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「まっ、いざとなったら私が助けてあげるから安心してちょうだい!」
「と、言いますと?」
「そうねぇ……条件は劣るかもしれないけど、似たような男を紹介してあげるわよ」
「け、結構です!」
「そう?ダメなら次に行かなくちゃ!」
 そんな切り替えが出来るタイプではない陽菜は、例えアレンと離されたとして次に行くなんて行為はすぐには出来ないだろう。むしろアレン以外など考えられない。こうして考えてみると、自分はアレンにぞっこんなのではと思った。
「他の男がダメだとすると、そうねぇ……アパレル関係だからウォーキングレッスンとかなら紹介出来るわよ」
「それはもう習ってます」
「あら、どこの誰?私が知っている人物?」
 一応伊澄に紹介されたウォーキングレッスンの講師の場所と名を言うと、ブレンダは直ぐに「Non!」と言って反論を見せた。
「ダメよ!そんな無名の人じゃ!私の紹介する人にしなさい!」
「で、でも……」
「こっちはハリウッドセレブからパリコレモデルまで輩出している講師よ」
 そんな名前を並べられると陽菜としても困る。さすがはアパレル会社のCEOだけあって、その手の人材を知っている。つまり超がつく一流講師だ。
「とりあえず上司に紹介してもらったので、まずは上司にお伺いをたてないと」
「本当日本人のそういうところって面倒ね。自分のステップアップの為なら切る選択も出来ないと」
「そ、そうですね……とりあえず返事は保留で」
「ダメよ。善は急げって日本語あるでしょ?ヒナが言いにくいなら私が言ってあげる。相手に電話して頂戴」
 否を言わせぬブレンダの迫力に負け、陽菜は伊澄に電話をした。
「も、もしもし山下です」
「伊澄です。どうかしましたか?」
「あの、実は……」
「ヒナかして」
 横から奪い取る様にスマホを取ったブレンダは、そのまま英語で話続ける。もちろん伊澄も英語が話せるので問題ない。むしろ基本片言日本語のブレンダに付き合ってここまで英語で会話をした自分が凄いと思った。
 少し話した後、ブレンダは陽菜にスマホを渡したので、陽菜は「もしもし」と伊澄に話しかける。
「山下さん」
「はい!」
「あなたブレンディスカイのCEOといつの間に知り合ったのですか?」
「えっと……以前行ったパーティで……」
「そうですか。それならそうと早く言ってくれたらよかったのに……とりあえずブレンダ氏の話は聞きました。こちらとしてもブレンダ氏の意向を汲んだ方がいいと思いますので、お任せしますと言っておきました」
「えぇ!いいんですか?」
 まだ数回しか行っていないのだが。しかも伊澄の紹介した講師とは言っても有名雑誌モデルのランウェイを指導する程度には力のある人物なのだが、こんな理不尽な感じで切っていいのか陽菜にはわからない。
「私の方からも謝りは入れておきますが、角が立たないようにブレンダ氏からも話を入れてもらうつもりです」
 有名アパレルのCEOがそう言えば相手も聞いてくれるだろう。しかもその講師の抱える生徒の中から一人、日本での広告塔をつけるというのだから文句は言わないだろう。むしろ断るだけにしては大きなおまけがついている気もする。
 とりあえず陽菜のウォーキングレッスンはブレンダお抱えの講師になるわけだが……
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