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しおりを挟む「……ど、どどどどうしよう疾風くんっ、お、おおおオレっほんとにコレ持ってれれれレジに並ぶのっ…!? だ、だだだ大丈夫? 捕まんないっ!?」
「捕まるわけねーだろ!? …つか、そんなどもんなよ……っ、俺まで、恥ずくなってくんだろーが…バカいつぐ」
「だ、だって……オレ、ご、ゴムとか買うの…初めて、だし」
「……っ、ハジメテの多いヤツだな、オマエは」
「うぅ、すみません…ほんと情けない地味男で…」
「! ……じゃあ、」
「えっ?」
「っじゃあ、早くソレ買って、情けなくない姿で……俺のこといっぱい責めまくれば、いいんじゃねぇの…」
「!!? っ…疾風くんさぁ……ほんと何で今、オレの息子が元気になっちゃいそうなこと言うのかなぁ」
「は、なっ…!?」
「この状態で、コレ持ってレジに向かうとか……それこそオレ捕まっちゃうんですけど…」
「!! …ふは、それは確かにヤバいかもなっ…ははっ」
「ちょっ、笑いごとじゃないから疾風くんっ!!」
「……なんてこと、あったけな」
「ん? 何か言ったか疾風?」
「…いや、なんも言ってねぇよ」
「そうか? それにしても、まさかほんとに疾風の言う通りあの二人がエーソンに来るなんてなぁ…疾風、マジで何でわかったんだよ?」
「ですですっ! お二人がこちらに足を運んできたのが見えた瞬間、ボク思わず鳥肌立っちゃいましたよ……や、やはり矢代くんはエスパー」
「ちげえっつの……なんとなく、ここだって思ったんだよ」
……むしろ、外れてほしかったくらいだ。
まさかほんとに、ここに来るなんてな。
「はぁ……いつぐ…」
一体中で何を…っていや、ここは前のlabelと違ってただのコンビニだから、別に普通に飲み物とかそこらへんの買い物かなんかしてるんだろうけどよ。
それでも少しでも気を抜くと溜め息と共に漏れでそうになるいつぐの名を掻き消すように、俺は後ろにいる遼太郎に向かい。
「そ、そういや遼太郎、オマエがバイトしてるのって確かここと同じエーソンだったよな?」
「へ?」
「えっそうなんですか東堂くん…!?」
「ん? ああ、確かにおれのバイト先はエーソンだけど、突然どうしたんだ疾風?」
「い、いや…そうだったよなって思って…」
「わわっ…東堂くんの働いてるお店がエーソンだなんて…」
「? 望月、エーソンよく行ったりするのか?」
「はいっ!! エーソンはよく放映中のアニメとのタイアップで色々なグッズを置いたりくじなども定期的に開催してくれますので、個人的な推しコンビニなんですよ!!」
「! …確かに言われてみるとそういうイベントよくやってるかもな、おれも並べたりしてるし。それにしても…ははっ、推しコンビニって…やっぱ望月は面白いなぁ」
「っ!? ……す、すみません…突然はしゃいだりしてしまって…」
「いやいや、気にしてないからさ。あっそうだ、じゃあ今度おれの働いてるエーソンにも来てくれよっ」
「えっ」
「家に近いところので学校からはちょっと離れてるんだけど…後で場所教えるからさ、な?」
「! はっはい、東堂くんの働いてるエーソンにボク行きたいです!!」
「やった! 絶対来てくれよな、約束。おれ、ずっと待ってるから」
「はいっ絶対、絶対ですっ! 約束ですっ」
「………」
――…新手のナンパか何かか…?
気を逸らすために振った話題の思わぬ終着点に、俺は一人楽しそうに話しだした目の前の二人を見やる。
やっぱどう考えもコイツら仲良いよな。いやまぁ、恋人のそれぞれのダチ同士が仲良くなるのは俺的にも全然嬉しいことだけども。
……待てよ。そういやこの二人、俺といつぐが恋人同士になる前から…いつぐと伊波が近づくキッカケになった、あの体育の後の休み時間も妙に楽しそうにしてたような……っそうだ、それよりもっと前に、確か俺が遼太郎に望月と
仲良かったのかって聞いて……
と、俺の思考が斜めの方向に脱線しかけていたところで。
「あっ!! いっつんたち出てきましたよ!!」
「!!」
「おおっほんとだ」
もっちーの声で店のほうへ振り向くと、その声通りいつぐと伊波が店からちょうど出てき……二人はまたも、すごく楽しそうに笑いあっていた。
「っ、いつぐ……」
こっちに声でも聞こえてきてくるんじゃないかってほどな、俺の大好きな笑顔を隣の伊波に見せるそのいつぐの姿に、ズキリとまた胸が酷く締め付けられていく。
……今ここで『いつぐ』と声を大にして叫んだら、オマエは俺に気づいてくれるか?
なんて、バレないためにコソコソ後をつけてるクセに、そんなことをどうしても考えてしまう。
そして多分……いつぐたちが次に向かう場所は、恐らく。
「……次、行くぞ」
「へ……って、もっもしや矢代くん、次にいっつんたちが訪れるお店も…」
「マジかよ疾風っ……あれ、望月の言う通り…やっぱ疾風ほんとにエスパー…」
「じゃねぇよっ……とにかく…いつぐが伊波を連れてく店は、」
本屋、アクセショップ、コンビニ、土曜日のデートで次に行った店。
「……っ、ほらな」
――それは、
俺たちが入ることが結局できなかったファストフード店『ウィズwithバーガー(うぃずばーがー)』であった。
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