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「い、いや!放して!」
強く押してなんとかその腕から逃れられたエリサは、素早く馬車を降りて屋敷の門をくぐった。
屋敷の玄関口まで行くと、エリサは足を止めた。中に入ろうとしても足がすくんで入れない。
心臓は大きく鼓動し、エリサの唇は先ほどのマルディアスの唇の感触が残っている。震える指でその唇をなぞった。
「どうして……こんな事……」
これまでの順風満帆で平穏な日常が壊されそうで怖い。そう思ってしまった。
エリサとの再会は暁光だと思った。それまで自分の心は空洞で何もなかった。
あの日、マルディアスはエリサから突き放されて以来、表面的には普通だったが荒れていた。
仕事はこなすものの酒の量は増え、夜な夜な歩いては複数の女性と交友を持った。彼の専属執事達からは心配されるくらいだった。このままではいずれ仕事にも支障をきたすのではないかとも思えた。何よりもレーエンスブルク家の騒動からパパラッチに着け狙われているマルディアスだ。次はどんなスキャンダルを出すのかわからないし、それだけは避けたいと執事達も必死だった。
そんな時に出会ったのがフェリシアだった。マルディアスは特別彼女を気に入っていたわけでもなく、荒れている時期に遊んだ女性の一人だった。フェリシアは複数の女性の中でも、マルディアスに対して踏み込んだ質問をぶつけてきた。
「どうしてそんなにも哀しい表情を見せるのです?」
「哀しい?そうだな……愛した女性がこの手からいなくなったからじゃないのかな?」
「そう……」
ただ責めるわけではなくマルディアスに寄りそうフェリシア。彼女との出会いもまた奇妙なもので、中流階級のお嬢様で婚約者もいる身でありながらマルディアスに近づいたのだ。
その時行われていたとある貴族のパーティにどうやって中流階級の彼女が入り込んだのかは知らないが、彼女とはそのパーティで出会ったのだ。まるでエリサと自分の出会いと同じようにも思えた。
「その女性の事、どうしても忘れられないのですね。でも、無理して忘れなくてもいいんじゃないかしら?」
「どういう事だ?」
「だって忘れたくないからこうして遊び歩いていいるのでしょ?ならそれでいいと私は思います」
おかしな事を言う女性ではあったが、どこか心の中の引っかかりが取れたようにも思えた。
自分はエリサの事を忘れられない。否、忘れたくないのだとマルディアスは思った。だが彼女はここにはもういないし、二度と戻らない。
「遊び相手の一人で構わないです。けど、少しでも私の事を気に入ってくれると嬉しいです」
それはまるで何かの呪縛のようにも聞こえた。無垢であどけないエリサとは違い、フェリシアは女である自分の武器の出し方を知っている。魔性とも思える彼女とは早々に手を切った方がいいかもしれない。そう思っている所でマルディアスの元に一報が届いたのだ。
「妊娠した?」
「えぇ、時期から考えても、私とマルディアス様の子ですわ」
こうなる事はマルディアスへの罰だったのだろうか。目の前で告げられた言葉がまるでこれまでの償いをしろと言われているかのように聞こえた。
強く押してなんとかその腕から逃れられたエリサは、素早く馬車を降りて屋敷の門をくぐった。
屋敷の玄関口まで行くと、エリサは足を止めた。中に入ろうとしても足がすくんで入れない。
心臓は大きく鼓動し、エリサの唇は先ほどのマルディアスの唇の感触が残っている。震える指でその唇をなぞった。
「どうして……こんな事……」
これまでの順風満帆で平穏な日常が壊されそうで怖い。そう思ってしまった。
エリサとの再会は暁光だと思った。それまで自分の心は空洞で何もなかった。
あの日、マルディアスはエリサから突き放されて以来、表面的には普通だったが荒れていた。
仕事はこなすものの酒の量は増え、夜な夜な歩いては複数の女性と交友を持った。彼の専属執事達からは心配されるくらいだった。このままではいずれ仕事にも支障をきたすのではないかとも思えた。何よりもレーエンスブルク家の騒動からパパラッチに着け狙われているマルディアスだ。次はどんなスキャンダルを出すのかわからないし、それだけは避けたいと執事達も必死だった。
そんな時に出会ったのがフェリシアだった。マルディアスは特別彼女を気に入っていたわけでもなく、荒れている時期に遊んだ女性の一人だった。フェリシアは複数の女性の中でも、マルディアスに対して踏み込んだ質問をぶつけてきた。
「どうしてそんなにも哀しい表情を見せるのです?」
「哀しい?そうだな……愛した女性がこの手からいなくなったからじゃないのかな?」
「そう……」
ただ責めるわけではなくマルディアスに寄りそうフェリシア。彼女との出会いもまた奇妙なもので、中流階級のお嬢様で婚約者もいる身でありながらマルディアスに近づいたのだ。
その時行われていたとある貴族のパーティにどうやって中流階級の彼女が入り込んだのかは知らないが、彼女とはそのパーティで出会ったのだ。まるでエリサと自分の出会いと同じようにも思えた。
「その女性の事、どうしても忘れられないのですね。でも、無理して忘れなくてもいいんじゃないかしら?」
「どういう事だ?」
「だって忘れたくないからこうして遊び歩いていいるのでしょ?ならそれでいいと私は思います」
おかしな事を言う女性ではあったが、どこか心の中の引っかかりが取れたようにも思えた。
自分はエリサの事を忘れられない。否、忘れたくないのだとマルディアスは思った。だが彼女はここにはもういないし、二度と戻らない。
「遊び相手の一人で構わないです。けど、少しでも私の事を気に入ってくれると嬉しいです」
それはまるで何かの呪縛のようにも聞こえた。無垢であどけないエリサとは違い、フェリシアは女である自分の武器の出し方を知っている。魔性とも思える彼女とは早々に手を切った方がいいかもしれない。そう思っている所でマルディアスの元に一報が届いたのだ。
「妊娠した?」
「えぇ、時期から考えても、私とマルディアス様の子ですわ」
こうなる事はマルディアスへの罰だったのだろうか。目の前で告げられた言葉がまるでこれまでの償いをしろと言われているかのように聞こえた。
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