君に願う幸せ

まぁ

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 これが恋なのか?いや、そうなのだろう。きっとこれは恋だ。
 自分自身が誰かに恋をする事が不思議で仕方なかった。
 これまで誰かに愛された事も、愛した事もなかった。そもそも愛がなにか、優にはわからない事だった。

 自分の気持ちに気が付いた後、優はどう大地と接したらいいのかわからなかったが、よそよそしくしても仕方ないし、もっと大地を知りたい。そう思いながらも自分の行動がまったく理解出来てなかった。
 大地の部屋に行ったはいいが、何を話していいのかもわからなかった。けど話をせずともいるだけで心は温かくなった。誰かを好きになると自分は情緒不安定になるようだ。そして今まで気が付かなかった感情が湯水のように溢れてどう対処していいのか困った。
 一番は大地にキスされた時だった。
 何が起こったのかわからなかった。そして柔らかく触れただけの唇から熱がこもり、それだけで優の思考が停止してしまいそうになった。けど嫌ではなく嬉しかった。
 二度目のキスはもっと甘く、大地も自分と同じ気持ちなのだろうと思うと、それだけで死んでもいいなんて思った。
「優君?大丈夫?」
「な、何が?」
 唇が離れ、至近距離に大地の顔がある。頬を手で固定されているので、顔を下に向ける事も出来ない。視線はしっかりと大地と絡まっている。身体中の熱が上がっているのがわかるし、大地自身も優に触れた部分から、優が熱いという事はわかっているだろう。恥ずかしさでフェードアウトしてしまいそうだ。
「あ、いや……あのさ、優君僕の事好き?」
「そ、それってずるい……」
「僕は好きだよ。優君の事」
「あ、あの……俺も、大地の事が……好き」
 かぁっと熱が全身に回っていく。ドキドキと心臓の鼓動がうるさい。そう思っていると大地の顔がまた近くなり、視界が暗くなった。三度目のキスだ。
 けどただのキスではなかった。唇とちろっと舐められた優が「あっ」と声を漏らしたと同時に大地の舌が入り込んできた。どうしたらいいのかわからない優は、大地にされるがままでいた。
 舌先が歯列をなぞり口腔内を舐めては吸い上げ、優の舌を捉えては深く絡まり合う。しーんとした部屋に濡れた音が響き、それだけで優はおかしくなってしまう。
「んっ……んん!あっ……」
 だんだんと意識がおかしくなる。息も切れ切れになった時には、思考がはっきりとしておらず、優は熱っぽい眼差しで大地を見ていた。
「優君。好きだよ」
 ぎゅっと大地が優を抱きしめた。優も両手を大地の背に回した。ドクドクという大地の鼓動が聞こえた。きっと自分の音も大地に聞こえているだろう。
「初めてだ……」
「ん?」
「こうして誰かに好かれたのも、温かさを知ったのも……」
 優の手が強く大地の背を抱きしめた。これまで誰かに愛された事などない。だから初めてのふれあいに優は満たされた気持ちになった。
 ホッとしたのも束の間だった。今度は視界がグラリと揺れ、気が付くと天井と大地の覗き込む顔が見えた。
「んっ……あ、あ……」
 言葉もなく唇が重なり、二人の舌は自然と絡まる。濡れた音と零れる優の甘い声。大地の手はそのままスルリと優の服の中へと入り込み、這うようにして身体に触れた。
「はっ、あ……んふっ」
「優君。このまましてもいい?」
「なっ……!そういう事、言うなよ……」
「ごめん。やっぱ止めようっか……」
「そ、そうじゃなくて!」
 スッと大地の手が離れていきそうになり、優はその手を掴んだ。
「言わなくても好きにしてほしいから……大地ならいい……から……」
「優君」
 真っ赤になって言う優が可愛くて仕方のない大地が優の首筋に顔を埋めた。
「大好きだよ。優君」
「んっ……俺も、」
 首筋にかかる大地の吐息、そして耳朶じだむ唇。手は撫でるようにして這い、胸の突起に触れた。
「ひぃあっ!」
「大丈夫?」
「んっ……」
 ただびっくりしただけだった。男の乳首なんてただの飾りで、何故ついてるのかすらわからないものだと思っていたが、こうして触れられて、指で摘まむようにして挟まれると、それだけで声が漏れた。
「あっ……あぁ、っ!」
「優君。声……」
「そ、そうだっ……あっ!」
 近くの部屋ではスミレが眠っている。優は声を出さないようにと必至になって手で抑えた。だが小さな声は漏れてしまう。自分からこんな声が出るとも思わなかった。
「んっ!んん……あっ!」
 服がまくり上げられ、大地は優の小さな突起に舌を這わす。口に含まれ、舌で転がされ、歯で甘噛みされ、優は声を抑えるのに必死だった。
 次第にその手が下肢へと向かった。これまでの愛撫で優のペニスは痛い程に張りつめていた。その勃起したペニスを手にした大地が、上下に動かしながら扱く。その度に優は甘い声を漏らした。
「あっ、あ、あぁ……あん!」
「優君可愛い」
 そう言って大地の唇が重なった。舌の絡まる音と、扱かれる度に聞こえる音がとても卑猥だった。
「大地……も、ダメ……やっ!あぁ!」
 爆ぜた液体が大地の手を濡らした。はぁはぁと息を吐く優の目は虚ろで、大地を熱のこもった目で見つめていた。
「ごめんね優君……」
 がばっと覆いかぶさってきた大地は、優の身体をぎゅっと抱きしめた。
「な、なんで謝るんだよ……」
「いや、なんか無理やりだった気もするし……嫌じゃなかった?」
「嫌じゃない……」
「そっか。よかった……」
 愛おしむようにして大地は優の唇にキスをした。
 その日の晩はそれ以上の行為に及ぶ事はなかった。だが二人は大地の布団に寄り添うようにして眠る事になった。
 差し出された腕の中で、優は安堵した表情で大地の顔を見ていた。
「優君。寒くない?」
「大丈夫……」
 スッと柔らかな髪を撫でてやると、優は目を細め口元を綻ばせた。そんな優の額にキスを一つ落とす。すると今度ははにかんだような表情をしながら目を逸らした。その一つ一つの動作や表情がとても可愛いと思ったし、ここに来てから初めて見る優のいろいろな表情だ。
「世の中のカップルってこんな感じなのかな?」
「えっ?」
「好きな奴の腕で寝たりって……俺にはそういうのよくわからないからさ」
「うーん……人様の事はわからないからなぁ。優君は嬉しくないの?」
「う、嬉しいよ。だって……大地が俺の事好きなんだって、それだけでも嬉しい……」
「そっか。僕は優君が好きだよ」
「うん、俺も……大地が好き」
 甘えるようにして優が大地の胸に額を擦り付けてきた。男同士だが、それでも傍から見たらバカップルの部類に入るのではないかとも思えて仕方ない。だが優は顔を上げて眉をしかめた表情で大地を見つめた。
「でも大地最後までしなかったけど……どうして?」
 経験がないとは言っても、セックスがどういったもので、どうするのかは普通に知っている。男同士もお尻の穴という器官が使える事くらいは知識としてあるのだ。
「あ、ごめん……男相手ってどうするのかは知っていても、手順とかそういうのまではわからなくてさ。それに優君に痛い思いさせたくないから……」
「そ、そっか……」
「もしかして不満だったの?」
「いや、そんな事ない。こうしていられるだけでも俺はいい」
 挿入行為だけが愛の形ではない。こうして側にいるだけでもお互いの気持ちを分かち合えるのだと大地はわかっているし、優も同じ気持ちなのだろう。
「さっ、そろそろ寝ようか」
「うん」
「おやすみ。優君」
「おやすみ」
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