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第三話

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「半モンスターだから、どういう能力あるかわからなかったけど、まさか人になる事が出来るとはねぇ……」
 翌朝になり、夜にあった出来事をレティ達に話した真樹とカイ。その騒ぎの中心でもあるルルは、現在猫の姿に戻り、真樹の膝の上で寝ている。
「僕もびっくりしたよ。しかもかなり饒舌だったし……」
「ふーん……まっ、猫の成長は早いからね。すぐに僕達の年齢を上回るんじゃない?」
 見た目年齢と中身のミスマッチの差はすぐに埋まると言うレティだが、レティ達の問題としてはルルがどのような能力を持っているかだ。
「わかってると思うけど……もし」
「わかってるよ!僕達に危害加えないようにちゃんと躾けるから!」
「まっ、いいんじゃないのか?今は真樹の事を母親と思ってるみたいだし」
 助け舟を出したのはフェイ。しかしフェイも危険が及ぶならという考えはレティと一緒だ。
「それよりももうそろそろ嵐も明けるな。オレやカイ、レティは行くとして、真樹はどうするんだ?リスティアムと一緒にここに残るのか?」
「えっ?」
 その辺りルルの事もあってか、何も考えていなかった。
「そ、そうだね……」
「真樹?もしかして行ってしまうのですか?」
「う、うん……」
 ここに残って魔法を極めるという手もあるが、それでいいのかと思った。それならばカイ達と一緒に行った方がいいのかもしれないが、それを告げるとリスティアムは悲しそうな顔を見せた。
「残念です。真樹は残ってくれると思ったのに……」
「ご、ごめんなさい。でもそしたらリスティアムも一緒に来ませんか?」
「私も?」
「うん。そうしたら僕達といれるし、何よりリスティアムが一緒だと心強いよ」
 その言葉のパンチ力は強く、リスティアムの表情が一気に明るくなる。しかし真樹の言ったニュアンスとリスティアムの捉え方は全く違っているが。
「真樹は私を必要としてくれてるのですね!」
「そりゃ回復魔法も使えて、料理も出来るし」
「嬉しいです!」
 仲間としていたら頼もしいが、何故かリスティアムの中では一緒にいたいに変換されている。
 ガバッと真樹を抱きしめたリスティアム。すると寝ていたルルがびっくりして起き上がり、真樹の膝から降りた。
「な、なんだよこいつ!」
 シャーっと威嚇しながらリスティアムに文句を言うルルを見て「ホントに話した」とレティは冷静に言った。
「おい!カイ!あの男をどうにかしろ!」
「何でオレなんだよ?」
「お前、真樹の保護者だろ?だったらあの馴れ馴れしい男を引き離せ!」
「いや、あれにはオレも困って……」
 ひょいっとカイの肩に乗るルルだが、むしろ何故カイが真樹の保護者となったのか。それにリスティアムのあの行動はカイですら頭を悩ませている。
「てかいつの間にカイに懐いたんだ?」
 カイとルルの関係に疑問を抱いたフェイだが、ルルは「それは……」と口籠る。
 どうやら昨夜、カイが見せた威嚇にも似た表情で、ルルの中の順列が決まったようだ。ちなみにルルの中の順位でフェイがダントツに最下位でもある。
「まっ、どうでもいいけど、リスティアムが来るならいろいろと使えるね」
「レティは容赦ないなぁ……」
 系統は違えど魔法使い二人だといろいろな事がしやすい。レティはそれとなくリスティアムをこき使おうと算段していたのだ。
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