十年目の恋情

まぁ

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「んで、お前は何を血迷ってこんな事……」
「だからコウちゃんが好きだからって……」
「それはわかった。けど俺とお前にそんな恋愛になるような事何もないだろ?」
「コウちゃんにはなくても俺にはちゃんとあるよ」
 そうは言われても、そうか!なら付き合おうってわけにもいかない。何故なら月並みだが俺達は男同士だし、伊織にその気があっても俺にはない。こいつは隣に住む幼馴染で、俺とは十も離れてるんだ。
 おまけに無職でバツイチって……惚れる要素一つもない気がするけど……
「お前って元々そっちの人だったのか?」
「そんなわけないじゃん。コウちゃんだけだよ。コウちゃんだけが俺の特別」
「はぁ……てか俺、お前よりも十も年上のおっさんだし、いろいろと負の要素あるんだけど……」
「関係ないよ。コウちゃんを幸せに出来るのは俺だけだから」
 意味不明な自身は十代特融のものなのだろうか?一つ決めたら絶対譲らない。むしろ俺を幸せにするって……今日コンビニで見たような女子高生が聞いたら側頭もんじゃないのか?それをこんなおっさんに言うなんて……
「そういうのはもう少し大人になって、ちゃんと相手出来たら言えよ」
 そう言って引き離して距離を置こうとしたら、伊織はムッとした表情を見せた。
「コウちゃんは何もわかってない。俺がどれだけコウちゃんを好きなのかも」
「その話題についてはわかったから……とりあえずお前の感情なんて十代特融の一過性のもんだよ。後で後悔するのはお前だ」
「後悔なんかしない。だって後悔なんて十年前に十分したから」
 十年前と言えば、俺が卒業してここを離れる時だよな?当時八歳のガキが後悔なんてするのかと思ってしまったが、伊織はふぅとため息を漏らし、「わかったよ」と言った。
「コウちゃんに無理強いはしない。したって結果的にいい方向に行かないし」
「そ、そうか……」
「だからこれから俺、コウちゃんを全力で口説き落とす。これでいいよね?」
 いいよね?と言われて素直に「はい」とは言えない。なにせこいつは十八でこれから先の未来ある若者だ。こんなところで俺のようにいろいろと汚れた大人とどうこうなって汚点なんか作ってはいけないだろう。
 だけど否定したところで伊織は引かないだろう。若さと勢いが持ち味の十代だ。ここはあまり逆なでしないようにしよう。

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