花が招く良縁

まぁ

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(隣に並べるなら絶対に美女んがいいだろうし…)
 自分はどこをどう見ても十人並以下だ。会社のお客様対応などでも自分が行くと先方はあからさまに「お前かよ!」と言った感じで残念そうにする。それ以外にも初見で怖い表情をしたつもりはないが、怖いと勝手に思われたりする。それは美奈穂自身が人見知りというのもあるかもしれないが、そういう事もあってこの十年まったくと言っていいほど縁がなかった。
「どうかしました?」
「いや別に…慶さんってやっぱり女の子とかにモテたりしますよね?」
 何を自分は聞いているのだろうかと思った。
「うぅん…どうでしょう?そんな事ないって言うと嫌味でしょうし、モテるって言っても嫌味ですよね。って事でそれなりにでいいですか?」
「はぁ…」
 別にそこは謙遜しなくてもいいのではないか?とも思ったが、慶自身それなりに女性関係はあったのだろうと悟った。それもそうだ。それにそれで女に興味ありませんって言われれば「そちらの人」としか思えない。
「美奈穂さんも綺麗ですしモテるんじゃないですか?」
 何故この流れになってしまったのか…むしろそんな事を聞けば逆に問われるだろに…ネタ提供をした自分を呪いたかった。
「私は全然ですよ…むしろ必ずって言っていいほど他と比べられて、○○ちゃんの方がかわいいってよく言われますから」
「そうなんですか?意外ですね。きっと周りが見る目ないんでしょうね」
 お世辞をどうも…
 可愛げもなく美奈穂は何も答えず茶を啜った。それから少し話をした後、荷ほどきが残っていると言って部屋に戻った。
 西園寺家は木造平屋の古民家で、部屋数としては六部屋でダイニングキッチンがあり、風呂とトイレ、部屋は客間と稽古部屋はどちらも十二畳以上ある広い部屋だ。美奈穂に与えられたのは一般的な六畳で押入れもある。華道家という事で食卓のテーブルの上やトイレ、居間などには見事に生けられた花がある。
 こんな家に住まわせてもらい、しかも家主は華道界のプリンスだ。これ以上にないくらいの贅沢で、この先いい事がないのではないかと思ってしまった。そんな事を考えていると、スマフォの着信が鳴った。見ると風呂に入っている間に来たと思われる由美のメールの他、今しがた来たイベント抽選のメールが入っていた。
「えっ?当選…!」
 それは美奈穂が好きな芸能人のイベント抽選が当選したというお知らせメールだった。
 いい事は立て続けに起こるものなのか?むしろこの先が嫌な事にばかりになるのでは…人生においての運気を一気に使ってしまった気分になった。

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