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足りなさその26、 気を緩められるのもここまで。
しおりを挟む「――それじゃあ、2回目の宅飲みっカンパーイ!!」
「か、カンパーイ……っ」
壁に掛けてある時計の示す時刻がちょうど午後の7時をまわった頃、オレの乾杯の挨拶で、やまっちとの2回目の宅飲みがとうとう始まった。
前回の時と同じく机の上にたくさんのお菓子やつまみ……そして本日の計画に必須の色んな種類のお酒が並べられ。
「……えっと、これも一応俺のおススメの酒…なんだけどさ…」
「えっほんとっ!? わぁっじゃあオレそれ飲む飲むぅ♡♡」
「っ、そ、そうか…」
そう言って、遠慮がちな感じにやまっちがこの前の時みたくオレにおススメだというお酒を教えてくれたので、オレは一瞬計画のコトを忘れ、めっちゃキラキラした瞳でそのお酒に勢いよく口をつけたのだった。
……や、だってやまっちがわざわざおススメしてくれたんだもんっ、これはまず絶対に飲まなきゃいけないモノでしょ♡♡♡
「ぷはぁっ! …へへっ、この前のもすごくおいしかったけど、これもほんとにおいしかったぁ♡ やっぱりやまっちのおススメに間違いはないねぇ♡♡」
案の定、やっぱりやまっちのおススメしてくれたお酒はとってもおいしくて、オレは思わず満面の笑顔になってしまっていた、えへへ♡
――けれど、気を緩められるのもここまで。
「オレ、お酒にすっかりハマっちゃったかもだ、ふふ♡」
言いながら、オレはスッと自然に2本目の缶ビールに手を出し、口をつけ、そして――…
カタンっ、カラカラカラ……、
「………え、」
「うぅん……ぅ…」
「…へっ、えっ…あ、あれ…まさか、頼人……」
「……ん、くぅ……」
「―――う、嘘だろ…だって、まだ2本目なのに……っ!??」
2本目のビールを空っぽにすると共に、少し虚ろな気分になりつつもオレは横目でチラリとやまっちの存在を確認し。
一瞬、一瞬だけやまっちが視線を別のほうへと向けたそのタイミングを狙って、持っていた空の缶を机の下に落とし、オレは自分の身体を目の前の机に突っ伏すようにして、くたりと倒れ込ませたのである。
「…えっ、えええっ!? なっなな何でっ、だって今飲んでたのは2本目なはずっ……えっ、もしかして知らぬ間に3本目に移って…!? ……い、いや数はあってる、確かにこれは2本目だ……え、じゃあ何で……??」
『3本目』で寝ちゃうはずのオレが、まさかの『2本目』のお酒を飲み終わったと同時にくぅくぅ寝息を立て始めちゃったコトに対して、当然頭上からやまっちのものすごく混乱した声が聞こえだす。
目を瞑ってるので声だけでしか状況が把握できないけど、多分今やまっちは床に転がった空の缶を持って数を確かめったっぽい。
そしてそのままゆさゆさと寝てるオレの肩を揺すり。
「っ、おい…おいってば頼人、おいっ…お~い頼っ………だ、ダメだ…本気で寝てる……嘘だろ、だって3本で完落ちなはずじゃ……え、ええっ…???」
「……すぅー……」
「……さ、3本目じゃないのにこんなに熟睡してるって……もしかして、この前の時も…ほんとは2本目を飲んだ時点ですごく眠かったけど、初めての酒だったから無意識にたくさん飲んじゃってて……それで3本目で限界がきて糸がフッと切れちゃったってだけ……ってこと、なのか…?」
混乱しまくりながらも、オレが3本目じゃなくて何故2本目を飲み終わった時点で寝ちゃってるのかについて色々と考えだすやまっち。
……うぅ、ごめんねやまっち。
オレ確かに今もちょっと頭がフラフラふわふわな感じはあるにはあるんだけど、まだちゃんと意識はあるんだ。
やまっちの声も全部ハッキリ聞こえてるよ……ごめんね、混乱させちゃってごめんねやまっち、これも『あるコト』を確かめるためなんだよぉ……あと、目開けちゃいそうになるからそんなに肩は揺すらないでくれるとありがたいかもです……うん、お願いシマス。
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