてほんとありがとうございましたっ! それと酔っぱらって寝ちゃったせいで、今日の朝までずぅっとベッド占拠して色々迷惑かけたのはほんとの本当にごめんねっ…」
「も、もう何度も謝んなくたっていいから……気にするなって、そう言ったろう?」
「! …うん、わかった。あっでもでもっ、今度はちゃんとセーブするから、またすぐに一緒に宅飲みしよーねやまっち♡ 絶対だよっ♡」
「……っ、ああ…また一緒に飲もうな、頼人」
20歳の誕生日を迎えた土曜日から、知らぬ間に――というか、オレがまさかのお酒3本目で酔って爆睡しちゃって――1日が経ってしまった日曜日の午前11時ちょっと前。
そういってオレを玄関前まで見送ってくれた優しいやまっちの笑顔にきゅんきゅんと胸をときめかせながらも、オレは大きく手を振ってやまっちと元気に別れたんだけれども。
「………やっぱり、オレが起きてからのやまっちの態度……なんかおかしかったよねぇ…」
自分ちのアパートに帰ってからの夕方、午後7時過ぎ。
軽く作ったお夕飯を食べ終わった後、目の前のテレビから流れるバラエティー番組の楽しく騒がしい声たちをBGMにしながら、オレは今日のやまっちのことを思い出し、記憶をさかのぼさせる。
あの後すぐ、まるで空気を読めずに、
ぐ~…、
「!!」
「! …えへへ、いっぱい寝た…? ら、お腹空いちゃったみたいです♡」
「っ!? ……ご、ゴホンっ……じゃあ、ご飯にしようか」
「うんっやったぁ♡」
お腹を鳴らしてしまったオレに、やまっちは何故か1度咳払いしたのちにいつもの優しい笑顔でご飯にしようと言い、ちょっと早めの朝食を一緒にとることになり。
「ええっ嘘ぉ、オレってもしかしなくてもお酒弱いのかなぁ…? 確かに3本目何飲んだか全然覚えてないかも……」
そこでオレは初めて、自分が昨日のバースデーパーティーの席で『お酒を3本』飲み終わると共に即寝落ちをしてしまったという事実を、やまっちから聞かされたのであった。
全然記憶がない……確かに2本目のお酒飲み終わって、3本目を手に取ったまでは覚えてるんだけど……手に取ってから後のことがまったく思い出せないのだ。
どんなタイプのお酒を飲んだかさえもまったく。
でもやまっちが嘘なんてつくはずもないし、ほんとにオレお酒3本飲んで酔っちゃったんだな……と納得し。
うう…それでオレ朝やまっちのベッドの上にいたんだっ……なのにオレってばそのベッドの上で、あっあんな変態チックなコトしちゃって、はっ恥ずかしいにもほどがあるっ…!?
きっとやまっちオレをズルズル引っ張ってベッドに運んだんだと思うけど、お、重かったかな……いや絶対重かったよねっ、ああ~…もうほんとオレのバカバカっ!!
「じゃ、じゃあ…今度からは今日みたいにやまっちに迷惑かけないように、しっかりセーブして飲まないとだっ、ほんとごめんねやまっちぃ…!」
と、オレが涙目になりつつも謝ると、
「っ、き…気にするなって、頼人……は、はは……」
「! ……?」
そう、またいつもの優しい笑顔を見せながらやまっちは諭してくれたんだけど……でもやっぱり。
「なんか、ぎこちない……というか、とにかくどこか変な感じがずっとしてたんだよね…?」
どこが変だったのかって言われると、上手く答えられないんだけどさ。
なんていうか――まるで『何か』を隠している、みたいな。
「でも、やまっちがオレに隠し事なんてそんなこと……っ、」
自分は『やまっちのことが好き』だって最大級の気持ちを隠して秘密にしてるのに何言ってんだって感じだけど、それでもやっぱり、大好きなやまっちに本当に何か隠し事されていたとしたら……ううっ、ヤバい泣いちゃうかもしんないぞっ……どうしようっ…!!?
「――って、なっなに子供みたいなこと言ってんのさオレはっ…!! いいのっ、やまっちに隠し事がひとつやふたつあったって、オレはやまっちのことずっとずっと大好きなままだもんねっ、へーんだ!!!」
一体どこの誰に向かって叫んでいるんだか、オレはそれこそ20歳という大人な歳を迎えたとは思えない子供みたいな宣言を一人しながらも。
「と、とにかく今日はオレも疲れちゃったし、明日も大学あるんだしいつもより早めにお風呂入っちゃおう…!」
そう言って気を取り直すかのようにすくっと立ち上がり、お風呂場へと足早に向かい温かいシャワーのノズルを捻ろうとした、
その時。
「――…あれ……これ、なんだろう…?」
そこでオレはふと、裸になった自分の身体の一部……左腕の肘に近い場所、身体の側面とピッタリとくっつくまっすぐにしていたら見えなさそうなその部分に、
何か変な……カピカピとした感じの白っぽい塊の残骸のような跡が、うっすらと残っていたのに気づいたのである。
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