聖女陥落〜この恋は罪ですか?〜

まぁ

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 姉セリカとつかの間のひと時を過ごしたエリサは、いつもならば馬車を使って帰るところを、今日は歩きたい気分だったので歩いて帰る事にした。
 大聖堂からレーエンスブルクの屋敷までは歩いて二十分くらいだ。大通りにある大聖堂から少し小道に入った貴族たちが住む地区に屋敷はある。
 このまま初夜を迎えぬまま過ごしていたら、さすがに回りは疑問を抱くだろう。初夜の有無は知らずとも、子が出来ないとなれば、レーエンスブルク家の者もエリサに妻として失格と烙印を押すはずだ。そうなった時、どうすればいいのか。
「フリーク様……私はこんなにもあなたを愛しているのに……」
 一目惚れしたあの日から、いつかフリークは自分を愛してくれる。そう思っていたのだが、すれ違う日々は多く、フリークの自分を見る目は常に冷たいものだった。このままいても抱かれる事もない。どうしたらいいのか。エリサは一人悩みながら歩いていた。その時だった。
「えっ?フリーク様?」
 遠くからだがフリークが歩いているのが見えた。護衛も付けずに一人でだ。つい気になってフリークの足取りを追ってしまう。フリークもまた一人歩いて帰っているのか。そう思うと嬉しくなり、声をかけようとしたがやめた。
「こっちは……」
 屋敷がある方向とは違う道へと入ったからだ。その先は貴族地区ではなく一般居住区。しかも一般の範囲でも少し貧しい者達が暮らす場所だ。もしかして仕事の関係か。気になったエリサは声もかけずそのままフリークの後を追った。


 しばらく歩くとフリークはある一軒の家の前で足を止める。エリサは物陰に隠れ、こっそりとフリークの行動を見つめた。
「フリーク……様……」
 フリークがやって来た家から一人の女性が現れた。歳の頃はエリサよりも少し年上、姉セリカと近いくらいの歳の女性だった。
 なにやら親しげに話す二人。貴族であるフリークが平民の知り合いがいたのかはわからないが、その二人の雰囲気が何やらただよらぬものだとエリサは感じ取っていた。現にエリサに見せた事がないような表情をフリークはその女性に向けている。
 誰だってそれを見ればすぐにわかる。フリークには好きな女性がいるのだと。
 そしてしばらく話した後、フリークは女性の家に入って行った。
「そんな……」
 突然突き付けられた現実にエリサは頭が真っ白になった。頑なに二人にならないようにしていた事も、抱かない事も、冷たい目を向けられている事も、全て他に愛する女性がいたからなのだ。
 目から溢れる涙が頬を伝った。自分はフリークに振り向いてもらいたくて一生懸命だった。だがそれは無駄だったのか。こんな真実があるなら最初から結婚なんてしなかったかもしれない。だがそれは無理だろう。これは親同士の決めた結婚。ならばこの先、何の見込みがない自分はどうしたらいいのか。
 あの女性からフリークの心を奪ってしまいたい。そんな気持ちすら生まれようとしていた。
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