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足りなさその27、 ―――…え、

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やまっちに申し訳ない思いでいっぱいだけど、ここで目を覚ましたら台無しだっ……と、オレは必死に眠ったフリを続ける。



「っ、この場合…は、どうしたら……」
「――…って、いやそもそも別にいいじゃないかっ、頼人が3本で酔おうが2本で酔ってしまおうがさっ!!?」
「……とは、いえ……」


オレがぎゅっと目を瞑り身体を動かさないようにしてる間にも、やまっちは何か一人で戸惑った声をあげたり、急にツッコミだしたりと大忙しな感じで。


「っ、でもべっ…ベッドは………や、でもでもやっぱりこのままじゃ……あっ、じゃあ予備の布団っ……いや、あれすっごい薄いしあんまりっ…」


……ん? え、あっもしかしてやまっち、またベッドに寝てるオレを運んでくれようとしてるの!?
わっ、ど、どうしようっ…なんかすっごく緊張してきちゃったんですけどっ…!!


やまっちの言葉から、もしかしなくてもオレをこの前――っていっても、土曜日のことはまったく覚えてないんだけど…――みたいにまたベッドに運ぼうとしてくれてるような雰囲気を察知し、オレは急激にドキドキと緊張で体温が上昇し始める。

けれど、
どうしようっどうしようっ…と心の中でハチャメチャに慌てだしたのが自分の身体にも伝染しちゃったのか。


「…ん、ぅん…っぁ……」


へっ、あっちょ、ヤバっ…!!?
ずるっ!! と、オレの身体が机から滑って傾き倒れそうに


「え…って、あっあぶなっ――…」

……ガシッ!!!

「っ、…よ…よかった、頭打たなくて…ふぅ」


……なったところで、そんなオレの身体をやまっちが危機一髪、しっかりと支えてくれたのである。


あ、あぶなかった……っていうかもうっ、やまっちカッコイイよぉぉぉっ♡♡♡
すごいすごいっ、オレが倒れそうになったのを素早く気づいてがっしりと支えてくれるとかさぁ……もーほんとカッコイイよぅ…ほんとムリ、やまっち好きぃ…♡♡♡


思わず目を閉じたまま、オレをすんでのところで助けてくれたやまっちのカッコよさに、そういう状況じゃないというのに心ときめかせ改めて彼に惚れ直すが、しかしすぐにハッとし「………く、ぅ……」再び寝息を立て始めるオレ。

すると、


「…ね、てる………っ、そうだ、やっぱりこのままじゃ危ないし、前みたいにベッドで寝かせようっ……だ、大丈夫、俺がしっかり耐えればいいだけのコトっ……運んだら、すぐにその場から離れてしまえば問題ない…ぜっ絶対イケる、大丈夫だから俺っ…!!」
「………」
「んぐっ、ふんっ…!!」
「…ぅ…ん……」


――!!!?


何か一人「大丈夫っ」をやまっちが連呼しだしたかと思ったら、ぐいっと、突如オレの身体が宙に浮きだしたのである。

……よ、よかった…なんとか声は最小限に留めて目も開けずには済んだよ…偉いぞオレ………ってちがあぁぁうっ!!??



えっえっちょっ、ちょっと待って待って!? 今もしかしてもしかしなくてもオレってばやまっちに抱っこ…いやこの体勢ってどう考えても間違いなくオレ今やまっちに『お姫様抱っこ』ってヤツされちゃってる!!? 確実にお姫様抱っこされちゃってるよね!!??

この前の時は、重いオレを頑張ってズルズル引っ張ってどうにかベッドに運んでくれてたんだと思ってたのに、まっまさか前回もこうしてオレをお姫様抱っこでっ…!!?

う、うそどうしようっ、今オレやまっちの腕の中にっ…♡♡♡ こんなのやまっちマジの王子様じゃんっ♡♡♡ う~目ぇ、目を開けたいぃぃ!! あとぎゅって、ぎゅうってやまっちの首に腕まわしたいよぉっ…! もぉっ何でオレ今絶賛寝たフリなんかしてるのさあっ!? 


……っ、いやいやいや、落ち着け…落ち着こう頼人。
自分の欲望を優先しすぎだぞ、今オレがするべきことをまずはしなくちゃでしょうがっ…!!




まさかまさかのズルズル引っ張ってではなく『お姫様抱っこ』でやまっちに運ばれるという――多分、というか絶対前回の時も――とんでもない現状に、かなり心の中でドッタンバッタンと数十秒ほど取り乱しちゃったものの、オレはどうにか冷静さを取り戻し。


グッと、開きたくてしょうがない目をしっかりと閉じつつ、このまま計画続行っ! と、ゆっくりとやまっちのベッドへと彼によって運ばれて行き、そして。


ギシギシっ、ドサリっ…!! 


「……ん、っ……」


オレはやまっちのベッドの上に、土曜日…じゃなくて日曜日に目覚めた時と同じように仰向けの体勢でまっすぐに寝かされたのだった。


「―――…っ、ぁ……」


さて、ここからどうなるんだろう…? と思いながらもジッとそのまま目を閉じ寝たフリを続けるオレ、
だったんだけど。

ふと、何か不思議な…どこかじわっとしたような視線が寝ているオレへと向けられているの感じたのと同じく、ベッド近くにまだいるっぽいやまっちの消え入りそうな、上擦った声が耳に届き。


……? 何だろ…やまっち、もしかしてオレのこと見てる…? わ、な…なんか寝顔見られてるの、今更ながら恥ずかしくなってきたかもだっ…!?


そう、呑気にオレが羞恥心を感じ始めた、


瞬間。

ギシリ、と突然寝ているオレのベッドに別の重みがかかったかと思ったら、



「ふっ、頼人っ…頼人ぉ…♡♡♡」



―――…え、



そんな、今まで聞いたこともないやまっちのオレの名前を呼ぶ声が急に耳に届き。

数秒後、寝ているオレの首筋に、やまっちの唇が何故か落ちてきたのだった。



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