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 笹川なのか襲撃事件?の翌日、事実を知った伊澄から笹川なのかの事務所に強い抗議をしたと言う。
「全く……見た目によらずしたたかな性格のようですが、今後我が社のCEOに迷惑行為を行うようならば法的措置を取らさせてもらいますとお伝えしました」
 さすがは伊澄。パパラッチを引き連れての既成行為はいささかやり過ぎなようだ。しかも同じ芸能関係ではなく、相手は世界規模の財閥一族だ。強く言えばヒースルーの方が勝つ。
「そこの考えはなさそうですね。まぁ、笹川銀行の頭取さんの娘ですので、そちらに言ってもいいのですがね」
 一応相手は銀行だが、別にこの銀行から借りなくても他の銀行があると言いたいのだろう。地方のそこそこ大きな銀行ではなく、海外のメガバンクなど、事業の関係として打つ手はいろいろあるのだ。
「でもヒナが僕の対応にすぐ反応してくれてよかったよ。あそこでボケられたらヒナがパパラッチの標的にされてたかもしれないからね」
「えっ?私が標的?」
「そうだよ。あの場で普段は日本語話してるじゃないですかって言ったら、間違いなく僕とヒナの関係を疑うだろうね。僕はそれでもいいんだけど、ヒナは嫌でしょ?」
「ま、まぁ……そうですね」
 英語で会話する事でビジネス感と秘書っぽさの雰囲気は出る。加えてその時のヒナの服装は出社していた時と同じ服装だったので、説得力は増すだろう。
「さて、またホテルに来られては困るので、東宮寺オーナーにはその旨は伝えています」
 とは言え騒動が落ち着くまではプライベートでホテルから出ることは出来ないだろう。
「はぁ……私の平穏な日々はいつやって来るのだろう……」
 呟いた陽菜だが、その答えは出ない。すると部屋のチャイムが鳴った。
「誰だろう?」
 秘書課の誰かなら電話で用件を言うか、行くという旨を伝えるはずだ。こうしてやって来るのはホテル側の誰か(主には東宮寺)かあの人物だ。
「兄さん!」
 やはりあの人物の方だった。
「笹川なのかと熱愛ってどういう事?兄さんはこのモブと付き合ってるんじゃなかったの?」
 どうやらタイムラグはあるが、出張中のアンリの耳にも情報が入ったようだ。
「落ち着いて下さい。そちらについてはあちらの誤解ですので、厳重注意をしておきました」
「ならいいけど……また兄さんの悪い癖でも出たのかと思った」
「人聞きが悪い。僕は今ヒナ一筋なんだから」
 過去はどうあれ、今のアレンは陽菜にぞっこんなのだと伊澄やアンリの前で堂々な宣言。聞いてるこちらが恥ずかしくなった。
「と、とにかく!オレはまだこのモブのどこがいいのかわからないけど、兄さんが真剣だったいう事くらいはわかってる!」
「アンリにしては成長したな」
「オレはもう十分大人だ!」
 微笑ましい兄弟喧嘩を見ながら、陽菜は職場へと戻る事にした。
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