花が招く良縁

まぁ

文字の大きさ
上 下
41 / 50

41

しおりを挟む
「要はきっかけだったわけだね。好きな相手とやる事やってもっと相手を深く知りたくなるなんて…もう!あんたって単純!やーらーしー」
「もう!その事はいいでしょ!」
「んで?一応趣味も暴露して、それを見せたわけ?」
 それに関しては黙ったままでいた。だが由美は想像通りの展開だろうと踏込、それ以上は聞かなかった。
「成程…コスプレプレイなんて…意外と西園寺慶は変態だったわけだ」
「それ言うと由美も同じでしょ?」
「まーね…」
 墓穴を掘ったという表情を見せる由美。そんな今までにないくらいの幸せ人生を歩み始めた美奈穂だが、一つだけ気がかりな事があった。
「私さ…慶さんに好きって言われた事ないんだよね…」
「はっ?何を今更…」
「今更だからだよ!よーく考えたら好きって言葉聞いた事なくて…それ考えると不安になる」
「贅沢な悩みだなぁ…あんたは言ってるの?好きって…」
 由美の言葉に「ん?」となった美奈穂を見て、「まさか…」と呆れた口調の由美が言葉を綴った。
「お互い様じゃない…」
「そうだね…よく考えたら私も言った事ないかも…」
「でも、こうやって普通に暮らしてする事してるならいいんじゃないの?」
「そんなもんかなぁ?」
「そんなもんかなって…心配なら自分から言いなさいよ」
 御最もな意見だ。だが今更というのもある。どのタイミングで慶に好きと言えばいいのか?ましてや慶は今東京にいるのだ。

 東京にある西園寺本家で慶は終始ふて腐れた表情をしていた。
「慶!お前はいつになったら麗子さんと婚約を結ぶんだ?」
 聞いてきたのは本家当主である西園寺十五郎だ。ここに来てから毎日一回はその事を聞く。その度に慶は同じ事を言い続けた。
「俺は麗子さんとは結婚しない。相手は俺が決めるし」
「そういう事言って…先方はずっとお前を待ってるんだぞ!」
「だから…さっさと断ってくれよ!俺は絶対に嫌だからな!」
 こんなやり取りももう何回目だろうか?十五郎の息子である大悟は今年二十歳だが、父親十五郎の言いなりでさっさと結婚をしている。まだ大学に通う身分なのに対したものだといつも思う。
「それに俺は今の生活で十分満足なの。いちいち口を挟まれる言われはない!」
「慶!麗子さんの何が不満なんだ?」
「不満も何も…あの人行動が異常だって!こっち来るたびに何かしらと出会うし、向こうにいても毎日くだらないメールしてきたり…そういや叔父さん達が勝手に俺の個人情報教えてるんだよな!慰謝料請求するぞ!」
 柄にもなく辛辣に毒づく慶は、親戚連中のやり方に不満が溜まっていた。今までは忘れていたのと、我慢していたのもあって、本家に来て十五郎とバトルをする度に不満が爆発していた。
「お二人共!毎日毎日似たような喧嘩ばかり…殿方がネチネチと言い争うんじゃありません!」
 二人の間に割って入ったのは十五郎の嫁で慶の叔母にあたる恭子だった。
「恭子さん!叔父さんに言ってくれよ!結婚相手くらい自分で決めるって!」
 お茶を差し入れに来た恭子は大きなため息を漏らしながら急須から茶を湯呑に移す。
「では慶さん…逆に聞きますが、麗子さんよりも良いと思う方でも見つかったのですか?」
「なんでそれ言わなきゃいけないわけ…?」
「いいですか慶さん。この西園寺家は明治から続く由緒正しき家元。先代の…つまり慶さんのお爺様達が家督を十五郎さんに譲り、地方に隠居し、慶さん達ご家族も一緒にそちらに行ったとしても、西園寺の名は語り継がれます」
「あぁもう!どうせ名家に相応しい女子を連れて来るなら何も言わないだろ?」
「そういう事です。そして慶さん。あなた少々口調が汚らしいですよ」

しおりを挟む

処理中です...